MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

静かな ff

2014-05-10 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

05/10 私の音楽仲間 (578) ~ 私の室内楽仲間たち (551)




                静かな ff


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                ドクソウ的じゃろうが…
                 流用とは何事じゃ!
                  お前は黙っておれ
                 お前は馬鹿じゃのう

 

 

 “静かな、 穏かな”。

 これは、あるイタリア語の訳語です。


 「何という単語でしょう?」 もし貴方に、そう質問したら…。
すぐお解りになりますね。


 そう、“tranquillo” です。 辞書を引いたら、そう書いて
ありました。 楽譜にもよく登場するので、きっと何度か
ご覧になったことがあるでしょう。

 「何だ、そんなことも知らないのか。」 そう言われそうですね。
お恥ずかしい次第ですが、これにはちょっとしたワケが…。


 [譜例]は、ある室内楽曲の一節で、Vn.Ⅰのパート譜です。
演奏例の音源]も、この最初の段、黄色で塗った音符の
箇所から始まります。

      ff で始まるので、音量にご注意ください。)



 さて、中ほどに “molto tranquillo” と記されているのが、ご覧
いただけるでしょうか。 その横には “ff” の字も見られます。


 もうお解りですね。 私が辞書を引いたのは、この “ff” と
“tranquillo” が、一見矛盾するように感じられたからです。

 でも音楽は、すぐ “p” に変わる。 そして “pp” が現われ
ると、今度は “in tempo” と書かれています。 


 …ということは…。

 この “molto tranquillo” は、テンポの指示違いない。
音量の問題ではなくて。 そう考えるのが自然でしょう。



 では、速いのか、遅いのか?

 「“tranquillo” のテンポが速いわけはないから、きっと
落着いて” だな。 ff だけど、力で向かっていっちゃ
駄目なんだ。 どうやら “grandioso” の意味らしいね。」

 勝手にそう解釈して臨んだのが、上の音源です。
Violin は私、N.さん、Viola Sa.さんT.さん、チェロは H.さんM.さんです。



第Ⅰ楽章の後半部分です。


 今回の記事を書くに当って、初めて辞書を引いてみました。
そして、さらによく読むと、次のように書いてあります。

 

 1 静かな, 穏かな, じっとして.

 2 (心が)安らかな, 落ち着き払った.

 3 (人が)おとなしい; 平静な.

 



 さて、これで一件落着ですね。 でも、まだ疑問が残る。
それをご説明する前に…。

 色塗り部分のうち、黄色の音符は第二主題です。
一段目から三段目までは、それしか出てこない。



 四段目が、例の “molto tranquillo” でした。

 それでは、第一主題でも第二主題でもない、この8小節間
が、なぜ “tranquillo” という特殊なテンポなのか? これが私
疑問です。

 これは再現部の終わり (“” からはコーダ) ですが、同じことは
提示部でも見られます。 


 次の段のピンクの2小節は、第一主題の前半です。 よく聴く
と、これは “tranquuillo” 部分でも、合いの手として聞かれます。

 主題全体は、少し後で、他の楽器が奏でています。 それは、
最後の段の終り “” からなのですが…。



              音源ページ]




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