memory of caprice

浮世離れしたTOKYO女子の浮世の覚書。
気まぐれ更新。

小津を読む

2014-04-28 06:46:34 | BOOK
年を重ねてなお、評価の高まる小津映画。
おととしの英国映画協会発刊の雑誌の「世界歴代BEST映画」で映画監督が選ぶベスト1に小津の「東京物語」が選ばれたという。

そんな小津安二郎の世界に浸るための粋で端正な関連本を。
三省堂名古屋高島屋店の福澤いづみさんリコメンド。

1)「小津安二郎を読む」フィルムアート社編 1982年 フィルムアート社\2484
 小津映画入門の定番にして必携の一冊。との太鼓判。ハイレベルな入門書であり定本である。
 サイレント時代を含め全作品をていねいに解説。さらに、食べ物やカメラ位置などの「小津事典」、出演した俳優・女優のプロフィルも充実。
 小津ファンにはこたえられない一冊。思い入れを排したクールな筆致も好ましく、文句なしの一冊だ。

2)「絢爛たる影絵 小津安二郎」高橋治著 1985年 岩波現代文庫 \1382
 「東京物語」の助監督として小津に仕えた高橋治のロングセラーでよく読まれている。
 映画監督から小説家に転じた高橋は自らの体験と取材を交え、達者な文章で巨匠に迫る。
 偉大な監督に対して、若い同業者はアンビバレントな感情を持ちつつ、その圧倒的な存在感と格闘するのだ。

3) 「小津安二郎先生の思い出」 笠智衆著 1991年 朝日文庫¥540
 ②と対照的。小津映画の常連・笠智衆による回想記。
 「ぼくは先生の言われる通りにやっただけ」と小津をひたすら尊敬し、恩人と慕った、控え目な名優の思い出だ。
 福澤さんは、「読み進むうちに、いつしか彼の独特のセリフ口調で文字を追っていることに苦笑してしまう」と言う。
 確かに笠は独自の雰囲気を持った俳優で、実はただものではない。
 意外だが、2人は仕事以外ではあまり口をきかなかったそうだ。笠が口べただったからだが、見えない緊張感もあったのだろう。

4) 「小津ごのみ」中野翠著 2008年 ちくま文庫¥821
 小津ファンなら、そうだよね、と相づちを打ちながら読むのは記者のおすすめ「小津ごのみ」。
 秀才評論家のとんでもない深読みをさらりとかわし、粋で端正な小津ワールドに案内してくれる。
 着物の柄や和装の女性の物腰、あるいは障子や湯飲みなどの小道具に、小津の美意識を見、深く共感している。
 その象徴が、粗い布地(ドンゴロス)に題名や俳優名などが刻まれるタイトルバック。
 「大人の、いい趣味。和風で洋風、古風でモダン」と絶賛だ。
 小津映画の世界に浸る快感は、「サザエさん」を読む快感と重なる、という指摘には、なるほどと納得。
 笠智衆と波平の古風なファッション、とかね。

「並木・藪蕎麦」のおかめそば

2014-04-28 05:04:48 | グルメ
波乃九里子さんの
「おんなのイケ麺」思い出話が貴重。

ものごころついた時から通う店。
父(十七代目中村勘三郎)は大の蕎麦好きで、喫茶店に入るより御蕎麦屋という気質でした。
両親はダラダラ話をするのが嫌いで、さっと食べて、さあ帰りましょうって。
味わっていられないですよ。

父も弟(18代目)も食べ方がとてもきれいで、一緒に食べるのがものすごく恥ずかしかったんです。
でも一番は吉右衛門兄さん。鬼平のイメージそのもの。最後に器を置く姿はまるで御茶のお点前のよう。

天ざるの後にこれを頂くの。ここのおかめさんは湯葉とお麩、かまぼこのシンプルな具材で表現された厳しい顔つきですね。お蕎麦のゆで方が見事。
別添えのネギをわさびを2皿もらって、最初に全部お蕎麦に入れます。おつゆは辛くて江戸っ子の味。
この深い味わいは1人で楽しみます。
恥ずかしいからだれにも見られずに。

■「並木・藪蕎麦」
東京都台東区雷門2-11-9
03-3841-1340
\1000
11:00~19:30
木休
1913(大正2)年創業。


水上バスで小さな旅

2014-04-28 04:24:49 | 旅行
渋滞知らずのGW日帰り旅、という特集で、水上バスで名所巡りというプランが紹介されている。

カナマル トモヨシ氏という航海作家のおススメコース。

予約不要で、混んでいたら次に乗れば良いというゆるさでありながら、橋の下をくぐるなど、非日常の視点を得られるところが魅力とか。

東京都観光汽船は浅草と日の出桟橋を結んで隅田川を行き来する隅田川ラインなど複数の水上バスを運行している。
「船に注目するなら、浅草・お台場などを結ぶホタルナ号とヒミコ号。松本零士さんがデザインしたんです。」
帆船のような船もある。日の出桟橋と青梅を結ぶ船が「御座船 安宅丸」(大人\820)
「徳川時代の旧姿をよみがえらせた観光船。通称”将軍航路”と呼ばれています。

東京都公園協会が運営する「東京水辺ライン」の水上バスは「浅草・お台場クル―ズ」「隅田リバー葛西・浅草コース」など休日には複数のコースを運航する。「スカイツリーやお台場など東京の名所を一度にながめられ、お得感がありますよ」

カナマルさんがおすすめなのが東海汽船「かめりあ丸」の横浜大桟橋~東京竹芝桟橋間の「東京湾夜景航路」。
かめりあ丸は神津島~東京を結ぶ大型客船だが、土日のみ、横浜に寄港してから竹芝へ向かう。
この区間は約一時間半、\1560で乗船できる。
「横浜発は午後6時10分。レインボーブリッジやベイブリッジの下を通過し、工場夜景も楽しめます」
ただし、GWは横浜には停泊しない。
昭和末期に就航した同船は6月に引退するが、5月中には横浜から乗船できる日も数日ある。
東海汽船のサイトで確認を。

横浜観光も水上バスが便利だ。「シーバス」は横浜駅東口から山下公園まで(大人\700)、赤レンガ倉庫などを眺めながら移動できる。
「京浜フェリーボート」も大桟橋付近で水上バスを運航。

「今年のGWはダイヤモンド・プリンセスなど外国のクルーズ船が横浜や東京湾に寄港します。水上バスから眺めると大きさに驚かされますよ」

名古屋港にあるのが「名古屋港トリトンライン」。
「名古屋港水族館」のあるガーデンふ頭や「リニア・鉄道館」が立つ金城埠頭などを行き来する。
(金城埠頭~ガーデン埠頭大人\900)
「いずれも人気スポット。水上バスなら渋滞知らずです」

カナマルさんおすすめ航路のサイトを・・

■東京都観光汽船 http://www.suijobus.co.jp/
隅田川ライン、浅草・お台場直通ライン、東京ビッグサイト・パレットタウンライン。御座船安宅丸・将軍航路などを運航。

■東京水辺ライン http://www.tokyo-park.or.jp/waterbus/
東京都公園協会が運営。浅草・お台場クル―ズ、隅田リバー葛西・浅草コースなど。

■横浜クル―ジング・シーバス http://www.yokohama-cruising.jp/html/seabass.html

■京浜フェリーボート・水上バス http://keihinferry.co.jp/waterbus/index.html

■東海汽船かめりあ丸 http://www.tokaikisen.co.jp/

■名古屋トリトンライン http://www.higashiyama-garden/com/samurai_cruise/ship_garden1.html

井上荒野の読書

2014-04-28 04:09:12 | BOOK
本のレビュー記事の中で「作家の読書道」というコラムがある。
現在活躍中の日本の作家の幼いころからの読書体験を聞く、という趣向で、これが結構面白い。
正直、御本人の作品を読んだことがない、あるいは特に興味を抱かなくても、読書の傾向が、 
ん?もしかして似たような道筋を通ってきているのかも・・・と思うことがままある。
勿論、途中で分水嶺の如く枝分かれするのだが、ここまでが共通しているのなら、その先も面白いかも・・・と
つい後を追いかけてみたくなる。

井上荒野さんもその一人。
1961年東京生まれとは兄と同じ。
幼いころ、作家である父上、井上光晴氏が、娘のために知り合いの編集者に頼んだセレクト本を段ボールで定期的に送らせていたとか。
そのラインナップが
「100まんびきのねこ」
「スザンナのお人形」「こねこのぴっち」

高校生の頃、父親の「妊婦たちの明日」を読み感銘をうけ、バイブル的存在に。
その頃読んだ日本文学は大江健三郎と中上健次。後になってから山田詠美。
翻訳小説ではガルシア=マルケス。「百年の孤独」「悪い時」も。
街全体がじわじわと嫌な感じになっていく、ああいう、”場の小説”というものにハマったとか。

その後の読書生活は翻訳もの中心。
マーガレット・アトウッドは30代半ばくらいで。
「青ひげの卵」という短編を読んだ時ものすごく面白いとおもったから。
ポール・オースターはよく読んでおり、カズオ・イシグロも大好きで全部読んでいるそう。

なんとなく納得&マーガレット・アトウッドを読んでみたくなりました。

うるわしき4月~テ―ト美術館所蔵「ラファエル前派展」

2014-04-03 06:47:24 | ART
朝日夕刊文化面2014年4月2日
高階秀爾先生の「ラファエル前派展」@森アーツセンターについての「美の季想」

ミレイの「オフィーリア」やロセッティの「受胎告知」といった有名作品を差し置いて(笑)
取り上げられているのはアーサー・ヒューズの「4月の恋」。

ヒューズはラファエル前派兄弟団のメンバーではないが、ロセッティなどその仲間たちとは極めて親しく、オックスフォード・ユニオンの壁画制作にも参加しているので、広い意味でラファエル前派の1人とみなされている。「愛」をテーマとした物語的内容と、緑、紫を主調とする清澄な色彩表現で、早くから多くの愛好家を得た。
 なかでも、蔦の生い茂る東屋風の小屋のなかで、おそらくごくささいなことから喧嘩をしてしまった恋人に背を向け、心を静めるかのように胸に手をあてて憂いに沈む若い娘の姿を描き出した「4月の恋」は、ヒューズの代表作として現在でも人気が高い。テート美術館で最もよく絵はがきが売れる作品のひとつだと、かつて館長からきいたことがある。発表当時ラスキンの絶賛を浴び、その頃まだオックスフォード大学の学生であったウィリアム・モリスが購入したという曰くつきの来歴を持つ。
 だがこの作品の高い人気を支えるものとして、「4月の恋」というどこか優艶な情緒を誘う題名が一役買っていることも見逃せないところであろう。
「4月」とか「春」と言えば、日本では賑やかな花見の季節であり、また入学式、新学期、年度の始まりなど、新しい生活への期待を孕んだ言葉である。だが、その一方で、春には「春怨」「春愁」などに見られるように、どこか哀感を伴う恋の思いを暗示する語感もまとわりついている。月形半平太の台詞ではないが、「春雨」といえば、いっそう艶な感じが強い。英語でも、音もなく静かに降る春の雨を「4月の雨」と呼ぶことがあるから、「4月」は内面のひそやかな感情と結びつきやすいのだろう。
 題名からの連想かどうかはわからないが、ラスキンもこの絵について、「若い娘の心は歓びと苦しみのあいだで激しくうち震え、その表情は4月の空のように不安定で何とも定めがたい」と述べている。

 ヒューズ自身、この題名がいたく気に入っていたらしい。この絵の制作中、友人の詩人ウィリアム・アリンガムがアトリエに訪ねてきたことがある。その時詩人は、恋人同士が互いに背を向け合っている図柄を見て、「隠れんんぼ」という題名にしたらどうかと提案した。その後しばらくしてから、ヒューズはアリンガムに宛てて、「君も憶えているだろうが、あの『隠れんぼ』の絵がようやく完成した。今では『4月の恋』というもっとうるわしい題名で、僕は大いに喜んでいる」と書き送った。多くのラファエル前派の画家たちと同じく、詩人の心の持ち主であったヒューズは、この一句に深い詩情を見出したのであろう。それとともに4月は「恋の月」となったのである。
 なお、この清楚な娘のモデルを務めたのは、ちょうど同じ頃結婚した愛妻トライフィーナであったという。