05/18 私の音楽仲間 (584) ~ 私の室内楽仲間たち (557)
お前は馬鹿じゃのう
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
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本当の第二主題
趣向は変わらんよ
ドクソウ的じゃろうが…
流用とは何事じゃ!
お前は黙っておれ
お前は馬鹿じゃのう
Viola の物憂いテーマ。 それは、ここに来ていきなり
現われたわけではないようです。
ドヴォジャークの 弦楽六重奏曲 イ長調 Op.48、その
Finale の様子でした。
[譜例 1]は、第Ⅰ楽章の “molto tranquillo”。 三段目の
8小節間ですが、作曲者の思い入れが感じられます。
ここでは (1) “上行5度” と (2) “下降音階” が登場しました。
これは両方とも、“Finale” の変奏曲楽章でも現われました。
4度や5度は、上行、下降の自由な形で扱われています。
次の[譜例 2]は、その終楽章ですが、2つのモティーフが
“Allegro” のテンポで Vn.Ⅰに出てくるときの様子です。
最初の小節の “上行4度” が二度繰り返されていますね。
♯が3つ見えます。 でもロ短調、イ長調、ニ長調…。 調性
は揺れ動き続けます。
[演奏例の音源]もここからスタートします。 ただし、すぐ
大幅なカットがあり、[譜例 3]の ↓ に跳んでしまいます。
↓
上の譜例では、下降音階は、ときおり半音階に変わります。
調性は、明確なイ長調になっている。
第Ⅱ楽章は、ボヘミアを思わせる “Dumka” でしたが、唯一
共通しているのは、作曲者の愛した “3つの音符” の形です。
ただし、明るいがおとなしい。 フリアントの用語から連想する
のは、2拍子と3拍子の激しい交錯ですが、この曲ではそれが
ありません。 また他の楽章との間には、モティーフ的関連が
まったく見られない。
ドヴォジャーク先生は、まず Finale のテーマを作ったのでは
ないでしょうか。 それを第Ⅰ楽章に用いて、ソナタ形式にした。
あとは、“Dumka”、“Furiant” の順に離れていったのでしょう。
“molto tranquillo” の思い入れから、徐々に遠くへ…。
…それが私の想像する、楽章の大まかな構想の順序です。
細かい修正を含めた、最終的な完成順は解りませんが…。
「何を勝手に想像しておるのかね?」
あ、先生…。 貴方の作曲法の秘密ですよ。
「ほう…。 そんなものが解るのかね?」
……いやいや、とても…。 出来あがった楽譜を見て、あれこれ
考えるのが好きなだけです。 でも、実際はどうだったんですか?
「作曲の順序など、自分では意識しておらんよ。
それに、昔のことなど忘れたね。」
いや、むしろ気になるのはですね、先生も無意識
だった、混沌とした状態まで遡って考えますと…。
「そんな事より、金儲けの手順でも考えなさい。
馬鹿じゃのう、お前は。 一生混沌としておれ!」
………。