雨、8度、94%
今年はいつもより早くお雛様を出しました。3月4日には仕舞うお雛様、いつも数日しか飾りません。 あと何回このお雛様に向き合えるかと思うと少しでも長く見ていたいと思います。
埃だらけ、物が無秩序に散らかされていたこの家の片付けの間、いつも私の心にあったのは「お雛様を見つける。」ことでした。片付けを始める前から残すものは幾つもないことは分かっていました。欲しいものもない、思い出として残しておくものない、家具とほんの数冊の本とこのお雛様を残しました。お雛様は茶箱の中に裸のままひっくり返って、お道具などと一緒に出て来ました。髪は乱れ放題、幸い虫は付いていませんでした。そんな姿のお雛様を見るのは辛かった。
和紙に包みトランクに入れて香港に持ち帰ったのは5年ほど前のことです。引越しの荷物でまたこの家に戻って来ました。お雛様を手にとって思います。誰からも触れられず、茶箱の中で放りっぱなしの間どんな思いだったのか。お人形に心はないとは知っていてもいつも同じ思いを抱きます。
数日前、孫娘が5歳のお誕生日を迎えました。お嫁さんのご両親と一緒にお祝いをしてもらった時の写真が昨日送られて来ました。素直な髪が肩より長くなりました。お雛様のお顔を見ていると孫娘を思い浮かべます。「お雛様は譲ってはいけません。」とお雛様の売り場の方に言われたのは初節句の前のことでした。そんな言葉に耳を貸す私ではありません。お雛様を手にいつか孫娘にこのお雛様を譲れたらと思います。たった数日のために箱一つの場所をとります。孫娘が欲しいと言ってくれたらなどと思いますが、ババアの一人思いです。
この家を出て以来、ずっとどこに行くにも一緒に動いてくれた貝雛です。 お雛様に思う想いは女性ならどなたもお持ちだろうと思います。今は単純にお雛様を飾れる喜びを感じています。