一般的に自然界では昆虫が介在して交配結実すると云われており私も信じて疑わ
なかった。
しかし、介在は一部合っているので否定はしないが内容は大きく違うようだ。
これを常識のウソと云う。
もの分りの良い思い込みの世界が生んだ落とし穴だが被害者が全く出ない、お遊び
の範ちゅうなので大したことはない。
昆虫が介在し交配すると云うのはロマンがあっていかにも風蘭の古典植物らしくて
いい。
しかしながら夢をこわすようで申し訳ないが 現実はモット巧みで 風蘭はもっと
シタタカに進化しているように思われる。
そこで今回はフウランの珍しい交配の仕組みを花構造にて紹介する。
フウラン花の断面
画像ではまだ④ネバネバは生成されていない。
花構造(花の断面)
①葯帽 :花粉魂を保護するように柱頭最先端部に着いている帽子状のもの。
花粉魂の成熟肥大化により浮き上がり茶色く黒ずんでくる、開花後約
4~6日目くらい。
②花粉魂 :花粉に相当するもので、球体をした濃い黄色をしており大きさは直径
0.5ミリほどで柱頭先端部に1対で着いている。これ自体は粘着性は全 く無い、サラーとしている。
別途粘着体の助けを借りない限り一般の草花のように昆虫の体に付着する
ことは出来ない?。
③粘着体 :④柱頭ネバネバ部入り口付近やや内部にあってゴム状をしており②花
粉魂をシッカリ捕まえている。連結されていて常にゴム状粘着体でネバ
ネバ部に引っ張っている。ここが従来は見えてなかったところだ。
④柱頭ネバネバ部:雌しべに相当するもの。この内部は正面からの形状はアーチ型
で奥に長いお椀を伏せたような形状をしている、開花当初はこのネバネバ
は無いが花粉魂が成熟する頃になるとネバネバが生成され受粉時の花粉魂
を受け入れ保持出来るようになっている。
保持といっても非常に保持力は弱い。
奥左画像では④ネバネバが生成されている。
②花粉魂は、偶然にも花切断中に勝手にネバネバ部に飛び込んだもの。
交配のしくみ
1、適期になると④柱頭先端下部にネバネバが生成される。
2、更には、適期になると花粉魂成熟肥大により①葯帽が浮き上がってきて勝手に
外れる。
3、この時、花粉魂はこの④ネバネバ内部の先端付近凸状の内から出ている③ゴム
状粘着体に連なっているので葯帽から開放された花粉魂は即ネバネバ部引っ張られ
保持されるというのである。
この保持力は弱い場合が多く、人工交配時では保持されない場合は唾をつけて引っ
着ける場合も度々あるほどなので自然ではこの粘着体に引っ着いていることで保持
されている。
いわゆる自然界では、風蘭は勝手交配も出来るのである。
この誰の介在も必要としない手段をも持ち合わせている、シタタカさがある。
観察では。
葯帽が外れると開放された花粉魂は③粘着体に引っ張られてまるでヨーヨーの振り
子のようにネバナバ部に飛び込み保持されるのである。一瞬の出来事なので良く観
察しないと解らない。
花粉魂を落としたかと下を探すこともあるほどであるが、しっかりネバネバ部にお
さまっている。
5~6個回交配を試みて1回はこの状況にぶち当たる。毎年20個以上は人工受粉
を行いもう7年になる。私はセルフ交配が嫌いなのでやらない、しかし花粉魂を
取り出そうと爪楊枝で葯帽に触れた途端勝手交配をする場合があるのでこれを防ぐ
のが大変だ。
ちなみに。
昆虫介在説だが、観察が完全に済んでないので否定はしない。
葯帽だが。適期、昆虫が花に入りその後 後ずさりで出てくる時昆虫の背中・羽・
頭が触れただけで即葯帽は外れる構造になっている。
従ってココまでの昆虫介在は合っている。
花の大きさに合う昆虫は、大きい目のアリンコのサイズが適当だとわかる。
ハエ程度より更に小さいアブ・蜂の仲間か、蛾なら小型の夜盗蛾達が考えられる。
実験のため、可哀想だが7年間で10数匹の昆虫には協力死を頂いた。
しかし昆虫には容易に花粉魂単体では引っ着かない。全く着かないのだ。
何故昆虫に付着するかテストしたが粘着体ごとは着く場合はある。
この粘着体は、花粉魂を保持している保持力は柱頭ネバネバより遥かに強固で
あり昆虫に着いたとして更には花粉魂を持ち運び他の花の柱頭ネバナバに花粉魂が
到着したとしても保持力は強いので又持ち帰るだけなのである。
と想定される。