たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

夜後沢大滝再び。なんということはない、前回の前衛滝のすぐ上にあった。それを知らずに余計な歩きをするハメになったが、滝上の沢の様子を少し確認できただけでも成果はあった。

2021年08月24日 | 近所じゃない群馬県の山
◎2021年8月22日(日)

 8月1日に行った「夜後沢大滝」だが、ブログ原稿を記しながら、果たしてそれが大滝だったのか疑心暗鬼になっていた。他の方々の記事に掲載された滝の写真とは違う。そして『ぐんま滝めぐり90選』に出ている大滝写真は、下流部にある小滝で、間違いであることだけはわかった。その後に瀑泉さんから、自分が行ったのは「前衛滝」ではないかとご指摘があり、やはり、残念ながら自分は本物の「夜後沢大滝」を見ていなかったことになる。ただ、その「前衛」の意味がよくわからない。『滝めぐり』には、写真は間違っていたとしても「上段20m、下段7m」の表記があり、さらに「二段の大滝は真正面から眺めることができ…」とある。自分の見た滝が下段滝だとすれば、当然、上段滝も見えたはずで、この記述もまた怪しくなる。『滝めぐり』記載は信用しないことにしたが、二段瀑であることに間違いあるまい。瀑泉さんの「前衛」が「下段」を指しているのか、もしくは、「さらに奥」という意味合いなのかよくわからなかった。下段なら上段は真上になる。こんな疑問をずっと持ち続けるのも嫌なので、改めて行くことにした。だが、天気やら用事で都合もつかないままに二十日が過ぎてしまった。

 みなかみ町に向かいながら、雨がポツリポツリと車窓にあたった。これではあきらめかと思ったが、沼田を過ぎると青空も出てきて、夜後沢橋に着く頃には晴れになっている。ただ、雨上がり直後で、路面はおろか、周辺の木々の葉も雨粒をたっぷり含んでいた。これじゃ濡れるなと、沢の臭いも思い出し、気分的にはまったく盛り上がらない。そこに熊谷ナンバーのジムニーがやって来て、バス停脇に車を止めた。中から出てきたのはウエーダー姿のオッサンで、こちらも釣りかと警戒したらしい。滝見に来たと言ったら、不思議そうな顔をしていた。沢登りは理解できても滝見は聞いたことがないとおっしゃる。オッサンの感覚では、滝は観光滝でしかないようだ。オッサンは橋の下流に向かい、こちらは上流に向かう。

(空気はじっとり。下半身はぐっしょり。前回の1日以来、誰か歩いた方はいるのだろうか)


(つい気をとられてしまう)


(美しい沢だと思う。効果はおそらくコケだろうな)


(どうしても立ち止まってしまう)


 さっそくヤブの草露に下半身はあっという間に濡れた。泥濘もあるだろうと、今日はスパ長にしたが、ある程度は正解だったかも。当初は地下タビの予定だった。前回の経験で、沢を横切っても歩くことはないとわかってもいたし。
 当初は、脇目もふらずに前回失敗の大滝に向かうつもりでいたが、つい渓相がきれいで、立ち止まって眺めては時間がかかる。なぜか沢に嫌な臭いは漂っていず、たまにドクダミの臭いがするだけだったから、その点では衣類が濡れても気にはならなかった。沢の勢いは前よりも強い。不安定な道はやはり水気をたっぷり含み、靴底がやわらかくなった土を拾い、スパイク効果はないに等しい。

(前回、陽があたってうまく撮れなかった7、8m滝。水量が増え、ずんぐりした形の滝になっていた。この滝は「夜後沢小滝」とも呼ばれているらしい)


(前回これを出したかったが、ピンボケだったのでやめた。この頃になると、全身汗、泥で滅茶苦茶に不快感が出てくる)


 陽があたるようになると、急に暑くなり、今度は汗で上半身がぐっしょり。メガネは湿気で曇り、頭からは汗が落ちてメガネのレンズに垂れる。ヘルメット下の汗止めを持ってくるのを忘れていたから、手拭いを頭に巻くと、予備のもう一枚の手拭いで汗、メガネ、カメラのレンズ拭きに使うしかなく、すぐに絞れるまでになり、とうとう、メガネはシャツの濡れていない部分で拭くしかない状態になった。これが帰着まで続き、やがてシャツの乾いた部分はなくなり、まして、途中のロープ場でズルリといったから、手拭いは泥落としにもなってしまい、メガネの汗は沢の水で落とすしかなく、これで風でも流れていれば別だろうが、そよともしない。まったく不快な歩きになってしまった。平坦に近い歩きとはいえ、こんな状態がずっと続くのかと思うと、短時間でも普通はさっさと帰る。今回は「改めて」だから、放り出すわけにもいかなかった。三回目は想定していない。今回、大滝を見られなかったらそれまでだ。

(これを見てしまうと、二段滝だし、どうしても大滝だと思ってしまう。それゆえ上段が夜後沢大滝だとしてしまった)


(前衛or下段の滝、つまり、自分が勘違いしていた夜後沢大滝。結果として、上に出るには、この写真の左の小沢に少し入って、写真で切れている左端のちょい左を登り、滝上にチラリと見える丘状のヤブを下れば、大滝の下に出られたわけだ。そんなことは知らないから、今回は大分先まで行って、大滝自体を巻いてしまったということになる。大滝は右の岩壁に隠れて見えない。その程度の距離ということになるのだが)


(小沢を登って、ここから巻こうとした。かなり行き過ぎている)


(小沢を見下ろして。このあたりから、落ちた枝がやたらにヘビに見えるようになっていた)


 結局、時間をかけて前回の大滝に着いた。出発から25分。汗拭いやメガネ拭きで時間をとられた。水量は前よりも多い気がする。さて問題はここからだ。左から巻くしかないわけで、左からは小沢が注ぎ込んでいる。何となく沢を覆うヤブを踏んだような跡があるのでこれが正解らしい。沢沿いに進むと(実はかなり行き過ぎていることが後でわかったが)、小沢の左岸から上に登る斜面に明瞭な踏み跡が続いている。それを登ってみる。また泥んこになった。

(登り上げるとでかい岩というか岩壁。その下にはっきりした道のようなものが通っている)


(これは確実に道。作業道だろうか)


(樹間から見えた大滝。これっきりかと思った)


 こんなに巻き上げるものなのかと疑問を持ちながらズルズル登る。こちらは前衛滝と後衛滝の位置関係がわかっていないから踏み跡を追うしかない。すぐに岩盤の前に出た。びっくりした。その先は踏み跡どころか明瞭な道になっていた。ほっとして足元を見ると、長靴の入口に小さなヤマビルが3匹引っ付いて、靴の中に入ろうとしていた。すべてつかんで放り出したが、以降、ヤマビルに出会うことはなかった。
 さて、巻いたところで適当なところから滝に降りないといけないのだが、注意深く探しても下っている踏み跡はなく、試しに危なっかしく下ってみると、その下は岩壁でとてもじゃないが先は不可能。樹間からチラリと大滝が見えた。全体像ではない。胴体部分だけ。すごい勢いで落ちている。万事休す。自分には縁のない滝だったようだ。正直、この時点であきらめた。自分の記憶にある大滝見物記事には、危ない思いをしたといった記載はなかったけどなぁ。

(道は高さを下げて沢に落ち込んで行く。左俣の沢になる)


(こちらは右俣の本流)


 こうなると、この道がどこに続いているのか気になった。辿ってみる。だが、夜後沢が低い位置になると、道は沢に吸収されて消えた。沢はそこで二俣になっていて、水量からして右俣が本流だろう。延長道はもしかすると沢沿いに続いているのかもしれない。ナメ沢とのことなので、よほどにこのまま行ってみようかと思ったが、この分岐部分から先を眺める限りは、水深、水量、水勢ともに素人には無理なようだ。荒っぽい流れの小滝も続いている。流されるのがオチだし、ずっと雨続きだったのでは危険だろう。まして、長靴では無理。眺めただけで、いつか改めて来ようかと思った。適当なところから尾根に出て、玉原越経由で歩けるかもしれない。

(一応、滝の上の沢沿いに歩いてみるが、ここもまた水は強い)


(この辺はヒザが震えた。道に戻る)


(落ち着いた流れなのでまた降りてみる。斜面はズルズル)


(なお先に行ってみる)


(きれいな流れは続く)


(ここで限界。大滝の落ち口付近のようで、急降下している)


 戻ることにする。全身びっしょりで不快そのもの。手拭いもすでに泥だらけになったので沢で洗った。せめて、大滝の落ち口くらいは見て行こうかと道に上がる。長靴では沢通しで下れそうもなかったからだ。
 また悪戦苦闘になる。道が次第に高くなり、沢に降りるのがかなり厄介になった。何回目かの試みでようやく沢に出たが、つかむ木や枝はすべてヌルヌルしていた。何とか落ち口の手前まで行ったが、それが落ち口付近だったかどうかは自信がない。先に行きたくとも、長靴のスパイクを石に引っかけて転んだらひとたまりもない。また泥んこになって道に這い上がった。ノドがカラカラになっていた。水筒の水をガブ飲みした。相当に緊張していたようだ。

(がっかりして道に復帰。戻る)


(未練あり。簡単に降りられそうだが、この先は垂直になっている)


(ヒョングリ部分。これで我慢というのも悲しいものがある)


(大岩に戻った)


 つまるところ、もう帰るしかないわけで、念のため、沢側の踏み跡に目を凝らしたが、やはり見つけられないままに大岩の前に出た。すでに泥だらけなのだから気にすることもないし、こんな滝を見に来る物好きもいない。尻滑りで小沢に下った。

(ヤブ越しに大滝が見えた)


(下る途中ではっきり見えたのはなぜか落ち口あたりだった。これはアップしての写真で、ヤブからそのまま行けるわけもなく、途中はプロでもきつい岩壁のトラバースになる)


(これは下段滝の落ち口)


(足元がどうなっているのかわからないのでかなり慎重になっている)


(ようやく滝下に出られた)


 小沢が間近に迫ったところで、左手にヤブを押し倒した感じのところが斜め右上向きに続いているのが見えた。最後のあがきで行ってみる。濃いヤブだ。ここでまた全身びっしょり。と、そのヤブの先に滝が見えた。大滝らしい。前衛滝のすぐ上だったのか。灯台下暗しじゃないの。そんなことよりも、滝下まであと10mはある。このヤブの下が見えない。幸い首から上だけは出ている。滝の前に出た時はほっとした。大して見るべきほどの滝ではないかもしれないが、ここでようやく達成感に近い気持ちが出た。

(縦にして)


(ヒョングリをアップ)


(滝つぼ)


(無理して正面に回ったが、変化はなかった。右には流されそうで行けなかった)


(見納め。夜後沢本流を歩くことはあったとしても、ここに寄れるものやら)


(下段滝に落ちる)


 前衛滝(=下段滝)の7mが妥当だとしても、目の前の上段滝の20mは苦しかろう。せいぜい15mくらいのものではないのか(後でカシミールで標高差を調べると17mだったが、落ち口までは行っていないから相応の落差かと思う)。ヒョングリもはっきり見える。水しぶきがすごい。それもそのはず、滝下は広くもなく、すぐ下段滝の落ち口になっていて、水しぶきは避けようもない。右に左にと移動しては写真を撮ってみるが、手袋の汚れが気になってか、カメラを持つ手が震えてしまう。ピンボケだらけ。手袋を脱いでようやくまともに撮れたのが数枚。写真よりもビデオ撮りの方がうまく表現できたようだ(⇒これ)。

(下段滝にまた寄って戻る)


(飽きない流れが続く)


(水流が強いからか、線状に白くなってしまう)


(そろそろ終わりか)


(もういいでしょう)


 下段滝を改めて見て帰路に就く。気温はグングン高くなっていく。沢に身体を沈めたいが着替えの持ち合わせがないので我慢する。ロープ場でまたズリ落ちた。

(帰着。衣類も顔もひどい状態だろう)


 駐車場に到着。予定では次の滝がいくつかあった。身体が泥と汗の塊りでは行く気は失せた。このまま帰ろう。着替えもないのでそのままの格好だ。せいぜいシートにバスタオルだけはかぶせた。そのままではまだ新車のシートも汚れて臭いを放つことになる。ちょうど、釣り屋のオッサンが戻って来た。どうでしたか? と聞くと、だれでも同じようなことを答えるが、オッサンも例外に漏れず、「流れが強くて、水も多いのでダメ。ちっこいのが5~6匹釣れたけど、みんな放してきた」とのこと。これからどうすんのか。坤六峠経由で片品に行って、もう一度釣り直しとのことだったが、元気なものだ。
 猛暑の中の沢歩きも、からっとして風通しが良ければ最高なのだが、今日は無風、じっとり、ズルズルで、滝見の環境としては最悪だった。大滝と沢の上部を見られただけでも幸いではあったが。

※前回と同じような写真が並んでしまいました。同じところに別のところが少し加わっただけのことですからご容赦のほど。

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