晴、5度、76%
庭の白梅がちらほらと綻び始めました。沈丁花も道行く人が足を止めるほどに香り始めました。 梅は満開よりもポツポツと咲いている時の方が風情があるように思います。季節は春へと動いています。
この2月は二人の父の祥月命日があります。今日は父が逝ってちょうど50年目です。この時間明け方に逝きました。香りのある花が好きな父でした。水仙、梅、金木犀、沈丁花、梔子。どれも庭にあるものばかりです。開き始めた梅をひと枝、父に捧げます。
父が起こしたのか、いつもより1時間も早く目覚めました。50年前の今日も寒い朝でした。つらつらとあの日も事を思い出しています。父、母、私のベットが3つ並んでいたのは今私がいる居間でした。50年、自分の人生もあっという間に過ぎました。父の年齢をとっくに越してしまっています。この家で亡くなり、この家から出棺しました。今の時代と比べ、考えてみれば幸せな死に方です。家を受け継いでいくとはこうした記憶も受け継いでいく事だと思います。
生きていればもう97歳。出兵も経験しています。物の無かった時代を生きてきた二人の父は共に甘いもの、お酒、いい肴が好きでした。特に私の父はあんものを食べる量が半端ありませんでした。町のお饅頭屋さんのおはぎや水羊羹が大好物。そんな父を思って「梅一輪」の菓子を作りました。
練り切りに小豆のこしあんを包みました。くどくない甘みに仕上がりました。「お父様、一つどうぞ。」墓前にはいい香りの水仙を供えるつもりです。時の経つのは早いものです。私もこの家で死ねたら幸いだと思います。