まつお文庫からのご案内

仙台市若林区中倉3-16-8にある家庭文庫です。水・土の3時~6時(第2土は休み)どなたでも利用できます(無料)。

新しく買った本 3月

2018-03-21 15:45:49 | 文庫のページ
『あさがくるまえに』 ジョイス・シドマン/ベス・クロムス さくまゆみこ訳 岩波書店 2017.12
 「どうかおねがいです。一度でいいから、あさがくるまえに世界をかえてください。」
 詩のような言葉が続きます。夜から朝までに雪が降り続いていく様子を、雪で世界が変わっていく様子を、美しく描いた絵本です。スクラッチボードと水彩を組み合わせた絵がとても印象的です。絵からたくさんの物語を読み取ることができます。
 子どもが眠りにつく頃、パイロットの仕事を持つ母親は、雪が降り出す中、仕事に向かいます。列車とバスを乗り継いで空港についたときには、大雪のため、飛行機は欠航。母は除雪車に乗せてもらって、無事、自宅に戻ります。ちょうど子どもが目覚めた時です。朝食を食べて、家族3人でそり遊びに出かけます。
 この家族の住む町の全景が描かれる場面では、この家族の家がどこにあるか、お母さんを乗せた除雪車がどこをどう走ったか、探す楽しみもあります。
「わたしたちのたねまき ―たねをめぐる いのちたちのおはなし―』 
  キャスリン・О・ガルプレイス/ウアェンディ・アンダスン・ハルパリン 梨木香歩訳 のら書店 2017.10
 草花や木々がどうやって子孫を残していくのか、種がどうやって運ばれていくのか、感動的に描いた絵本です。
 畑や庭に、人間は種をまきます。でも種をまくのは人間だけではないのですね。鳥や動物も、風や雨も、この自然界に豊かな種まきをしているのです。その様子をダイナミックに描いて見せてくれる絵が素晴らしいです。正確に丁寧に観察して描かれたさまざまな種たちの絵も興味深いです。
 たくさんの種がさまざまな方法で運ばれ、新しい場所で新しい命を芽吹かせます。植物と生き物たちの豊かな関わりが見えてきます。自然の営みの素晴らしさに改めて感動できる絵本です。
『物語と歩いてきた道』 インタビュー・スピーチ&エッセイ集 上橋菜穂子 偕成社 2017.11
 この本には、これまで発表してきた単行本未収録のインタビューやエッセイに加え、国際アンデルセン賞授賞式でのスピーチ(2014年、メキシコで)や、IBBYニュージーランド大会でのスピーチ(2016年)も収めてあります。「守り人」シリーズや『獣の奏者』『鹿の王』などの作品を生み出し、また文化人類学者としてオーストラリアの先住民アボリジニの研究に携わっている上橋菜穂子さんは、自分の根っこにあるものが、10代の中高生の時に出会ったサトクリフやトールキンの作品、『ゲド戦記』など、外国の児童文学であることを語っています。さらに二つのスピーチを通して、物語を書くこと読むことの意味について、より深く、上橋さんの考えに触れることができると思います。
 巻末には、2016年11月から半年間ジュンク堂書店池袋本店の特設会場に登場した「上橋菜穂子書店」に、上橋さんが選書し並べた700冊の本のリストも載っています。また「守り人」シリーズ執筆当時に描いた登場人物のイラストや子どもの頃の写真も紹介されています。
『馬場のぼる ねこと漫画と故郷と』 馬場のぼる こぐま社 2017.8
 漫画家、絵本作家としての馬場のぼるさんの全体像に迫る興味深い本です。
 青森県三戸郡三戸町で生まれ育った子ども時代から73歳で亡くなるまでの足跡が、第1章から第7章まで、魅力ある構成で語られています。絵本についていえば、『11ぴきのねこ』全6巻完結まで29年の歳月がかかっていること、何度も色版を重ねて刷っていく大変な作業で色付けをしていることなども知ることができます。また1940年代後半からの貴重な漫画や膨大なスケッチ帳に残された絵、タブローの絵などたくさん紹介され、多方面で活躍なさった馬場のぼるさんの世界を堪能できます。
 遺作となった『ブドウ畑のアオさん』をぜひ購入したいと思っています。
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