曇り、26度、88%
結婚したての頃は、料理を習いたくともそんな余裕はありませんでした。インターネットなんてない時代、しかもテレビも持ってませんでした。新聞の料理欄が唯一の頼み神。子供の成長とともに、お菓子も焼きたいパンも焼きたい、家計は豊かではありませんでしたから、図書館に通っては作り方やレシピの本を読んでいました。人様に手解きを受けないまま自己流で始めたお菓子作りやパン作りです。
最近ではネットでレシピも頂戴出来ます。YouTubeでは、料理人の手元まで流してくれます。手で作るものは、手の動きを見るか見ないかでは大きく違うと思うこの頃です。この主婦歴そろそろ40年の間、どれくらいのパンやお菓子の失敗を重ねたか知れません。型通りに焼き上げらない食パン、膨らみが悪いスポンジ。オーブンから出して来てがっかりします。失敗ですから目の前から早く消えて欲しい。でも、バターに粉に卵、主人が働いたお金で買ったものです。ゴミ箱に入れてしまえば目の前から消えてくれますが、粗末に出来ないので私のお腹に入れます。
食パンがきれいに焼けるようになるまで半年はかかったと思います。当時は、モモより大きな中型犬のテツがいました。お昼は毎日焼き損ないのパンをテツと私とで食べました。飽きて来るとフレンチトーストにして食べました。それでも量が減りません。そこでパンプディングを作ります。乾かしたパンにカスタード液を流して蒸し焼きにします。これはお腹に沢山入ります。卵とミルクのカスタードは大好きですが、ちょっと物足りない、そこでラムレーズンを入れました。なんと蒸している間もラム酒のいい香り、以来もう何十年も常にラムレーズンの作り置きが我が家にはあります。簡単にレーズンにラムを振り入れただけのものです。パンに入れることも焼き菓子に入れることもあります。失敗したパンプディング、スポンジプディングに使う量が一番多いと思います。
ラムレーズンは私の失敗の妙薬です。出来損ないのパンも膨らまないスポンジも美味しいものに変えてくれます。きっと、60になっても70になっても、お昼の私のご飯にはラムレーズン入りのプディンが食卓に上りそうです。