memory of caprice

浮世離れしたTOKYO女子の浮世の覚書。
気まぐれ更新。

すし銚子丸 気分はハリウッドセレブ

2014-06-16 05:38:46 | グルメ
作家が自身と食べ物についてのこだわり?を描く、「作家の口福」というエッセーの欄がある。
その時代の子らしい背景を感じるソウル・フードや、いかにも美味しそうな味覚表現など、作家によって共感を呼ぶポイントは異なるが、押し並べてなかなかに面白い。

2014年5月3日登場の柚木麻子さんの回転すしチェーンでの自在な楽しみ方は、邪道なアレンジ寿司を軽く見て無視してきたわたくしの価値観を覆す遊び心に満ちたもので、とても魅力的。

以下はその引用です^^


最新刊『その手をにぎりたい』でバブル期の高級寿司店を描いたせいか、老舗のカウンターに座り慣れていると思われがちである。

私が普段1人で通うのはチェーンの回転寿司だ。乾いたネタには霧吹きでスプレーしていたような昔とは違って、最近の回るお寿司は本当に美味しいので、この連載を借りてお気に入りを紹介させていただきたい。ちなみに素材の良さが勝負のシンプルな握りではなく、回転寿司ならではの工夫の効いた、おふざけテイスト漂う変りネタが、わたしの好みである。

私が一番良く行くのが「すし銚子丸」。自動ドアが開くや否や、従業員総出の「ようこそ!銚子丸へ!美味しい舞台へいらっしゃいませえっ!」と瞳をギラギラさせた大合唱、店員さんを「劇団員」と呼ばせる独特のセンスに腰が引けてしまうが、そこさえ乗り越えれば、マグロの解体ショーや旬のネタフェア、珍しいフレッシュフルーツお披露目など、訪れる度に新しい発見のある飽きさせないお店である。

席に着くとあら汁の「中」サイズ(税別130円・くさみがなくて具沢山)でスタートすることが多いが、こちらで必ず食べるのは「生ハムセレブ巻」(同250円)「特製プリン」(同250円)である。前者はエビなどの海鮮に生野菜、そしてクリームチーズを海苔の代わりに生ハムでくるりと巻いた代わり寿司である。生ハムの桜色からほんのり透けて見えるご飯が愛らしい。アメリカ映画でよく見る「間違った日本文化描写」を思い出させるメニューなのだが、生ハムの淡泊な塩味、こってりとほの甘く冷たいクリームチーズが酢飯に驚くほどよく合う。

冷えた白ワインをお供につまんでいるとその名のとおり、ロサンゼルスのスシバーの常連で、サングラスを金髪頭に載せた日本びいきのハリウッドセレブになった気さえする。日本にいながらにして日本を異国から見つめて憧れているような、入れ子式のときめきがたまらない。

そして寿司よりも楽しみなくらいの「特製プリン」は、やわとろタイプが幅をきかせる回転寿司のプリンには珍しい、焼のしっかりした硬めの長方形。キャラメルと卵の風味が濃厚だ。「すし銚子丸」はつまみ卵、茶碗蒸し共に美味しいので、常に卵を何で摂取するべきか悩んでしまうのだ。






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