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日本式エイプリルフールの楽しみ方 (理化学研究所の場合)

2014-04-01 | Weblog

 

本日4月1日は嘘をついてもよいとされる4月馬鹿(エイプリルフール、April fools' day)の日だ。この日騙された方が馬鹿なのか、騙した方が馬鹿なのか知らないが、嘘をつくのは4月1日の正午までに限るとされているため、理研の調査委員会は、慎重に午前10時半という時間をはかって会見を開いた。会見ではSTAP細胞の存在の真偽については明らかにされなかった。管理人

 

STAP細胞 理研「小保方さんが捏造と判断」

毎日 4/1/10:34

新たな万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の作製成功を発表した英科学誌ネイチャーの論文に多数の疑問点が指摘されている問題で、理化学研究所の調査委員会(委員長、石井俊輔・理研上席研究員)は1日午前、東京都内で会見を開き、研究を主導した小保方晴子・研究ユニットリーダーについて「捏造(ねつぞう)にあたる研究不正行為を行ったと判断した」と発表した。

調査委は「小保方氏は科学的に許容しがたいプロセスによる2枚の異なるデータの切り張りや、条件が異なる実験データの使用など、到底容認できない行為を重ねて行っている」とし「研究者としての未熟さだけに帰することのできるものではない」とした。

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参考3/17:

「STAP細胞」騒動「ハーバード大学」研究者たちはこう見る

理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)の小保方晴子・研究ユニットリーダーらによる「STAP細胞」の報告が、2014年1月29日、英国の超一流科学誌『Nature』に発表されました。この大発見は世界中の注目を浴び、米国のメジャーなメディアも、発表直後一斉に、STAP細胞に関する報道を開始しました。ところがその後状況が一転し、今は捏造疑惑で注目を浴びています。この一連の騒動を、米国 ボストンの仲間の反応やコメントなどを中心に考えたいと思います。

距離を置き始めたハーバード大教授

 ここボストンには、世界中から野心にあふれた研究者が集まっています。もちろん「STAP細胞」の発表直後、多くの研究者らは、この偉大な発見に大きな関心を抱きました。競争の激しい研究の世界で、『Nature』や『Cell』、『Science』誌に論文を発表することは、世界の研究者の目標、憧れです。なぜなら、これらの雑誌で研究を発表することは、その後の 研究費やポジションの獲得につながるからです。ですから、研究者らは、新しい情報を常に収集し、自分の研究に有利なアイデアがあれば、すぐに活用したいのです。同時に勉強会を開き、この斬新な研究報告の結果の再現性や信頼性などの詳細を議論する研究室もありました。

 ところが、その3週間後の2月19日、地元紙の『ボストングローブ』が、この論文に関する、画像の使い回しなどの疑惑を報道しました。

Researchers scrutinize findings on stem cells,The Boston Globe,Feb.19

 ただし、この頃はボストングローブ紙以外のニュースは、この問題を それほど取り上げていませんでしたので、日本人以外の仲間は、まだ単純ミスの連発くらいの認識でした。その辺は日本の報道とかなり温度差がありました。その記事で、「STAP論文」の共著者である ハーバード大学チャールズ・バカンティ教授は、「発見に自信がある」と弁明しました。周囲の仲間たちの間で は、再現性の結果を待つ、という意見が多かったのです。ただし誰もが、「小保方氏は、まず声明をすぐに出すべきだ」と指摘していました。米国の研究者たちは、 彼女が何も言わなければ 、この件は 彼女の罪なのだと判断するのです。

 さらに3月6日、バカンティ教授は、ボストングローブ紙に対して、「ほとんどの研究は時間がかかり、確信するまでに何度も繰り返さなければならない」と、今回の発表が時期尚早だったことを示唆 し、「実験の方法がこちらでやっているやり方と日本の著者のやり方が少し異なる」と、この問題から距離を置き始めました。このニュースに関して、私の周囲の仲間たちは、論文発表直後はその成果により賞賛を得た人々が、その直後に疑惑が発覚した途端、一斉に 小保方氏から離れて行く状況を感じ取りました。

 ハーバード 大学医学部の教授であるバカンティ氏は 、ハーバード大学医学部の関連医療機関であるブリガム&ウィメンズ病院の麻酔科部長でもあります。そうした教授の これまでの数々の実績に鑑み、ハーバード大学側は、世論などを踏まえつつ、教授自身の問題ともなっている今回の件には、 しばらく静観すると思います。

Scientists work to repeat stem cell finding,The Boston Globe,Mar.6

米研究者たちの「最大の疑問」

 そんな中、3月10日には、『Nature』自らも、この問題に関する経緯と編集部としての見解も含めた記事を掲載しました。

Call for acid-bath stem-cell paper to be retracted,Nature,Mar.10

 ここには、衝撃的な論文の公開後わずか40日弱で、論文を撤回すべきだとの訴えまで寄せられた深刻な経緯が 書かれています。論文発表の2週間後に 不自然な重複画像が指摘され、簡単な方法のはずの実験が、数多くの科学者が試しても再現性が確認できない点が批判されていました。

 さらに、より深刻な2つの問題 も出現しました。『Nature』の論文に使用されている画像が、まったく別の実験である小保方氏の 博士論文の複製であるということ。しかももう1つ、それらは全く別の実験だということが判明したのです。そして、論文の共著者である山梨大学生命環境学部の若山照彦教授 が、論文撤回の意思を初めてコメント しています。

 この『Nature』の記事を読んだ知り合いの研究者 は、若山照彦先生の、「私はこの論文へ の信頼 を失っている(I have lost faith in the paper)」というコメントに対して、「I have lost faith in our paper」とは書かれていない点に注目し 、「研究チームが小保方氏から離れていって、これからすべての責任は彼女に委ねられるね」と言いました。

 この記事が『Nature』に掲載されるや 、多くの米国のメディアは、報道を再開しました。私の仲間たちも、さすがに誰もがこれを小保方氏らの単純ミスとは受け止めず 、事態の深刻さを議論するようになりました。多くの研究者仲間が、例えば『ロサンゼルス•タイムズ』に指摘されているように、「日本のセレブとなった小保方氏がこの論議に反論して いない(周囲のコメントがあっても、本人が無言なのでそう解釈されます)」という“異常な状況”が理解できないと異口同音に言います 。

 さらに、博士論文の画像流用や他論文の文章盗用などの問題で、指導教官や周囲の研究者たちの 誰もが気づかなかったことに驚いています。実際、小保方氏の博士論文の約20ページが米国立衛生研究所 (NIH)のサイトとほぼ同じ、つまりコピーペーストしたというニュースが流れてきました。このニュースには、さすがに同僚の研究者たちも呆れてしまいました。ハーバード大の博士論文では、コピーペーストしてもすぐにボスに見つかります。彼らの一番の疑問は、「どうして博士論文の審査で見つからなかったのだろうか」という点です。

博士号を“乱発”してきた日本

 そもそも、米国と日本では、博士号の品質が大きく異なります。2011年4月20日付 の『Nature』誌に、日本を始め中国、シンガポール、米国、ドイツ、インド、など世界各国の博士号の問題点が論じられています。

The PhD factory,Nature,April.20.2011

 その中で、日本の博士号のシステムは危機に陥っていて、すべての国の中で、日本は間違いなく最悪の国のひとつだと書かれています。1990年代に、日本政府が、ポスドク(博士号を取得した後、常勤研究職になる前の研究者のポジション)の数を3倍の1万人に増やすという政策を設定しました。その目標を達成するために、博士課程の募集を強化したのです。なぜなら、日本の科学のレベルを一刻も早く 欧米と対等にしたかったからです。その政策で確かに 人数だけ は増えましたが、大学などのアカデミアでは、地位につける人数に制限がありますし、企業の就職には年齢の制限があるため、逆に、 ポスドクの最終的な職場がみつからないという状況に陥りました。さらに、博士号を取得する研究者 の質も低下しました。

 日本の場合、ほとんどの学生が、修士号取得後のわずか 3、4年で博士号を取得して卒業します。いわば、博士号の“安売り”とも言える状況です。

 しかし 米国では、政府の報告によると、大学学士を得てから博士号を取得できるまでにかかる 平均年数は10.1年で、博士号を取得できた時点 の平均年齢は33.3歳です。しかも、最終的に博士号を取得できるのは半分程度で、多くの学生がドロップアウトします。ただし、博士号を取得すると、キャリアアップにつながります。特に、サイエンスの博士号には価値があります。収入を考えると、例えばマサチューセッツ工科大学 (MIT)の学士、修士(サイエンス)、博士号をとった人のそれぞれの平均年収は、750万円、870万円、1100万円。その他の大学でも、博士号取得後の平均年収は760万円以上です。そしてもちろん 収入だけではなく、博士号取得は、人生の様々な選択肢やチャンスにつながるのです。

MIT Students after Graduation】 【Occupational Outlook Handbook

教育システム改革も急務

 それだけに、博士号を取るために米国で 大学院に入学した学生のモチベーションは、日本とは まったく違います。キャリアアップのために、なんとしても博士号を取得したいという熱意と情熱に溢れています 。そして大学側は、優秀な人材育成に投資し、博士号の授与にふさわしい人材にのみ学位を与えます。なぜなら、優秀な人材の将来の活躍で大学の知名度が上がり、さらに優秀な人材を獲得できるからです。逆に、学位の授与にふさわしくない人材には学位を与えません。当たり前のことですが、将来問題がおこったとき、大学の評判が落ちるからです。ですから、博士課程の学生は、繰り返し繰り返し厳密な審査を受け、 厳しい評価がなされます。こうした環境では、さすがにコピーペーストの博士論文などあり得ないのです。

 さらに、学生の側も、常に教員を評価します。教員の教育が不十分な場合、最悪、職を失う場合もあります。逆に優秀な教員には、大学等の高等教育における教職員の終身雇用資格であるテニュア(academic tenure)が与えられます。ですから、教える側も必死なのです。

 今回の一連の問題で私が最も強く言いたいのは、小保方氏本人は一刻も早く 状況説明をしなければならないという ことです。3月14日、理研が中間報告の記者会見を開いた際、小保方氏の短いコメントが示されましたが、そんな程度ですませられる状況ではないでしょう。そして、今後の再発防止のために、日本の教育システムの改革も早急に必要だと思います。

(文)大西睦子内科医師、米国ボストン在住、医学博士。1970年、愛知県生まれ。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月からボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、2008年4月からハーバード大学にて食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。