◎2012年9月8日(土)
銅親水公園駐車場(6:30)……長平沢林道分岐(7:23)……南東尾根取り付き(7:30)……1490m(8:49)……1564m(9:21)……一般道合流(10:24)……社山(10:27)……阿世潟峠(11:13)……林道(11:46)……駐車場(13:25)
前回のブログで、歩きもしないのに、「予定」を記したばかりに、場数を踏んだベテランの方々からコメントを頂戴した。何とも気恥ずかしく、実際に早いとこ歩かないと示しがつかない。ある意味、プレッシャーがかかってしまった。折悪しく、高木から鳳凰三山の誘いがあり、それに乗ることになっていたが、土日は全国的に天気が悪く、また雨の中の歩きは嫌だし、ましてや、過去に鳳凰三山は4回も行っている。直前になって断った。どうせ、高木はグループで行くことだし、飲み会を兼ねてもいるから、来週、健康診断を控えている自分には、避けたい山行でもあった(彼からは「土曜日は曇り・日曜日は快晴」のメールが届き、何ともはやの気分)。というわけで、せめて、社山の南東尾根だけでも済ませておこうと出かけた。帰路は半月山の方に向かい、途中の1655mP(「中禅寺山」と言うらしいが)から南西に延びる尾根を下るつもりでいる。余談だが、この南西尾根、大分前の雪の時期、半月峠から社山に向かう際、誤ってかなり下まで下ったことがある。ハンターらしき踏み跡が残っていた。林道にうまく下れれば問題はないと思うが(結局、これも「予定」になってしまった)。
(南尾根取り付きへの目印。本日、ここは関係なし)
(何だか懐かしいといった感じがする)
(沈下橋?沈下道?右の方に林道が延びているのが見えるが、そちらに向かっては×。石でふさがれてもいる)
先週もそうであったが、この時期、足尾の山を訪ねる人は散発的で、今日も3台しか車がなかった。ほぼ同時に3人組が出発したが、ヘルメットを持っていたから、沢か中倉山のスリリング歩きではあるまいか。先週出会ったオバチャン2人がまた散歩していた。毎日の日課だろうか。先方は、この胡散臭いオヤジの顔を覚えてはいらっしゃらないようで幸いだ。さらにご夫婦連れの散歩。ダンナさんがどこに行くのかと話しかけてきた。社山と答えたら、「バカ尾根歩き?」と問われた。否定はしたが、このバカ尾根、南尾根のことだろうが、言い得て妙である。分岐を直進し、久蔵沢林道に入る。この林道を通るのは久しぶりだ。「阿世潟―赤倉」の標識はまだ残っている。南尾根への入口を左手に送る。この南尾根、歩いたのは8年も前の紅葉の時期だ。社山から黒檜に向かい、大平山から下った。ゴム長で7時間歩きだった。悲しいことに、当時の体力、精神力、スタミナは今や持ち合わせていない。林道を歩くに連れ、左手の南尾根はグングンと高くなっていく。この尾根、最初がつらかったのだけは覚えている。舗装が途切れ、沈下橋(?と言っていいものやら)を渡る。水は少なく、靴底に触れる程度だ。やはり渇水の気配を感じてしまう。長平沢林道分岐に到着。ここの石垣に、赤だか白のペンキで「阿世潟→」と記されていたような気がするが、見あたらない。よく見ると、赤のペンキ破片が残っていた。ここに至るまで、ほぼ平地歩きなのに大量の汗をかいた。今日は暑い。足尾だからか。山の向こうの奥日光は涼しいだろうな。しばらくの我慢だ。
(林道分岐。ここを左に。右に行くと阿世潟峠)
(南東尾根にはここから取り付いた。奥に林道が続いているが、その体をなしていない)
(まずは灌木林が続いていた)
(南尾根=社山のバカ尾根)
(いい雰囲気になってきた)
(手前から、1490m、1564m、社山)
分岐を左・長平沢林道に入る。林道とはいえ、この林道は自然に帰りつつある状態で、すぐに草むらになり、カーブすると、先は崩れていた。このカーブが南東尾根の突端だ。取り付きを探す。崩れたところから登るのがベターと思われる。石で不安定な斜面をぜいぜいしながら登ると、おあつらえ向きに、シカ道が上に向かっていた。これを辿るとしよう。何とか、尾根に出た。この先ずっと、シカ道を頼りに歩くことになる。本体にも2頭出会う。テープやらヒモの類は、とうとう最後までなかった。確かに、ここを歩く人は物好きと言えるだろう。しばらくは灌木林が続く。木は痩せて、明るい中の歩きだ。たまに林が切れると、南側の展望が良い。西側は南尾根が壁状になっている。これでは、どちらを選ぶかとなれば、だれでも迷わず南尾根だろう。地味そうな南東尾根は冴えないか。東側も、半月山系から下る尾根が多岐に渡ってうねうねして見える。ここで、下り予定の尾根を俯瞰しておく。灌木林はさほど続かず、尾根もゆったりして、ヌタ場はそこかしこにあり、今のところ気持ちの良い、草つきの尾根歩きが続いている。傾斜はやや急ながらも、あえぐほどでもない。ワイヤーが放置されていた。以前は山林関係者も入っていたのだろう。
(そろそろおいでなすったか)
(いくら何でもこれは無理。右に逃げる)
やがてガレ場が出てきた。そろそろ撤退の準備かと思い、右手・東側の長手沢を見下ろしたが、ここを下れるのはRR氏ぐらいのものだろう。素人は元に戻るしか手はない。出がけに、車に積んだままのロープを持っていこうかと迷ったが、ロープを使うようなところがあったら、さっさとやめにするつもりでいたから、結局、何も持ってこなかった。取りあえず先に行ってみる。ガレ場は何か所か続くが、危険というほどのものではない。一か所だけ、これは無理といったヤセたザレ場があったが、ここは右手の谷側も急峻ではなく、難なく迂回できた。これもシカ道のお陰だ。この先は岩場から低いササ尾根になり、ガレ場は通過したようだ。RR氏ご指摘の下1/3は通過したものと思われる。東側の谷の向こうに、久蔵沢林道が見える。
(足尾方面を見ると、備前楯山がどっしりと。あそこもやり残しルートだらけだ)
(男体山も見えてくる)
(1490mピーク)
(奥に半月山。手前の1655mピークからの顕著な尾根が3本見える)
(1490mピークから1564m、社山)
(1490mを振り返る)
(紅葉の気配)
(ここからでも半月山は遠く見える)
(1655mに向かっているのだが、さっぱり進まない)
(1655mピーク)
(言うなれば、「詠み人知らず」といった感じのケルンだ)
傾斜が徐々に急になっていく。右奥に男体山が見えてきた。振り向くと、備前楯の周辺もはっきり見える。崩壊地の工事をしたらしい昭和58年と記されたの杭が残っている。この辺は特に気分がいいところだ。ちょっとした灌木の林を通過して1490mの小ピークに到着。シカ道はずっと続いている。しばらく休む。ようやく半分だ。先には1564mピークがまだ高く見え、その先にも小ピーク。その奥に社山が見える。まだまだ遠い。個人的には、ここまでならお薦めルートだろう。足尾の山的ないい気分を味わえる尾根だ。問題はここからだった。徐々に急になる。一旦下って登り返す。南尾根はすでに幅が広がり、平らになりつつある。なかなか1564mに着かない。歩程がさっぱりと進まない。そろそろ、ばててきたか。長く休んでは少しばかり登る。この繰り返し。だから、時間ばかりが経過する。ササの原をぜいぜいしながらようやく1564mに到着。さっきの1490mに比べたら70mばかり登ったくらいだが、随分と高く登った感じがする。ようやく、南尾根とほぼ同じ高さになった。ピークにはケルンが積まれていた。まさかシカか猿ではあるまい。ここを歩く物好きもたまにはいらっしゃるようだ。
(今度は1655mを振り返ってしまった)
(何となくエンドレスの世界になりつつあるような…。雨が降ったらたまらない)
大平山の方は黒い雲で覆われている。社山にも男体山にも雲がかかってきた。風が出てきた。今日の予報は昼から雨。予定よりも早く雨が降ってしまうかも。せめて、雨が降る前に社山に着いていたい。そそくさと出発。また下って登る。気持ちはあせっても、ちっとも進まぬ歩程。急登過ぎなのだ。上に行くに連れて傾斜は増している。ここにササに隠れた倒木でもあればさらに遅くなるものだが、不思議にもこの尾根に倒木はないし、ササもずっと低いままだ。せいぜい脛程度。そろそろ足が攣りだす気配。取り急ぎ特効薬を飲んでおく。尾根形が分かりづらくなってきた。遠くから見ていると、樹林帯の中を歩くかのようだが、木はまばら。社山は雲の中に消えた。とうとう、石に腰掛けて休む始末になってしまった。この尾根、たいそう疲れるよ。
(ようやく中禅寺湖が)
(視点の高さはあの南尾根を越えたか?)
(こちらのボコボコは南東尾根。やや右に尻尾が見える)
(一般道はすぐそこ。こうなったら這ってでも行くしかあるまい)
(お疲れ!でしたか。まぁ、かなり)
ようやく中禅寺湖が見えてきた。足尾エリアから中禅寺湖を望むのもまた乙な感じがする。当たり前の話だが、中倉山や備前楯からではまったく見えない。大日崎を眺めながら、ここからの日光の紅葉もさぞきれいだろうなと思った。もう一頑張りだ。一般道が右手に見え出す。目の前の急な斜面を避け、このまま阿世潟峠寄りにトラバースしようかと思ったが、そうはいかない。谷沿いのトラバースになってしまう。地道に登るしかあるまい。また晴れてきた。何とか一般道に到達。黄赤のマークが目に入った。あぁしんどかった。南尾根歩きでは、こんな苦痛の思いをしなかったと記憶している。前半部を除き、むしろ楽勝歩きだった。南東尾根の方がよっぽどバカ尾根じゃないのか。おかしなことに、登り切った直後なのにも関わらず、また歩きたいといった気持ちがもたげているのは何でだ?嗜虐趣味はないのだが。話は飛躍するが、まずは、紅葉の時期にななころびさんにでも歩いていただこうか。南尾根から登って南東尾根を下るのもおもしろいかもしれませんよ。ただ、お好みのヤブ尾根ではありませんので悪しからず。
(いつもの社山山頂)
(黒檜岳方面はご覧のとおり。雲が動かない。大平山に向かうには彷徨覚悟だろう)
(中禅寺湖の風景)
(ここにも秋の気配が)
社山にはだれもいなかった。山頂でぐったりとした。やはり奥日光は涼しい。気持ちの良い風が流れてくる。しばらく南東尾根を眺めていた。ここから見ると、あんな尾根程度と思うのだが。やはり、体力も減退期に入りつつあるのか。一服して阿世潟峠に下る。食欲はまったくわかない。今日の中禅寺湖は群青の色をたたえている。全山が見渡せる。そして、また陽が出てきた。今日は、一日持ちそうだ。それでいて、山頂から眺めた黒檜の方はガスで見えなかった。途中、4組のハイカーと出会う。半分以上の方が社山が初めてのようで、あとどれくらいかかるかと聞かれた。あと一月もすれば、紅葉の見頃を迎える。さぞ混むだろう。さて、この下りで足を痛めた。とうとう、足の痙攣を起こしてしまった。登りの急斜面歩きが効いたみたいだ。残念ながら薬は効かなかった。
(言わずもがなの阿世潟峠。風がスースーしていい気持ち。やはり「奥日光」)
(旧道はこんな様になっていた。かつてここで無くした鈴をさがそうとしたのだが、これでは無理)
(マークやテープがところどころにあることはある)
(林道もさらにこんな状態。どうしたの?といった印象だ)
(傍らにこんな石碑が。「砂防記念碑」「明治四十一年建設」の文字が刻されていた。この林道、歴史は古い)
阿世潟峠に到着。「中禅寺山」まで登るのはかなりつらい状態。天気は持ちそうだが、そうガツガツしても仕方があるまい。体力相応の歩きをしようということで、ここからは旧道を足尾に辿ることにした。つまり、日和ったわけだ。旧道を下った途端に風が消えた。蒸し風呂の中を歩いている感じになった。峠から先の足尾は奥日光ではないのである。だから涼しくはないのだ。体感温度も5℃プラスといったところ。この旧道、以前歩いた時に比べ、荒廃はさらに増していた。2か所ほど迷い、何とか、林道に着いた。この林道もまたすさまじい荒れようだ。崩壊でかなり歩きづらくなっていた。足にも響き、何回か痙攣の痛みが走った。せっかくだから、中禅寺山からの下り尾根を確認しておいた。地形図で読み取れない沢はなかった。おかしな彷徨歩きをしない限りは林道に下り立てそうだ。また、地図に記載のない林道が途中から東に分岐していたので、これにぶつかったら御の字だろう。
(林道が消えた。右奥に続いている。車が一台)
(今朝ほどの林道分岐。右に行けば、また山を登らないといけなくなる)
(路面は乾ききっている)
(ゲートに到着)
荒廃林道が忽然と消えて、目の前を沢が流れている。そういえば、こうだったな。思い出した。向こう岸に渡る。ぎりぎりのところに車が1台置かれている。カメラマンらしき方がイスに腰掛け、望遠レンズを覗いていた。二言、三言の会話をした。きわめて直情的な感想だが、自然回復・保護の政策のもと、一般車の乗り入れを禁止しておきながら、その自然相手のカメラマンが、林道のどん詰まりまで車で来て写真を撮るのは許可するというのもまたどうかと思う。すぐに、今朝ほどの林道分岐に到着。あとは、ちんたらと林道歩きが続く。陽が直接あたり、さらに暑くなった。無風。地面は吸収する水もなくからからに乾いている。沢からの水が勢いよく出ているところで顔を洗い、身体を拭いた。ゲートを越える。注意書きを見ると、自転車も通行不可になっている。しかし、自転車はかなり入り込んでいる。おかしな話だ。親水公園に到着。朝方の3人組の車はすでになかった。あっさりと帰ってきたのだろう。
今日の南東尾根、自分には、なかなか渋くていい尾根だった。ただ、如何せん、後半の急登りには参った。スタミナ配分が上手な方なら、おもしろい歩きを期待できるかもしれない。強いて言うなら、前半部のガレ場通過は慎重にといったところだろうか。明日は、足がかなり痛くなりそうだ。
銅親水公園駐車場(6:30)……長平沢林道分岐(7:23)……南東尾根取り付き(7:30)……1490m(8:49)……1564m(9:21)……一般道合流(10:24)……社山(10:27)……阿世潟峠(11:13)……林道(11:46)……駐車場(13:25)
前回のブログで、歩きもしないのに、「予定」を記したばかりに、場数を踏んだベテランの方々からコメントを頂戴した。何とも気恥ずかしく、実際に早いとこ歩かないと示しがつかない。ある意味、プレッシャーがかかってしまった。折悪しく、高木から鳳凰三山の誘いがあり、それに乗ることになっていたが、土日は全国的に天気が悪く、また雨の中の歩きは嫌だし、ましてや、過去に鳳凰三山は4回も行っている。直前になって断った。どうせ、高木はグループで行くことだし、飲み会を兼ねてもいるから、来週、健康診断を控えている自分には、避けたい山行でもあった(彼からは「土曜日は曇り・日曜日は快晴」のメールが届き、何ともはやの気分)。というわけで、せめて、社山の南東尾根だけでも済ませておこうと出かけた。帰路は半月山の方に向かい、途中の1655mP(「中禅寺山」と言うらしいが)から南西に延びる尾根を下るつもりでいる。余談だが、この南西尾根、大分前の雪の時期、半月峠から社山に向かう際、誤ってかなり下まで下ったことがある。ハンターらしき踏み跡が残っていた。林道にうまく下れれば問題はないと思うが(結局、これも「予定」になってしまった)。
(南尾根取り付きへの目印。本日、ここは関係なし)
(何だか懐かしいといった感じがする)
(沈下橋?沈下道?右の方に林道が延びているのが見えるが、そちらに向かっては×。石でふさがれてもいる)
先週もそうであったが、この時期、足尾の山を訪ねる人は散発的で、今日も3台しか車がなかった。ほぼ同時に3人組が出発したが、ヘルメットを持っていたから、沢か中倉山のスリリング歩きではあるまいか。先週出会ったオバチャン2人がまた散歩していた。毎日の日課だろうか。先方は、この胡散臭いオヤジの顔を覚えてはいらっしゃらないようで幸いだ。さらにご夫婦連れの散歩。ダンナさんがどこに行くのかと話しかけてきた。社山と答えたら、「バカ尾根歩き?」と問われた。否定はしたが、このバカ尾根、南尾根のことだろうが、言い得て妙である。分岐を直進し、久蔵沢林道に入る。この林道を通るのは久しぶりだ。「阿世潟―赤倉」の標識はまだ残っている。南尾根への入口を左手に送る。この南尾根、歩いたのは8年も前の紅葉の時期だ。社山から黒檜に向かい、大平山から下った。ゴム長で7時間歩きだった。悲しいことに、当時の体力、精神力、スタミナは今や持ち合わせていない。林道を歩くに連れ、左手の南尾根はグングンと高くなっていく。この尾根、最初がつらかったのだけは覚えている。舗装が途切れ、沈下橋(?と言っていいものやら)を渡る。水は少なく、靴底に触れる程度だ。やはり渇水の気配を感じてしまう。長平沢林道分岐に到着。ここの石垣に、赤だか白のペンキで「阿世潟→」と記されていたような気がするが、見あたらない。よく見ると、赤のペンキ破片が残っていた。ここに至るまで、ほぼ平地歩きなのに大量の汗をかいた。今日は暑い。足尾だからか。山の向こうの奥日光は涼しいだろうな。しばらくの我慢だ。
(林道分岐。ここを左に。右に行くと阿世潟峠)
(南東尾根にはここから取り付いた。奥に林道が続いているが、その体をなしていない)
(まずは灌木林が続いていた)
(南尾根=社山のバカ尾根)
(いい雰囲気になってきた)
(手前から、1490m、1564m、社山)
分岐を左・長平沢林道に入る。林道とはいえ、この林道は自然に帰りつつある状態で、すぐに草むらになり、カーブすると、先は崩れていた。このカーブが南東尾根の突端だ。取り付きを探す。崩れたところから登るのがベターと思われる。石で不安定な斜面をぜいぜいしながら登ると、おあつらえ向きに、シカ道が上に向かっていた。これを辿るとしよう。何とか、尾根に出た。この先ずっと、シカ道を頼りに歩くことになる。本体にも2頭出会う。テープやらヒモの類は、とうとう最後までなかった。確かに、ここを歩く人は物好きと言えるだろう。しばらくは灌木林が続く。木は痩せて、明るい中の歩きだ。たまに林が切れると、南側の展望が良い。西側は南尾根が壁状になっている。これでは、どちらを選ぶかとなれば、だれでも迷わず南尾根だろう。地味そうな南東尾根は冴えないか。東側も、半月山系から下る尾根が多岐に渡ってうねうねして見える。ここで、下り予定の尾根を俯瞰しておく。灌木林はさほど続かず、尾根もゆったりして、ヌタ場はそこかしこにあり、今のところ気持ちの良い、草つきの尾根歩きが続いている。傾斜はやや急ながらも、あえぐほどでもない。ワイヤーが放置されていた。以前は山林関係者も入っていたのだろう。
(そろそろおいでなすったか)
(いくら何でもこれは無理。右に逃げる)
やがてガレ場が出てきた。そろそろ撤退の準備かと思い、右手・東側の長手沢を見下ろしたが、ここを下れるのはRR氏ぐらいのものだろう。素人は元に戻るしか手はない。出がけに、車に積んだままのロープを持っていこうかと迷ったが、ロープを使うようなところがあったら、さっさとやめにするつもりでいたから、結局、何も持ってこなかった。取りあえず先に行ってみる。ガレ場は何か所か続くが、危険というほどのものではない。一か所だけ、これは無理といったヤセたザレ場があったが、ここは右手の谷側も急峻ではなく、難なく迂回できた。これもシカ道のお陰だ。この先は岩場から低いササ尾根になり、ガレ場は通過したようだ。RR氏ご指摘の下1/3は通過したものと思われる。東側の谷の向こうに、久蔵沢林道が見える。
(足尾方面を見ると、備前楯山がどっしりと。あそこもやり残しルートだらけだ)
(男体山も見えてくる)
(1490mピーク)
(奥に半月山。手前の1655mピークからの顕著な尾根が3本見える)
(1490mピークから1564m、社山)
(1490mを振り返る)
(紅葉の気配)
(ここからでも半月山は遠く見える)
(1655mに向かっているのだが、さっぱり進まない)
(1655mピーク)
(言うなれば、「詠み人知らず」といった感じのケルンだ)
傾斜が徐々に急になっていく。右奥に男体山が見えてきた。振り向くと、備前楯の周辺もはっきり見える。崩壊地の工事をしたらしい昭和58年と記されたの杭が残っている。この辺は特に気分がいいところだ。ちょっとした灌木の林を通過して1490mの小ピークに到着。シカ道はずっと続いている。しばらく休む。ようやく半分だ。先には1564mピークがまだ高く見え、その先にも小ピーク。その奥に社山が見える。まだまだ遠い。個人的には、ここまでならお薦めルートだろう。足尾の山的ないい気分を味わえる尾根だ。問題はここからだった。徐々に急になる。一旦下って登り返す。南尾根はすでに幅が広がり、平らになりつつある。なかなか1564mに着かない。歩程がさっぱりと進まない。そろそろ、ばててきたか。長く休んでは少しばかり登る。この繰り返し。だから、時間ばかりが経過する。ササの原をぜいぜいしながらようやく1564mに到着。さっきの1490mに比べたら70mばかり登ったくらいだが、随分と高く登った感じがする。ようやく、南尾根とほぼ同じ高さになった。ピークにはケルンが積まれていた。まさかシカか猿ではあるまい。ここを歩く物好きもたまにはいらっしゃるようだ。
(今度は1655mを振り返ってしまった)
(何となくエンドレスの世界になりつつあるような…。雨が降ったらたまらない)
大平山の方は黒い雲で覆われている。社山にも男体山にも雲がかかってきた。風が出てきた。今日の予報は昼から雨。予定よりも早く雨が降ってしまうかも。せめて、雨が降る前に社山に着いていたい。そそくさと出発。また下って登る。気持ちはあせっても、ちっとも進まぬ歩程。急登過ぎなのだ。上に行くに連れて傾斜は増している。ここにササに隠れた倒木でもあればさらに遅くなるものだが、不思議にもこの尾根に倒木はないし、ササもずっと低いままだ。せいぜい脛程度。そろそろ足が攣りだす気配。取り急ぎ特効薬を飲んでおく。尾根形が分かりづらくなってきた。遠くから見ていると、樹林帯の中を歩くかのようだが、木はまばら。社山は雲の中に消えた。とうとう、石に腰掛けて休む始末になってしまった。この尾根、たいそう疲れるよ。
(ようやく中禅寺湖が)
(視点の高さはあの南尾根を越えたか?)
(こちらのボコボコは南東尾根。やや右に尻尾が見える)
(一般道はすぐそこ。こうなったら這ってでも行くしかあるまい)
(お疲れ!でしたか。まぁ、かなり)
ようやく中禅寺湖が見えてきた。足尾エリアから中禅寺湖を望むのもまた乙な感じがする。当たり前の話だが、中倉山や備前楯からではまったく見えない。大日崎を眺めながら、ここからの日光の紅葉もさぞきれいだろうなと思った。もう一頑張りだ。一般道が右手に見え出す。目の前の急な斜面を避け、このまま阿世潟峠寄りにトラバースしようかと思ったが、そうはいかない。谷沿いのトラバースになってしまう。地道に登るしかあるまい。また晴れてきた。何とか一般道に到達。黄赤のマークが目に入った。あぁしんどかった。南尾根歩きでは、こんな苦痛の思いをしなかったと記憶している。前半部を除き、むしろ楽勝歩きだった。南東尾根の方がよっぽどバカ尾根じゃないのか。おかしなことに、登り切った直後なのにも関わらず、また歩きたいといった気持ちがもたげているのは何でだ?嗜虐趣味はないのだが。話は飛躍するが、まずは、紅葉の時期にななころびさんにでも歩いていただこうか。南尾根から登って南東尾根を下るのもおもしろいかもしれませんよ。ただ、お好みのヤブ尾根ではありませんので悪しからず。
(いつもの社山山頂)
(黒檜岳方面はご覧のとおり。雲が動かない。大平山に向かうには彷徨覚悟だろう)
(中禅寺湖の風景)
(ここにも秋の気配が)
社山にはだれもいなかった。山頂でぐったりとした。やはり奥日光は涼しい。気持ちの良い風が流れてくる。しばらく南東尾根を眺めていた。ここから見ると、あんな尾根程度と思うのだが。やはり、体力も減退期に入りつつあるのか。一服して阿世潟峠に下る。食欲はまったくわかない。今日の中禅寺湖は群青の色をたたえている。全山が見渡せる。そして、また陽が出てきた。今日は、一日持ちそうだ。それでいて、山頂から眺めた黒檜の方はガスで見えなかった。途中、4組のハイカーと出会う。半分以上の方が社山が初めてのようで、あとどれくらいかかるかと聞かれた。あと一月もすれば、紅葉の見頃を迎える。さぞ混むだろう。さて、この下りで足を痛めた。とうとう、足の痙攣を起こしてしまった。登りの急斜面歩きが効いたみたいだ。残念ながら薬は効かなかった。
(言わずもがなの阿世潟峠。風がスースーしていい気持ち。やはり「奥日光」)
(旧道はこんな様になっていた。かつてここで無くした鈴をさがそうとしたのだが、これでは無理)
(マークやテープがところどころにあることはある)
(林道もさらにこんな状態。どうしたの?といった印象だ)
(傍らにこんな石碑が。「砂防記念碑」「明治四十一年建設」の文字が刻されていた。この林道、歴史は古い)
阿世潟峠に到着。「中禅寺山」まで登るのはかなりつらい状態。天気は持ちそうだが、そうガツガツしても仕方があるまい。体力相応の歩きをしようということで、ここからは旧道を足尾に辿ることにした。つまり、日和ったわけだ。旧道を下った途端に風が消えた。蒸し風呂の中を歩いている感じになった。峠から先の足尾は奥日光ではないのである。だから涼しくはないのだ。体感温度も5℃プラスといったところ。この旧道、以前歩いた時に比べ、荒廃はさらに増していた。2か所ほど迷い、何とか、林道に着いた。この林道もまたすさまじい荒れようだ。崩壊でかなり歩きづらくなっていた。足にも響き、何回か痙攣の痛みが走った。せっかくだから、中禅寺山からの下り尾根を確認しておいた。地形図で読み取れない沢はなかった。おかしな彷徨歩きをしない限りは林道に下り立てそうだ。また、地図に記載のない林道が途中から東に分岐していたので、これにぶつかったら御の字だろう。
(林道が消えた。右奥に続いている。車が一台)
(今朝ほどの林道分岐。右に行けば、また山を登らないといけなくなる)
(路面は乾ききっている)
(ゲートに到着)
荒廃林道が忽然と消えて、目の前を沢が流れている。そういえば、こうだったな。思い出した。向こう岸に渡る。ぎりぎりのところに車が1台置かれている。カメラマンらしき方がイスに腰掛け、望遠レンズを覗いていた。二言、三言の会話をした。きわめて直情的な感想だが、自然回復・保護の政策のもと、一般車の乗り入れを禁止しておきながら、その自然相手のカメラマンが、林道のどん詰まりまで車で来て写真を撮るのは許可するというのもまたどうかと思う。すぐに、今朝ほどの林道分岐に到着。あとは、ちんたらと林道歩きが続く。陽が直接あたり、さらに暑くなった。無風。地面は吸収する水もなくからからに乾いている。沢からの水が勢いよく出ているところで顔を洗い、身体を拭いた。ゲートを越える。注意書きを見ると、自転車も通行不可になっている。しかし、自転車はかなり入り込んでいる。おかしな話だ。親水公園に到着。朝方の3人組の車はすでになかった。あっさりと帰ってきたのだろう。
今日の南東尾根、自分には、なかなか渋くていい尾根だった。ただ、如何せん、後半の急登りには参った。スタミナ配分が上手な方なら、おもしろい歩きを期待できるかもしれない。強いて言うなら、前半部のガレ場通過は慎重にといったところだろうか。明日は、足がかなり痛くなりそうだ。
どうなることか・・・と思っておりましたが、今後はこのスタイルなのでしょうか?たそがれさんが今回のルートで社山に登頂なさったときに私は三俣山に向かっておりました。しかも、同じ始発バスにななころびさんが居て、同じ宿堂坊山に登ったとは・・・一人で歩いたのに、忘れられない山行になりましたです。
いや、予告登山はするものではありませんわ。失敗したら記事にアップしなければいいだけのことですけど、肩身が狭くなりますよ。途中が帰って来たら、どういうことになっていたでしょうかね。まったく。
中禅寺山からのルートは予告ではありませんので悪しからず。いずれ機会があったらということでご理解ください。
しかしまた、みー猫さんとななころびさんのバス同乗は傑作でしたね。これも後で分かる話で、おかしなものです。昨年、ぶなじろうさんとバスが一緒だったとといったことがありましたけど、世の中、おもしろいものですね。
↑のコメント内の件ですが、撤退山行もレポして下さい、ほかの者の参考になりますので(笑)。 冗談抜きで失敗レポもいかしてると思います。ぶなじろうさんではありませんが「なんとか沢」敗走とか・・・
ところで昨年たそがれさんがわからなかったというネギト鞍部の石祠の脇の造形物ですが、今回の自分のレポの写真左下に写っているものかと思います。うまい具合に草が刈られていて見つけられています。確かに人工的なものだと思いました。
面白そうですので近いうちに行ってみたい尾根です。
てっきり今週は南アルプスと思っていたんですが。
実は土曜日にこの尾根ではなくて中倉山の井戸沢右岸尾根を登ってこようかと打診したところ、買い物とか色々準備があるのだからそんなとこ行ってる場合じゃぁないでしょ・・と却下されちゃいました。
RRさんが南東尾根と同等と云われていたので行ってみたかったのですが。
明日から予定通り剣にトライしてきます。
結局早月尾根は却下されまして、室堂からの立山セットになりました。
何でもたてばい、よこばいを通りたいそうな。
中善寺山南西尾根はたそがれさんの考えどうり何かの機会で行くのがいいと思います。粗林に笹の生えた何の変哲のない尾根です。何事も無く利根倉沢の林道に出られると思います。
尾根上のケルンですが、誰も行かない尾根にケルンを残すのが自分の趣味でして(たそがれさん二つ目ですね。)これからもマニアックな尾根でケルンを発見したら自分のだと思って下さい。
PS 昨日は沢入山南尾根という超マニアックな尾根を登ってきました。たそがれさんでもさすがに行かないでしょうから永遠に日の目を見る事は無いでしょう。
二者選択で迷われたと。そりゃ、残念なことでした。ななころびさんとなら、おもしろい山遊びをできただろうにと思うと、私としても残念です。いずれ、あの周辺でお会いする機会もあるでしょう。その節はよろしく。
今回の南東尾根が静かなブームを巻き起こすとは思ってもおりません。あれはあれで、地味な、好き者の尾根であり続けることを願ってもおります。ななころびさんには、文中でも記しましたように、ぜひ、覗きに行ってみてください。ハイトスさんも興味津々のようですから、今度はハイトスさんとばったりだったりして。
宿堂坊山の石祠脇の人工物、改めてななころびさんのお写真を拝見いたしました。あれですか。ありがとうございます。
ハイトスさんも、何かと気苦労が多いですね。こちらは、いつも一人ですから、好き勝手に歩いているだけに同情いたします。
早月尾根は高木と日帰りしましたけど、早月小屋を過ぎないと、まったくおもしろくもありませんよ。立山経由が正解です。写真、楽しみにしております。
井戸沢右岸ですか。実は私もなのです。おもしろそうですね。虎視眈々ですよ。
あのケルンはRRさんが築かれものでしたか。「物好き」なんて記して、大変失礼いたしました。何年前の作品か存じませんが、いまだに残っているということは、風がそんなに強くない尾根ということでしょうかね。
中禅寺山の南西尾根の情報ありがとうございます。実は、RRさんからの情報を期待しておりました。いつか、ついでの折にでも歩いてみますが、私が雪の上で見かけたトレースは案外、RRさんのものだったのかもしれませんね。
さて、沢入山の南尾根ですか。またまた新たな難題の課題が出てきましたね。じっくりし研究させていただきます。とはいっても、地形図を眺めるだけの話だけですが。
しかし、足尾の山も、私は上っ面しか歩いておりませんが、RRさんの微に入り細に入るお歩きには、ただ感服いたしております。
社山は日光随一の展望台ですか。そうかもしれませんね。それらしき山はいくつもあるのですが、大抵の山頂がヤブやら木立になっていて、展望台とするには無理がある山が多いですね。中禅寺湖が見えるからこそスポットなのでしょう。新参者さんも、ぜひ、玄関口から歩いてみてください。紅葉は素晴らしいと思います。
私、意外と大げさに記すこともありますから、キツイといっても、ベテランの方にはたかが知れています。きつそうに書かないと、何とも面白みのない作文になってもしまいますからね。でも、きつかったことは確かです。
鳳凰三山ですか。おそらく行かないでしょう。少々、飽きた感じでおります。その代わりといってはなんですが、たまには、少しばかりダイナミックな展望を期待できる山に久しぶりに行って参りましょうか。それも天気次第かな。天気が悪けりゃ、写真も悲しいものになりますからね。