
◎2011年7月22日(金)
塔の峰から庚申山。基本的には笹ヤブがずっと続いている。ほぼ真西に向かう。起伏はさほどない。塔の峰からの鞍部を過ぎれば、後は登りのみ、ここは野生の天国にも思えるが、シカ1頭にも出会うことはなかった。
(塔の峰を振り返る)

(左に庚申山)

(なかなかの光景なのだが)

(合流まであと少し)

(石塔尾根の踏み跡に合流。何だかきたない風景)

(三俣山方面)

(鋸山と皇海山)

(庚申山の登山道に合流)

45分ほどのバトルが続き、ようやく庚申山山中の樹林に入った。右手の甲にはキズが6本。血は舐めただけで済ませた。手袋は汗ばむから冬でも嫌いだ。ここからは倒木の世界。黒檜岳から社山に向かう樹林の雰囲気に似ている。倒木を除けながら、正面の左右に延びる連なる尾根を目指した。ようやく、石塔尾根に合流。正面に皇海山と鋸山が大きく控えていた。最高の景色だ。三俣山からシゲト山も見える。前からの課題であるが、国境平と三俣山の区間、年内には何とかしないと。実は昨日、いずれを選ぶか、ぎりぎりまで迷った。庚申山までは笹に覆われながらも、しっかりした踏み跡がある。これは、塔の峰ルートとは違い、人為的な踏み跡だ。テープも出てきた。こんな目印のない塔の峰尾根で歩く方は、まず奇人・偏屈と言えるかもしれない。なでしこ山ガールであっても間違っても入り込むことはあるまい。庚申山コースに合流。木には赤テープが巻かれていた。
(庚申山山頂)

(展望地からの眺めもいい)

気分的に長く感じながら庚申山に到着。だれもいなかった。山頂で写真を撮り、展望地に向かう。ここにもだれもいない。ジワジワと暑くなってきている。水は500ml飲んでいた。タバコは5本も吸っていた。軽く、菓子パン2個とウィダーイン2個で腹を満たす。さてどうするか。11時半だ。天敵の暑さが気になったが、風があるからまだいい。林道を、かじか荘を経由して親水公園まで延々と歩く方が、熱中症にはむしろなりやすいかも。屁理屈だ。今のところ、2尾根歩きを敢行したい気分が強く、断念の理由が見つからない。よじれた靴下を理由にするわけにもいくまい。いささか疲れはじめてはいるが、体力はまだヘロヘロ状態の兆しはない。一時、スリットダムからの取り付きで太股に痛みが走ったが、片方だけで済み、今は何も異状がない。さほど迷わずに、オロ山を目指すことにする。靴下をまた履き直す。臭い湯気が出ていた。よほど素足のままでいようかと思ったが、これでは汗で滑ってよろしくない。靴下はさらに伸びていた。ふにゃふにゃ。ゴムが伸びたパンツと同じ。
(オロ山に向かう)

庚申山の山頂を通過する際、低中年男の2人組がやって来た。庚申山は初めてらしく、展望地の場所を聞かれた。これから庚申山荘の方に戻るのかと聞かれ、「ヤブこぎで来ましたから、またヤブに戻りますよ」と答えたら、一気に興味をなくした顔になった。世間のヤブこぎを見る目は冷たい。ヤブルートで薬師岳に行った際も、妙齢のオバチャンにヤブ歩きと知られるや、軽くあしらわれた。左手に皇海山の展望を楽しみながら石塔尾根を下る。塔の峰尾根への分岐に分かれ、1,745mポイントを目指して下る。ここもまた笹ヤブの別天地になっている。まずいことに、シャクナゲまで出てきた。幸い、今のところ、獰猛さはなく、踏み跡の脇にこじんまりとしてくれている。いきなり、つんのめりに倒れた。倒木だ。塔の峰尾根歩きと違い、ここは倒木に要注意だった。オロ山に至るまで都合3回の転倒。向こう脛を強打1回。
(ヤブの中は倒木だらけ)

尾根に忠実に、オロ山を正面に見ながら歩いたが、ヤブがひどいところに出た。ここは左の樹林に逃げるしかない。樹林の中は確かに歩きやすいが、オロ山が見えなくなる。心持ち左に歩いてしまい、不安になり、樹林のヘリに行き、オロ山を確認した。やはり間違っていた。自分の方向感覚が何とアテにならないかを改めて認識。気づいただけでもまだまし。そのまま歩いていたら、松木渓谷を眼下にして立ちつくしていた。鞍部から先、オロ山が正面に見えながら、なかなか大きくならない。いつまで経っても同じ大きさだ。そろそろ疲れが出てきたか。ここまで来てこれはやばいな。登り返す気力はないよ。そんなことを考えていたら、ヤブの中でゴソゴソと音がする。心臓が止まりそうな恐さに襲われた。中から出てきたのは、鳥が5羽。丸い大きな鳥で、瞬間、コジュケイかと思った。助走してからでないと飛べない鳥だ。1羽、助走に手間取っているのがいて、見ていて、笑ってしまった。世の中、鳥でもノロマはいるものだ。コジュケイは、こんな山にでもいるのだろうか。きっと違うだろうな。
(オロ山山頂)

遠くから見るほどのきつさもなく、あっさりとオロ山に着いた。このルートは、笹ヤブに覆われているとはいえ、踏み跡がしっかりしているから、これを遠目にしながら歩けば、漕ぐほどのことはない。テープもしっかりと続いている。オロ山は、以前来た時の印象から、シャクナゲの天国といったイメージが強かった。確かに、相変わらずひからびたシャクナゲがはびこってはいるが、踏み跡を丁寧に拾って進めば、地獄に引き込まれることはない。また、迂回ルートもあった。30年前の明大ウォーキングの山名標識は健在だ。あの頃、歩いたウォーキング、その後、ここに来た元部員はいるのだろうか。まだまだ先は長い。次第に暑くなってきた。まだ12時台。暑さとの勝負はこれからだな。時間配分を考える。ここから沢入山まで1時間、沢入山から中倉山まで1時間。そして、林道まで1時間。都合3時間。4時に林道に降り立てれば御の字だ。それを過ぎても、この時期、しばらくは明るい。身体が持てばの話だ。ちょっと安易な計画性かなぁ。
(オロ山からは笹も次第に低くなる)

笹ヤブを沢入山に向けて下る。この尾根歩き、こんなに笹ヤブが多かった記憶がない。しかし、大分、笹も低くなり、膝程度だ。沢入山の右手奥に小さく中倉山が見える。あれでは、2時間で行き着くには甘いかも。左手が谷底になった、足尾の荒廃した山々を見ながら歩く。決して、気分のいいものではないが、このすごい景観には強烈な印象が残る。正面に大平山。右手に目を凝らすと、林道がかなり上まで行っているのがよく分かる。
(沢入山と、かすかに見える中倉山)

(オロ山と皇海山)

(松木川方面)

(沢入山)

(沢入山山頂)

沢入山にもなかなか着かなかった。アップダウンが結構ある。あれが沢入山だと思った山の先には、まだピークが2つあり、沢入山山頂は2つ目のピークだ。陽を避けるところがなく、かなり参ってきていた。立ち休みも、タバコの回数も多くなり、水の補給も増えた。ほうほうの体といった感じで沢入山に辿り着いた。ここは木の下に日陰がある。この沢入山、自分では「そうり山」で覚えているが、山名事典では「さわいり山」になっている。渡良瀬渓谷鉄道にある「沢入駅」は「そうり駅」だ。「そうり山」が妥当だろうな。
(塔の峰と庚申山)

沢入山から中倉山にかけては、下りがメインとなり、あまり体力を消耗することはないが、岩場歩きが多くなる。疲れた身体に岩場歩きは応え、さらに慎重にならざるを得ない。精神的にかなり疲れる。後ろを振り向けば、沢入山から、あんな急斜面をよくも下ったものだと、恐ろしげな気分になる。ようやく鞍部に着き、なだらかな斜面を中倉山に登る。自分には、このコースの中で、絶景を見ながら、危険もさほどないアルプス系の歩きを味わえる、一番お気に入りのスポットだ。とはいえ、冬は強風にさらされるところだ。南側には、午前中に辿った塔の峰尾根。塔の峰も、角度を変え、あちこちから見ていると、いずれも姿が違って見える。今日のところ、庚申山への登りから振り返った顔が一番良かった。これまでは、中倉山に登っても、注意すらしない山だったのに。ついでながら、先日、ハイトスさんと歩いた岩峰群。間近に見える。これも、歩いたゆえに関心も向けられる。足尾の山も、まだまだ序の口だなぁ。
(中倉山)

(中倉山山頂)

(塔の峰尾根)

何とか予定に近いタイムで中倉山に到着。陽は陰り、雲も出はじめ、男体山も上が見えなくなった。庚申山も皇海山も隠れた。ここから見える半月山の山容は、他を圧倒しているように思える。さながら、日光常念といった風情だ。車で行ける俗化した山には到底思えない。さて、中倉山からこの先、ここに至って、危険な歩きをするつもりはさらさらない。命も惜しい。刃渡りのザレ尾根は当初から想定していない。ネットで見る限り、だれもが命がけで歩かれている。慎重なハイトスさんしかりだ。ここは、着実に下りられる標準的なコースで下るとしよう。これまでの苦労が、あっさりと消えてしまったのではたまったものではない。いずれということも、自分にはあり得ない。
(踏み跡とテープを頼りに下山)

(途中から見えた岩峰群と備前楯)

(ロープが張り巡らされていた)

標準的なコースには、多種類のテープとしっかりした踏み跡があった。それに注意しながら下った。しかしながら、急斜面の下りが続く。ジグザグも多い。ここも、2回は滑って転んだ。木々の葉が生い茂り、冬に来た時に感じる明るさは、この時期、この時間にはない。ロープも付いていた。部分的かと思ったが、長々と付いている。崩れそうなところでもないのに、このロープは何のためのものだろう。それだけ、中倉山も備前楯山のように一般的な山になりつつあるのだろうか。それはそれでいい。世界遺産にはならずとも、日本ではなかなか目にすることのできない松木川の周囲の絶景を眺めるには最高のスポットだ。
(ようやく林道に出た)

林道にようやく出た。途中、休憩を入れ、水も飲み干した。今日は2.5リットル。足の指先がやたらと痛い。中倉山からの下りでやられてしまった。林道の脇に沢が流れている。顔を洗った。アブもいないようだし、裸になって、全身に水をかけたい衝動にかられた。だが、何万分の1の確率であっても、万一ということがある。通りがかりの人に見られるケースもあるし、熊に追いかけられたら、裸で逃げるわけにもいくまい。ここは我慢。やはり、万一ということはあるもので、しばらくしたら、工事用の車が林道を上がって来た。
(長~い歩きだった)

親水公園の駐車場に到着。もう5時近い。かじか荘に寄って風呂にでも浸かりたいところだが、犬の散歩をせねばならない。着替えだけで済ます。靴を脱ぎ、足を見て驚いた。やはり、親指の爪が剥げかかっている。近日中にぽろりだな。大分前から黒ずんでいたから、下に若い爪が出ていればいいが。そして、足の裏にはマメができていた。これは、よじれ続けた靴下のせいだろう。家に帰って風呂に入ると、満身創痍・打ち身だらけになっていた。
今回のW尾根歩き、疲労度たっぷりながらも、久しぶりの満足山行だった。周回ができたのも、ひとえに真夏のカンカン照りでなかったからだともいえる。真夏の陽気であったら、きっと、庚申山から逃げたろうし、また、日を改めて行くことになったろう。それだけはご免こうむりたいといったところだが、今日の山行で、気になっているところがあることだけは確か。今回は、噂のスリットダムで混乱を来してしまったが、手前の尾根を下から登って行けば、どういうことになるのだろうか。我が身で確かめてみる価値はありそうだ。いずれまた。
塔の峰から庚申山。基本的には笹ヤブがずっと続いている。ほぼ真西に向かう。起伏はさほどない。塔の峰からの鞍部を過ぎれば、後は登りのみ、ここは野生の天国にも思えるが、シカ1頭にも出会うことはなかった。
(塔の峰を振り返る)

(左に庚申山)

(なかなかの光景なのだが)

(合流まであと少し)

(石塔尾根の踏み跡に合流。何だかきたない風景)

(三俣山方面)

(鋸山と皇海山)

(庚申山の登山道に合流)

45分ほどのバトルが続き、ようやく庚申山山中の樹林に入った。右手の甲にはキズが6本。血は舐めただけで済ませた。手袋は汗ばむから冬でも嫌いだ。ここからは倒木の世界。黒檜岳から社山に向かう樹林の雰囲気に似ている。倒木を除けながら、正面の左右に延びる連なる尾根を目指した。ようやく、石塔尾根に合流。正面に皇海山と鋸山が大きく控えていた。最高の景色だ。三俣山からシゲト山も見える。前からの課題であるが、国境平と三俣山の区間、年内には何とかしないと。実は昨日、いずれを選ぶか、ぎりぎりまで迷った。庚申山までは笹に覆われながらも、しっかりした踏み跡がある。これは、塔の峰ルートとは違い、人為的な踏み跡だ。テープも出てきた。こんな目印のない塔の峰尾根で歩く方は、まず奇人・偏屈と言えるかもしれない。なでしこ山ガールであっても間違っても入り込むことはあるまい。庚申山コースに合流。木には赤テープが巻かれていた。
(庚申山山頂)

(展望地からの眺めもいい)

気分的に長く感じながら庚申山に到着。だれもいなかった。山頂で写真を撮り、展望地に向かう。ここにもだれもいない。ジワジワと暑くなってきている。水は500ml飲んでいた。タバコは5本も吸っていた。軽く、菓子パン2個とウィダーイン2個で腹を満たす。さてどうするか。11時半だ。天敵の暑さが気になったが、風があるからまだいい。林道を、かじか荘を経由して親水公園まで延々と歩く方が、熱中症にはむしろなりやすいかも。屁理屈だ。今のところ、2尾根歩きを敢行したい気分が強く、断念の理由が見つからない。よじれた靴下を理由にするわけにもいくまい。いささか疲れはじめてはいるが、体力はまだヘロヘロ状態の兆しはない。一時、スリットダムからの取り付きで太股に痛みが走ったが、片方だけで済み、今は何も異状がない。さほど迷わずに、オロ山を目指すことにする。靴下をまた履き直す。臭い湯気が出ていた。よほど素足のままでいようかと思ったが、これでは汗で滑ってよろしくない。靴下はさらに伸びていた。ふにゃふにゃ。ゴムが伸びたパンツと同じ。
(オロ山に向かう)

庚申山の山頂を通過する際、低中年男の2人組がやって来た。庚申山は初めてらしく、展望地の場所を聞かれた。これから庚申山荘の方に戻るのかと聞かれ、「ヤブこぎで来ましたから、またヤブに戻りますよ」と答えたら、一気に興味をなくした顔になった。世間のヤブこぎを見る目は冷たい。ヤブルートで薬師岳に行った際も、妙齢のオバチャンにヤブ歩きと知られるや、軽くあしらわれた。左手に皇海山の展望を楽しみながら石塔尾根を下る。塔の峰尾根への分岐に分かれ、1,745mポイントを目指して下る。ここもまた笹ヤブの別天地になっている。まずいことに、シャクナゲまで出てきた。幸い、今のところ、獰猛さはなく、踏み跡の脇にこじんまりとしてくれている。いきなり、つんのめりに倒れた。倒木だ。塔の峰尾根歩きと違い、ここは倒木に要注意だった。オロ山に至るまで都合3回の転倒。向こう脛を強打1回。
(ヤブの中は倒木だらけ)

尾根に忠実に、オロ山を正面に見ながら歩いたが、ヤブがひどいところに出た。ここは左の樹林に逃げるしかない。樹林の中は確かに歩きやすいが、オロ山が見えなくなる。心持ち左に歩いてしまい、不安になり、樹林のヘリに行き、オロ山を確認した。やはり間違っていた。自分の方向感覚が何とアテにならないかを改めて認識。気づいただけでもまだまし。そのまま歩いていたら、松木渓谷を眼下にして立ちつくしていた。鞍部から先、オロ山が正面に見えながら、なかなか大きくならない。いつまで経っても同じ大きさだ。そろそろ疲れが出てきたか。ここまで来てこれはやばいな。登り返す気力はないよ。そんなことを考えていたら、ヤブの中でゴソゴソと音がする。心臓が止まりそうな恐さに襲われた。中から出てきたのは、鳥が5羽。丸い大きな鳥で、瞬間、コジュケイかと思った。助走してからでないと飛べない鳥だ。1羽、助走に手間取っているのがいて、見ていて、笑ってしまった。世の中、鳥でもノロマはいるものだ。コジュケイは、こんな山にでもいるのだろうか。きっと違うだろうな。
(オロ山山頂)

遠くから見るほどのきつさもなく、あっさりとオロ山に着いた。このルートは、笹ヤブに覆われているとはいえ、踏み跡がしっかりしているから、これを遠目にしながら歩けば、漕ぐほどのことはない。テープもしっかりと続いている。オロ山は、以前来た時の印象から、シャクナゲの天国といったイメージが強かった。確かに、相変わらずひからびたシャクナゲがはびこってはいるが、踏み跡を丁寧に拾って進めば、地獄に引き込まれることはない。また、迂回ルートもあった。30年前の明大ウォーキングの山名標識は健在だ。あの頃、歩いたウォーキング、その後、ここに来た元部員はいるのだろうか。まだまだ先は長い。次第に暑くなってきた。まだ12時台。暑さとの勝負はこれからだな。時間配分を考える。ここから沢入山まで1時間、沢入山から中倉山まで1時間。そして、林道まで1時間。都合3時間。4時に林道に降り立てれば御の字だ。それを過ぎても、この時期、しばらくは明るい。身体が持てばの話だ。ちょっと安易な計画性かなぁ。
(オロ山からは笹も次第に低くなる)

笹ヤブを沢入山に向けて下る。この尾根歩き、こんなに笹ヤブが多かった記憶がない。しかし、大分、笹も低くなり、膝程度だ。沢入山の右手奥に小さく中倉山が見える。あれでは、2時間で行き着くには甘いかも。左手が谷底になった、足尾の荒廃した山々を見ながら歩く。決して、気分のいいものではないが、このすごい景観には強烈な印象が残る。正面に大平山。右手に目を凝らすと、林道がかなり上まで行っているのがよく分かる。
(沢入山と、かすかに見える中倉山)

(オロ山と皇海山)

(松木川方面)

(沢入山)

(沢入山山頂)

沢入山にもなかなか着かなかった。アップダウンが結構ある。あれが沢入山だと思った山の先には、まだピークが2つあり、沢入山山頂は2つ目のピークだ。陽を避けるところがなく、かなり参ってきていた。立ち休みも、タバコの回数も多くなり、水の補給も増えた。ほうほうの体といった感じで沢入山に辿り着いた。ここは木の下に日陰がある。この沢入山、自分では「そうり山」で覚えているが、山名事典では「さわいり山」になっている。渡良瀬渓谷鉄道にある「沢入駅」は「そうり駅」だ。「そうり山」が妥当だろうな。
(塔の峰と庚申山)

沢入山から中倉山にかけては、下りがメインとなり、あまり体力を消耗することはないが、岩場歩きが多くなる。疲れた身体に岩場歩きは応え、さらに慎重にならざるを得ない。精神的にかなり疲れる。後ろを振り向けば、沢入山から、あんな急斜面をよくも下ったものだと、恐ろしげな気分になる。ようやく鞍部に着き、なだらかな斜面を中倉山に登る。自分には、このコースの中で、絶景を見ながら、危険もさほどないアルプス系の歩きを味わえる、一番お気に入りのスポットだ。とはいえ、冬は強風にさらされるところだ。南側には、午前中に辿った塔の峰尾根。塔の峰も、角度を変え、あちこちから見ていると、いずれも姿が違って見える。今日のところ、庚申山への登りから振り返った顔が一番良かった。これまでは、中倉山に登っても、注意すらしない山だったのに。ついでながら、先日、ハイトスさんと歩いた岩峰群。間近に見える。これも、歩いたゆえに関心も向けられる。足尾の山も、まだまだ序の口だなぁ。
(中倉山)

(中倉山山頂)

(塔の峰尾根)

何とか予定に近いタイムで中倉山に到着。陽は陰り、雲も出はじめ、男体山も上が見えなくなった。庚申山も皇海山も隠れた。ここから見える半月山の山容は、他を圧倒しているように思える。さながら、日光常念といった風情だ。車で行ける俗化した山には到底思えない。さて、中倉山からこの先、ここに至って、危険な歩きをするつもりはさらさらない。命も惜しい。刃渡りのザレ尾根は当初から想定していない。ネットで見る限り、だれもが命がけで歩かれている。慎重なハイトスさんしかりだ。ここは、着実に下りられる標準的なコースで下るとしよう。これまでの苦労が、あっさりと消えてしまったのではたまったものではない。いずれということも、自分にはあり得ない。
(踏み跡とテープを頼りに下山)

(途中から見えた岩峰群と備前楯)

(ロープが張り巡らされていた)

標準的なコースには、多種類のテープとしっかりした踏み跡があった。それに注意しながら下った。しかしながら、急斜面の下りが続く。ジグザグも多い。ここも、2回は滑って転んだ。木々の葉が生い茂り、冬に来た時に感じる明るさは、この時期、この時間にはない。ロープも付いていた。部分的かと思ったが、長々と付いている。崩れそうなところでもないのに、このロープは何のためのものだろう。それだけ、中倉山も備前楯山のように一般的な山になりつつあるのだろうか。それはそれでいい。世界遺産にはならずとも、日本ではなかなか目にすることのできない松木川の周囲の絶景を眺めるには最高のスポットだ。
(ようやく林道に出た)

林道にようやく出た。途中、休憩を入れ、水も飲み干した。今日は2.5リットル。足の指先がやたらと痛い。中倉山からの下りでやられてしまった。林道の脇に沢が流れている。顔を洗った。アブもいないようだし、裸になって、全身に水をかけたい衝動にかられた。だが、何万分の1の確率であっても、万一ということがある。通りがかりの人に見られるケースもあるし、熊に追いかけられたら、裸で逃げるわけにもいくまい。ここは我慢。やはり、万一ということはあるもので、しばらくしたら、工事用の車が林道を上がって来た。
(長~い歩きだった)

親水公園の駐車場に到着。もう5時近い。かじか荘に寄って風呂にでも浸かりたいところだが、犬の散歩をせねばならない。着替えだけで済ます。靴を脱ぎ、足を見て驚いた。やはり、親指の爪が剥げかかっている。近日中にぽろりだな。大分前から黒ずんでいたから、下に若い爪が出ていればいいが。そして、足の裏にはマメができていた。これは、よじれ続けた靴下のせいだろう。家に帰って風呂に入ると、満身創痍・打ち身だらけになっていた。
今回のW尾根歩き、疲労度たっぷりながらも、久しぶりの満足山行だった。周回ができたのも、ひとえに真夏のカンカン照りでなかったからだともいえる。真夏の陽気であったら、きっと、庚申山から逃げたろうし、また、日を改めて行くことになったろう。それだけはご免こうむりたいといったところだが、今日の山行で、気になっているところがあることだけは確か。今回は、噂のスリットダムで混乱を来してしまったが、手前の尾根を下から登って行けば、どういうことになるのだろうか。我が身で確かめてみる価値はありそうだ。いずれまた。
マニアには、垂涎の記録でしょう。とは言え、おいらにはチト無理なコースです。
実は、7/20庚申山荘泊で石塔尾根を予定していました。台風襲来で、7/21山荘泊で決行しようか迷っておりましたが、断念してしまいました。決行しておれば、中倉山あたりで追いつかれていたかもですね。
搭の峰尾根からの皇海山は、凛々しいですね!この姿はマニアでなければ見られないのですね。おいらに、その機会はあるのか?
とりあえず、庚申山から沢入山間の様子は、写真を通して何となく判ったような感触を得ました。大変参考になりました。
国境平~三股山の記録、楽しみにしております。
マニアですか。マニアックな歩きということですね。確かにそうでしょうね。あんなところを周回して、何の価値があるのかと思う方がほとんどでしょう。自己満足、自己陶酔の世界ですよ。
余計なことかもしれませんが、庚申山からオロ山に向かう場合、オロ山の鞍部の手前からオロ山が見えなくなります。目標がつけづらくなりますから、出来るだけ右側、笹ヤブ側・東側に歩いた方がいいです。逆ルートの場合は、反対に、尾根の右側・西側寄りに歩くと、尾根から逸れることはないと思います。
また、肝心な取り付きですが、庚申山の山頂から15mほど庚申山荘寄りに、左手の木に赤いヒモが結んであります。これは、以前からありました。ここから、樹林に入ればいいでしょう。
最初、このヒモがなくなったと思い、空き瓶が捨てられていたので、さりげなく、尾根への入口に置いたのですが、庚申山から戻る時、もう無くなっていました。おそらく、山頂で出会ったお2方が、危ないということで回収なさったのではと思ったのですが、ヒモが目に付きましたから問題なく戻れましたけど。
近々のご健闘をお待ちいたしております。
どのみちよくあのガレ場を登られました。
自分もやってみたいとは思いますが無理ですねぇどう考えても。
何せ70%なので自分は16時間掛かる計算になってしまいます。
他の心配はたそがれさんと同様庚申山からオロ山へ向かった当たりからエスケープルートが無くなり、尾根伝いを歩くしか無くなる事ですね。
自分の歩いていない箇所の情報が得られて助かります。
塔ノ峰からは深い笹藪なのですねぇ。やはりねぇそんな雰囲気の場所ですよね。
ところで早月尾根日帰りとどちらがきつかったでしょうか?
ついでにたそがれさんの考えられる1日谷川馬蹄形縦走、黒戸尾根往復日帰りの難易度はどの様になりますでしょうか。
自分がイメージをつかめるのは1日谷川馬蹄形縦走と今回の周回だけです。
ご参考までによろしければ先達のご意見を。
大変参考になるリポート有難うございます。
私の足では12時間は軽く超えそうです。
暑さとの戦いか、時間との戦いか、登る時期が悩めるところです。
やり残している宿題が多いので、いつ挑戦できるかはわかりませんが。
ハイトス係数70%はあまり意味あるものでもありません。出遅れた私が必死に追いかけた結果の数値でしか過ぎませんから。自分では鈍足と思っておりますゆえ。
ご質問の件、状況がまったく違いますからね。何とも答えようがありませんよ。まして、あの時は2人歩きだったし。早月尾根は登り一辺倒でした。アップダウンはありません。その意味では、今回の方がきついかも。
次の、予想する難易度ですが、黒戸尾根も早月尾根同様にずっと登りです。そういう面からすると、谷川馬蹄日帰りの方がきついのではなかろうかと。
12時間もかかりませんよ。せいぜい10時間でしょう。スリットダムでもたもたしたり、靴下絞ったり、後半はバテ気味でしたから、時間もかなり浪費しています。
野球親爺さんは、先日、足尾を歩かれた際に、5リットルもの水をお持ちになったようですが、このルート上に水場はありませんから、7リットルは必要かもしれませんね。
行かれるのでしたら、ぜひ、紅葉の時期に歩かれることをお薦めいたします。