曇り、23度、83%
二階から階段を下りて居間に入ると、お酒のグラスを前に、片手にはパイプを持った父が本を開いていました。秋が深まって行くちょうどこんな時期だったと思います。そうした本を開いている父の姿を見るのが好きでした。私が小学校の5年生の頃の記憶です。今思うと、夜遅くまで起きている私に付き合っていてくれたのかもしれません。父は寝る前に、二階に向かって、「いい加減にして、休みなさい。」と声をかけてくれました。
10年ぐらい前でしょうか、日本に帰る度、寂しく思うことがありました。電車やバスに乗ると、スーツを着た男性が鞄から漫画の本を出して来て読む姿を見かけた時のことです。ひとつの車両に1,2人ではありません。ずらっと並んで漫画の本を読んでいます。これも時勢なのかななどと思い眺めていました。最近はといったら、スマホでゲームやメッセージを打っている人ばかりかと思われるでしょうが、ところが、文庫本や新刊を読み入っている人を見かけます。文字離れなどと言われますが、まだまだ根強く本に固執する人たちがいるようです。
昨晩、夕飯のあと、主人がソファーで本を読んでいます。彼の好きな音楽がスピーカーから静かに流れています。いつもは食後も仕事の遣り取りで、PCを開けていることが多い主人です。ゆっくりと寛ぐ主人の横には、モモさんがべったり。ページをめくる音が聞こえます。ああいいなあ、人が本を読む姿は。そう思った時、50年近くも前の父の本を読む姿を思い出しました。主人は当時の父の年齢を遥かに超していますが、二人の姿が重なりました。
今朝、走りながら私の本を読む姿を思い浮かべます。あれあれ、ご存知のように私はベットかソファーに横になって本を読みます。周りには辞書や地図を拡げています。時には、お菓子やお茶も手の届くところに。足などは壁にあげています。モモさんは脇のところで、すーすーと寝息を立てて熟睡中。これでは、誰が見ても、いい本を読む姿ではありません。恥ずかしいなあと思いながら、今日もまた、ベットでゴロリと本を開きます。