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ロンドンから徒然に

正義のミカタ

2007-10-02 | 文学
 いつになっても、いじめによる自殺といういやな事件がなくなりません。次から次に出てくる陰湿な事実に怒りを通り越して悲しくなってきます。
 それにしても事件の度に必ず、いじめはなかったと弁明する学校側。それが本当に気づかなかったとしても、隠蔽しようという意図だとしても、おとな側の論理の卑しさに気分が悪くなってきます。
 しかし、根本的な原因まで突き詰めて行くと、一刀両断に解決できない複雑な問題が残ります。

 今日も先週に続いて大阪出張でした。新幹線の行き帰り用には本多孝好の『正義のミカタ』を持って行きました。
 高校でいじめられっ子だった主人公が、そのいじめられ方が尋常でないゆえに鍛えられた反射神経と腹筋力を認められ、“正義の味方研究部”に入って活躍するという導入部から、コミカルで爽やかな青春ものに仕立て上げているのかと思いきや、終盤からは思いがけない展開を見せ、“正義の味方”の欺瞞性に気づかせてくれます。

 “正義”というものが本当に絶対的なものであればいいのですが、やはりそこには誰かの立場を反映した秤があるわけで、世界中にはびこる戦争も、様々な大義名分のもとに行われる自分勝手な争いの場合が多いと思います。
 この価値観がねじれまくった世界で、本当の意味での『正義のミカタ』は現れてくれるのでしょうか。