◎2023年11月19日(日)
旧国民宿舎裏妙義から歩き出す(7:55)……先入観から「この先登山道なし」に入り込み、不安を感じて戻る(8:03~8:30)……正規の入口の標識を発見(8:31)……「三方境まであと一時間」と言われてがっくり(9:37)……三方境に到着し、この先の道がわからずに行ったり来たり(10:11~10:22)……女道の標識に出会って下る(10:33)……標識を見逃したらしく、沢沿いに歩き始める(11:17)……これ以上はギブアップで別ルート探し(11:45)……歩道にようやく出る(12:18)……消防車だらけの異様な雰囲気の国民宿舎に帰着(12:44)
予定では、楽しみは後でゆっくりという目論見で、南側のコースから北側のコースに出る。つまりは旧国民宿舎裏妙義から時計回り(女道コース経由)で三方境に出、北側のモミジ谷を見ながら下って周回するつもり。地図は持参したが、紅葉見物目的のハイカーはかなりいるだろうし、初心者コースのようでもある。<女道>の標識にしたがって歩けば、迷うことはあるまいと楽観していた。風化した岩峰群は若い頃に歩いたから、今は興味もない。そんな楽勝らしきコースを、今回は、その肝心な標識を見落としてかなりのドジな歩きをやらかしてしまった。特に後半の失敗。歩きたての単独ハイカーならつぶれていたかもしれない。久しぶりの自分らしい歩き方をしたかと思えば苦笑してしまう。
(国民宿舎前の駐車場は余地なし)
(見上げると岩峰。こここは妙義だなと改めるまでもなく思う)
8時前なのに、国民宿舎の前に駐車スペースはすでになく、ハイカーやらヘルメットの姿も多数準備をしている。以前、ハイトスさんが裏に回ったようなことを記されていたのを覚えていたので、脇の荒れた道を上がると、テニスコートがあり、そこにもまた駐車場があった。とめていた車は数台。知らない方は戻って路肩というパターンだろう。
(林道伝い。右に丁須の頭。このまま直進が三方境。すぐ先、左に三方境への道があったらしい。気づかず)
この周回コースだが、大方はモミジ谷を先行して反時計回りに北側に向けて歩き出す。そのせいか、時計回りに歩くハイカーの姿が見えない。たまたま、その時はそうだっただけのこと。車両進入禁止らしい林道を行くと、丁須の頭への道を別ける。三方境への標識は直進になっている。すでにこの時点で反時計回りコースに入りこんでいる。そんなことは思いもせずに歩き出していた。時計回りでは、国民宿舎から、まったく違う方向に歩かねばならなかったようだ。せいぜい、こっちでいいのだろう程度のものでしかない。
この時計回りと反時計回りだが、自分はこの先、ずっと時計回りのつもりで歩いていて、この感覚が三方境の先で他の方に教えられ、谷急山方面に一旦向かい、女道の標識を見かけるまで気づくことがなかった。「後でゆっくり」どころか、モミジ谷はすでに見終わっている始末だった。つまりは、上毛カルタの<モミジに映える妙義山>の紅葉は、この時点ではその程度のものだったらしい。この前後の日の様子がどうかとなると疑わしい。
(特別な意図はない。林道通しではあるまい。ここを行けば三方境に向かうと思って入る。「危険」の文字は、この時点ではまったく気にしなかった)
(こんな具合になったので引き返す。確かにこの先は岩峰にでもぶつかって危険かもしれない)
(30分のロス)
歩道のカーブの直進方向に「危険 この先 登山道なし」とあった。かまわずに未舗装のその道に入り込んだ。特別な意図はない。そうだと思ったからとしか言いようがない。やがて道は消え、谷間に入り込んだ。かすかな踏み跡はあって、テープもちらほら。倒木も結構ある。どうもコースを間違えたらしい。こんな苦戦して歩きそうなところを通って、モミジ谷に行く人はいまい。まして初心者向けコースのはずだ。GPSを見ても、地図にはコース線は出ていないから、どこにいるのかもわからない。その時、右側の尾根からこの谷間に下ろうとしているらしい、ヘルメット姿の3人組が見えた。「この先、道もなく、踏み跡もないし、荒れているようですよ」と声をかけた。3人組も、どこに行こうとしているのかは知らないが、自分と同じくコースを間違ったのではあるまいか。
仕切り直し。「危険 この先……」まで戻り、歩道に出て、国民宿舎の方に戻りかけた。すぐ右に向けて「三方境」の標識があった。薄暗い林の中ながらも、しっかりした道がある。標識を見落としていた。何をやっていたんだか。出だし早々に30分のロスをした。
(特別な風景ではない。どこの山も同じといった感じ)
(観音像。しばし見入った。自分には紅葉よりも優先だ)
杉林の中を登って行く。途中でさっきの3人組と行き会った。下るところだ。どうやって、この登山道に出て来たのか不思議。その後しばらくだれにも会うことはなかった。
面白みのないというか、どこにでもある風景の中の歩きが続く。短い登り下りの連続。周囲にすっきりした景色はない。カーブしたところに石仏が置かれていた。下りならともかく、登りでは気づくまい。観音様のようだ。宝暦とあるからにして、ここは古道なのだろうか。このあたりから、周囲がようやく明るくなった。スギが減り、広葉樹が出てきて葉を広げている。紅葉は始まったばかりらしく、青葉が多く、色づきも雑な感がある。これがしばらく続く。やはり、北側のモミジ谷に行かなきゃダメかななんて思ったりしている。
(そろそろ出てきた。緑が半分以上。まだ早いのは確実)
(完全に紅葉無しゾーン)
(いきなり出てきたが、ちょっとなぁといった感じ)
(光があたればきれいかも)
(すっかりくすんでいる)
紅葉の賑やかなところに出た。ハイカーも5人ほど休んでいる。谷間を覗くと賑やかげな紅葉。自分の感覚では、緑が多くて色づきがいまいちなのか、終わりかけなのか、これで終わりなのかよくわからない。実は、この辺りがモミジ谷だったようだ。これまで、紅葉もまばらだったから、写真は何枚か撮ったが、繰り返すように、時計歩きのつもりで、実は反時計回りをしている。ここがモミジ谷とは思いもしていない。休んでいるオッさんに聞いた。ここから三方境までどれくらいかかりますかと。「一時間はかかんじゃねぇの。早くて40分かいねぇ」のご返答にがっくり。いきなり道迷いなんかしているから、ここまでかなり長く感じている。
(次第に濃くなってきた。後で気づけば、この辺からモミジ谷ゾーンに入ったようだ)
(谷側は淡く、これからかなぁ)
(とはいっても、見上げればいい感じ)
(自分の好みの、まばらな紅葉に近づく)
(おっ、賑やかになってきた)
(ここは、しばし休憩中といったところか)
(復活。ここは赤が映えないところみたいだ)
(無理に赤を入れて)
(樹がなかったら映えない写真だったかも)
(お上品な赤)
(実はこの辺でモミジ谷エリアは終わっていたらしい)
だが、この先、飽きも退屈もしなかった。陽当たりがよくなって、ところどころに色づきがあった。決して、自分なりの満足ではないが、紅葉の中を歩いているという気分があり、まして風もなく暑いくらいの陽気もよかった。飽きないわけがない。
(三方境。向こうからやって来た。頭の地図ではここから右に向かうのだが、そちらは丁須の頭になっている。混乱する)
(アドバイスに従って谷急山方面に向かうものの、果たしてこれでいいのかと、また三方境に戻っている)
三方境に到着。40分どころかせいぜい30分だった。ここは陽が陰り、風が強くて寒い。長居するところではない。ここで迷った。頭の地図では、ここから右方向に行かないとモミジ谷には行けない。ここの標識では、右は「丁須の頭・赤岩」とあり、左は「谷急山」になっていて、直進方向の踏み跡に向けては何もない。登って来た方向には「国民宿舎」。どちらに行けばいいのか。丁須の頭に用事はない。ここで地図を広げたが、ここまでのルートの認識が違えば、左も右も違う。コンパスでも出して確認していたら、この時点で逆に歩いて来たことに気づいたろうが、そんな冷静さは欠いていた。
ここの三方境に何人か休憩していて、自分と同じルートでここまで来た親子らしいオッさんに聞くと、スマホのヤマップ軌跡を見せて、左の谷急山の方に行けばいいと言われ、そちらに向かって行った。半信半疑ながら、自分もそちらに向かうと、どうも違う感じがして、また三方境に戻る。改めて地図を広げる。わからん。どうしてもおかしい。混乱した。疑心暗鬼で谷急山方面に再び登る。案の定、そうだった。途中で、左に下る「女道」の標識を見つけ、ようやくこの時点で理解した。自分は時計回りに歩いているつもりでいて、実は反時計回りだった。モミジ谷も、さっきの紅葉が賑やかなところだったのか…。ここに至るまで気づかなかったとは何ともおめでたい。
(再び、谷急山方面に向かうと、左下向きに女道の標識を発見。ここでここまでのコースミスにようやく気づいた。山歩きを何十年やっても相変わらずの方向音痴は容赦なしだ)
(女道尾根を下る)
(紅葉の質はともかく、こちらが賑やかだ)
(まだ若くして…)
(ちんまりと。こんなのも珍しい)
(つい立ち止まる)
(むしろ、こちらがモミジ谷の気配)
(ここがメイン会場のようだ)
(緑も混じって好みです)
(岩峰が覗く。もうふっきれて、のんびり下っている)
(あの辺を歩いている人もいるんだろうな)
何ともはやだが、その先、がっかりしながら下った女道。安泰ルートのはずが、またルートミスを繰り返す。それもまた、おそらくは標識見逃しによるものだろう。久しぶりのかなりヤバいミスだった。
予想に反して、こちらから登って来るハイカーは多い。団体さんもいる。自分が歩くつもりでいたルートだ。尾根伝いの歩き。「女道」の標識もあるし間違いようもない。こちらがモミジ谷かと思うほどの紅葉が続く。とはいっても、目を見張るほどのものではないが、尾根下りでは気分も良い。樹間から左に岩峰も見える。
(黄色が強くなってきた)
(尾根から谷に)
(雑ではあるが彩りは良い)
(斜面に目を向ける)
(見上げる。色が大分薄くなってきている)
やがて、尾根は広くなり、団体さんが右の方を登って行く。どうもコースから外れた歩きをしているようだ。この辺になると、落葉で踏み跡も不明瞭になっている。下る方向として間違ってはいない。
前方を何人か歩いている。地形は尾根型が谷筋に吸収されていき、沢になった。水が流れている。踏み跡はさらに不明瞭になるが、テープの目印はあるし、標識もまだある。沢沿いながらも斜面をトラバースなんかしている。ちょっとした広場に何人か休憩している。普通に目印を追って行けば、まさか、この先でコースミスするはずはないのだが…。
(沢まで下ってしまった)
(標識もあって安心して歩いている。周辺にハイカーの姿はない)
(落葉で夕暮れ時には迷うかもしれない。あの沢は谷急沢だろう)
(沢伝い。また復活)
ロープ場があったのは覚えている。おそらくは、この先で沢を横切って、やがては歩道に出ることになっていたのだろうが、沢沿いに歩くものと思っていたせいか、そればかりに夢中になり、見落としていたのかもしれない。以降、標識も目印テープも見ることはなかった。
(どうもこの辺からコースを踏み外したようだ。この手前で沢を越えないといけなかったみたい。沢沿いに下っている。この先、目印も何もない)
(滝が出てくる。最初のうちは簡単に巻けたが、次第にきつくなる)
(結構、高いところをトラバースしている)
(流れ込みの滝もいくつかあった)
(こうなると、もうダメだ。尾根を目指す)
踏み跡も薄いものになった。小滝というよりも、5~8mほどの中滝がやたらと現れる。最初のうちは左岸、右岸ともに何とか下れたが、そのうちに10m(これはあくまでも見下ろしての感覚)ほどの滝が出てきて、ここは、左右ともに切れている。お手上げ。すでに踏み跡もなく、コースミスには気づいている。元に戻るにしてもしんどい。このまま切り抜けたい。尾根に登って大巻きで回避した。再び沢に戻る。沢に下る斜面はもろかった。
(尾根に逃げる途中で)
(ここから沢に戻ろうとしている)
(落ち着かない気分なのに紅葉眺め。あまり良くないと思いながらも、やたらと撮っている)
(作業道。ほっとした)
地図をみると、ここの沢に水線はないが、やがては中木川に合流するようだ。とにかく、中木川の右岸に渉れば、歩道は近い。だが、沢に戻っても、その下流を見ると、滝が続いている。もううんざりした。ギブアップ。この沢から離れよう。ズルズルする斜面を這い上がって林に入ると作業道が現れた。まずはほっとした。
(中木川? 向こうにガードレールが見えた。写真には撮れていない)
(ここから這い上がる)
(ようやく歩道に出られた)
また沢に出た。これが中木川だろうが、さっきまでの沢に比べたら水量は細い。右岸側にガードレールが見えた。歩道だろう。この際、歩道だろうが、林道だろうがどうでもいい。確実な道に出たかった。出るには斜面を上がる必要がある。手頃なところはなかった。作業道の延長らしき踏み跡は見えたが、足場が悪そうだ。丈夫そうな枝が続くところを枝に抱きついて這い上がる。歩道に出た。ため息。何とバカらしい歩きをしてしまったのか。この女道、後で『山と高原地図』を見ると、歩道(閉鎖林道)までは破線路になっているが、標識を見逃さずに歩いていれば実線路だろう。
(馬頭観音碑)
(お地蔵さん)
(歩道沿いで)
(正面に岩峰が見えてきた)
(同じく。以前は平気で歩いたが、年齢とともに高所恐怖症になった。見るだけで十分)
(真っ赤)
(本来の予定ではここからの歩きだったのか…)
(国民宿舎に無事に戻った)
(上の駐車地)
だれも歩いていない。馬頭観音碑と地蔵さん、そして慰霊碑があった。歩道沿いの紅葉はもう焼けた感じの黄色と赤。石に腰掛けて一服。
国民宿舎が見えてきた。何となく騒々しそう。消防車が三台見えた。近づくと救急車も一台。滑落事故でもあったのか。消防士が無線で「意識はありますか?」と確認しているのが聞こえた。
駐車地に到着。車はかなり少なくなっていた。帰宅の準備をしていると、ヘリ音が聞こえてきた。結局、ヘリ救助か。後で知ったことだ。丁須の頭の西100mで滑落して重傷。その後の25日(土)には、同じ丁須の頭の西50mで死亡事故。17日にNHKで妙義山の岩峰歩きを放映していた。これに触発されたのだろうか。
しかしなぁ、今日の歩きは何だったのだろう。スタートからコースを間違え、三方境ではわけがわからなくなり、ようやく下った女道も、途中から沢伝いになってしまった。こんなあやふやな歩きには縁がなくなったと思っていたが、根っからの方向音痴がそれを妨げたのか。これで紅葉満喫とでもなっていたら、少しは救われたのだろうが、「モミジに映える妙義山」には遠かった。
とはいえ、撮った写真を後で見直すと、ちょっと早かったかなと思いながらも、やはり上毛カルタ状況かなといった感じがしないでもない。現に、やたらと写真を出している。何が不満なの? と自問自答してしまいたくなる。
(今回の恥ずかしながらの軌跡)
この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
旧国民宿舎裏妙義から歩き出す(7:55)……先入観から「この先登山道なし」に入り込み、不安を感じて戻る(8:03~8:30)……正規の入口の標識を発見(8:31)……「三方境まであと一時間」と言われてがっくり(9:37)……三方境に到着し、この先の道がわからずに行ったり来たり(10:11~10:22)……女道の標識に出会って下る(10:33)……標識を見逃したらしく、沢沿いに歩き始める(11:17)……これ以上はギブアップで別ルート探し(11:45)……歩道にようやく出る(12:18)……消防車だらけの異様な雰囲気の国民宿舎に帰着(12:44)
予定では、楽しみは後でゆっくりという目論見で、南側のコースから北側のコースに出る。つまりは旧国民宿舎裏妙義から時計回り(女道コース経由)で三方境に出、北側のモミジ谷を見ながら下って周回するつもり。地図は持参したが、紅葉見物目的のハイカーはかなりいるだろうし、初心者コースのようでもある。<女道>の標識にしたがって歩けば、迷うことはあるまいと楽観していた。風化した岩峰群は若い頃に歩いたから、今は興味もない。そんな楽勝らしきコースを、今回は、その肝心な標識を見落としてかなりのドジな歩きをやらかしてしまった。特に後半の失敗。歩きたての単独ハイカーならつぶれていたかもしれない。久しぶりの自分らしい歩き方をしたかと思えば苦笑してしまう。
(国民宿舎前の駐車場は余地なし)
(見上げると岩峰。こここは妙義だなと改めるまでもなく思う)
8時前なのに、国民宿舎の前に駐車スペースはすでになく、ハイカーやらヘルメットの姿も多数準備をしている。以前、ハイトスさんが裏に回ったようなことを記されていたのを覚えていたので、脇の荒れた道を上がると、テニスコートがあり、そこにもまた駐車場があった。とめていた車は数台。知らない方は戻って路肩というパターンだろう。
(林道伝い。右に丁須の頭。このまま直進が三方境。すぐ先、左に三方境への道があったらしい。気づかず)
この周回コースだが、大方はモミジ谷を先行して反時計回りに北側に向けて歩き出す。そのせいか、時計回りに歩くハイカーの姿が見えない。たまたま、その時はそうだっただけのこと。車両進入禁止らしい林道を行くと、丁須の頭への道を別ける。三方境への標識は直進になっている。すでにこの時点で反時計回りコースに入りこんでいる。そんなことは思いもせずに歩き出していた。時計回りでは、国民宿舎から、まったく違う方向に歩かねばならなかったようだ。せいぜい、こっちでいいのだろう程度のものでしかない。
この時計回りと反時計回りだが、自分はこの先、ずっと時計回りのつもりで歩いていて、この感覚が三方境の先で他の方に教えられ、谷急山方面に一旦向かい、女道の標識を見かけるまで気づくことがなかった。「後でゆっくり」どころか、モミジ谷はすでに見終わっている始末だった。つまりは、上毛カルタの<モミジに映える妙義山>の紅葉は、この時点ではその程度のものだったらしい。この前後の日の様子がどうかとなると疑わしい。
(特別な意図はない。林道通しではあるまい。ここを行けば三方境に向かうと思って入る。「危険」の文字は、この時点ではまったく気にしなかった)
(こんな具合になったので引き返す。確かにこの先は岩峰にでもぶつかって危険かもしれない)
(30分のロス)
歩道のカーブの直進方向に「危険 この先 登山道なし」とあった。かまわずに未舗装のその道に入り込んだ。特別な意図はない。そうだと思ったからとしか言いようがない。やがて道は消え、谷間に入り込んだ。かすかな踏み跡はあって、テープもちらほら。倒木も結構ある。どうもコースを間違えたらしい。こんな苦戦して歩きそうなところを通って、モミジ谷に行く人はいまい。まして初心者向けコースのはずだ。GPSを見ても、地図にはコース線は出ていないから、どこにいるのかもわからない。その時、右側の尾根からこの谷間に下ろうとしているらしい、ヘルメット姿の3人組が見えた。「この先、道もなく、踏み跡もないし、荒れているようですよ」と声をかけた。3人組も、どこに行こうとしているのかは知らないが、自分と同じくコースを間違ったのではあるまいか。
仕切り直し。「危険 この先……」まで戻り、歩道に出て、国民宿舎の方に戻りかけた。すぐ右に向けて「三方境」の標識があった。薄暗い林の中ながらも、しっかりした道がある。標識を見落としていた。何をやっていたんだか。出だし早々に30分のロスをした。
(特別な風景ではない。どこの山も同じといった感じ)
(観音像。しばし見入った。自分には紅葉よりも優先だ)
杉林の中を登って行く。途中でさっきの3人組と行き会った。下るところだ。どうやって、この登山道に出て来たのか不思議。その後しばらくだれにも会うことはなかった。
面白みのないというか、どこにでもある風景の中の歩きが続く。短い登り下りの連続。周囲にすっきりした景色はない。カーブしたところに石仏が置かれていた。下りならともかく、登りでは気づくまい。観音様のようだ。宝暦とあるからにして、ここは古道なのだろうか。このあたりから、周囲がようやく明るくなった。スギが減り、広葉樹が出てきて葉を広げている。紅葉は始まったばかりらしく、青葉が多く、色づきも雑な感がある。これがしばらく続く。やはり、北側のモミジ谷に行かなきゃダメかななんて思ったりしている。
(そろそろ出てきた。緑が半分以上。まだ早いのは確実)
(完全に紅葉無しゾーン)
(いきなり出てきたが、ちょっとなぁといった感じ)
(光があたればきれいかも)
(すっかりくすんでいる)
紅葉の賑やかなところに出た。ハイカーも5人ほど休んでいる。谷間を覗くと賑やかげな紅葉。自分の感覚では、緑が多くて色づきがいまいちなのか、終わりかけなのか、これで終わりなのかよくわからない。実は、この辺りがモミジ谷だったようだ。これまで、紅葉もまばらだったから、写真は何枚か撮ったが、繰り返すように、時計歩きのつもりで、実は反時計回りをしている。ここがモミジ谷とは思いもしていない。休んでいるオッさんに聞いた。ここから三方境までどれくらいかかりますかと。「一時間はかかんじゃねぇの。早くて40分かいねぇ」のご返答にがっくり。いきなり道迷いなんかしているから、ここまでかなり長く感じている。
(次第に濃くなってきた。後で気づけば、この辺からモミジ谷ゾーンに入ったようだ)
(谷側は淡く、これからかなぁ)
(とはいっても、見上げればいい感じ)
(自分の好みの、まばらな紅葉に近づく)
(おっ、賑やかになってきた)
(ここは、しばし休憩中といったところか)
(復活。ここは赤が映えないところみたいだ)
(無理に赤を入れて)
(樹がなかったら映えない写真だったかも)
(お上品な赤)
(実はこの辺でモミジ谷エリアは終わっていたらしい)
だが、この先、飽きも退屈もしなかった。陽当たりがよくなって、ところどころに色づきがあった。決して、自分なりの満足ではないが、紅葉の中を歩いているという気分があり、まして風もなく暑いくらいの陽気もよかった。飽きないわけがない。
(三方境。向こうからやって来た。頭の地図ではここから右に向かうのだが、そちらは丁須の頭になっている。混乱する)
(アドバイスに従って谷急山方面に向かうものの、果たしてこれでいいのかと、また三方境に戻っている)
三方境に到着。40分どころかせいぜい30分だった。ここは陽が陰り、風が強くて寒い。長居するところではない。ここで迷った。頭の地図では、ここから右方向に行かないとモミジ谷には行けない。ここの標識では、右は「丁須の頭・赤岩」とあり、左は「谷急山」になっていて、直進方向の踏み跡に向けては何もない。登って来た方向には「国民宿舎」。どちらに行けばいいのか。丁須の頭に用事はない。ここで地図を広げたが、ここまでのルートの認識が違えば、左も右も違う。コンパスでも出して確認していたら、この時点で逆に歩いて来たことに気づいたろうが、そんな冷静さは欠いていた。
ここの三方境に何人か休憩していて、自分と同じルートでここまで来た親子らしいオッさんに聞くと、スマホのヤマップ軌跡を見せて、左の谷急山の方に行けばいいと言われ、そちらに向かって行った。半信半疑ながら、自分もそちらに向かうと、どうも違う感じがして、また三方境に戻る。改めて地図を広げる。わからん。どうしてもおかしい。混乱した。疑心暗鬼で谷急山方面に再び登る。案の定、そうだった。途中で、左に下る「女道」の標識を見つけ、ようやくこの時点で理解した。自分は時計回りに歩いているつもりでいて、実は反時計回りだった。モミジ谷も、さっきの紅葉が賑やかなところだったのか…。ここに至るまで気づかなかったとは何ともおめでたい。
(再び、谷急山方面に向かうと、左下向きに女道の標識を発見。ここでここまでのコースミスにようやく気づいた。山歩きを何十年やっても相変わらずの方向音痴は容赦なしだ)
(女道尾根を下る)
(紅葉の質はともかく、こちらが賑やかだ)
(まだ若くして…)
(ちんまりと。こんなのも珍しい)
(つい立ち止まる)
(むしろ、こちらがモミジ谷の気配)
(ここがメイン会場のようだ)
(緑も混じって好みです)
(岩峰が覗く。もうふっきれて、のんびり下っている)
(あの辺を歩いている人もいるんだろうな)
何ともはやだが、その先、がっかりしながら下った女道。安泰ルートのはずが、またルートミスを繰り返す。それもまた、おそらくは標識見逃しによるものだろう。久しぶりのかなりヤバいミスだった。
予想に反して、こちらから登って来るハイカーは多い。団体さんもいる。自分が歩くつもりでいたルートだ。尾根伝いの歩き。「女道」の標識もあるし間違いようもない。こちらがモミジ谷かと思うほどの紅葉が続く。とはいっても、目を見張るほどのものではないが、尾根下りでは気分も良い。樹間から左に岩峰も見える。
(黄色が強くなってきた)
(尾根から谷に)
(雑ではあるが彩りは良い)
(斜面に目を向ける)
(見上げる。色が大分薄くなってきている)
やがて、尾根は広くなり、団体さんが右の方を登って行く。どうもコースから外れた歩きをしているようだ。この辺になると、落葉で踏み跡も不明瞭になっている。下る方向として間違ってはいない。
前方を何人か歩いている。地形は尾根型が谷筋に吸収されていき、沢になった。水が流れている。踏み跡はさらに不明瞭になるが、テープの目印はあるし、標識もまだある。沢沿いながらも斜面をトラバースなんかしている。ちょっとした広場に何人か休憩している。普通に目印を追って行けば、まさか、この先でコースミスするはずはないのだが…。
(沢まで下ってしまった)
(標識もあって安心して歩いている。周辺にハイカーの姿はない)
(落葉で夕暮れ時には迷うかもしれない。あの沢は谷急沢だろう)
(沢伝い。また復活)
ロープ場があったのは覚えている。おそらくは、この先で沢を横切って、やがては歩道に出ることになっていたのだろうが、沢沿いに歩くものと思っていたせいか、そればかりに夢中になり、見落としていたのかもしれない。以降、標識も目印テープも見ることはなかった。
(どうもこの辺からコースを踏み外したようだ。この手前で沢を越えないといけなかったみたい。沢沿いに下っている。この先、目印も何もない)
(滝が出てくる。最初のうちは簡単に巻けたが、次第にきつくなる)
(結構、高いところをトラバースしている)
(流れ込みの滝もいくつかあった)
(こうなると、もうダメだ。尾根を目指す)
踏み跡も薄いものになった。小滝というよりも、5~8mほどの中滝がやたらと現れる。最初のうちは左岸、右岸ともに何とか下れたが、そのうちに10m(これはあくまでも見下ろしての感覚)ほどの滝が出てきて、ここは、左右ともに切れている。お手上げ。すでに踏み跡もなく、コースミスには気づいている。元に戻るにしてもしんどい。このまま切り抜けたい。尾根に登って大巻きで回避した。再び沢に戻る。沢に下る斜面はもろかった。
(尾根に逃げる途中で)
(ここから沢に戻ろうとしている)
(落ち着かない気分なのに紅葉眺め。あまり良くないと思いながらも、やたらと撮っている)
(作業道。ほっとした)
地図をみると、ここの沢に水線はないが、やがては中木川に合流するようだ。とにかく、中木川の右岸に渉れば、歩道は近い。だが、沢に戻っても、その下流を見ると、滝が続いている。もううんざりした。ギブアップ。この沢から離れよう。ズルズルする斜面を這い上がって林に入ると作業道が現れた。まずはほっとした。
(中木川? 向こうにガードレールが見えた。写真には撮れていない)
(ここから這い上がる)
(ようやく歩道に出られた)
また沢に出た。これが中木川だろうが、さっきまでの沢に比べたら水量は細い。右岸側にガードレールが見えた。歩道だろう。この際、歩道だろうが、林道だろうがどうでもいい。確実な道に出たかった。出るには斜面を上がる必要がある。手頃なところはなかった。作業道の延長らしき踏み跡は見えたが、足場が悪そうだ。丈夫そうな枝が続くところを枝に抱きついて這い上がる。歩道に出た。ため息。何とバカらしい歩きをしてしまったのか。この女道、後で『山と高原地図』を見ると、歩道(閉鎖林道)までは破線路になっているが、標識を見逃さずに歩いていれば実線路だろう。
(馬頭観音碑)
(お地蔵さん)
(歩道沿いで)
(正面に岩峰が見えてきた)
(同じく。以前は平気で歩いたが、年齢とともに高所恐怖症になった。見るだけで十分)
(真っ赤)
(本来の予定ではここからの歩きだったのか…)
(国民宿舎に無事に戻った)
(上の駐車地)
だれも歩いていない。馬頭観音碑と地蔵さん、そして慰霊碑があった。歩道沿いの紅葉はもう焼けた感じの黄色と赤。石に腰掛けて一服。
国民宿舎が見えてきた。何となく騒々しそう。消防車が三台見えた。近づくと救急車も一台。滑落事故でもあったのか。消防士が無線で「意識はありますか?」と確認しているのが聞こえた。
駐車地に到着。車はかなり少なくなっていた。帰宅の準備をしていると、ヘリ音が聞こえてきた。結局、ヘリ救助か。後で知ったことだ。丁須の頭の西100mで滑落して重傷。その後の25日(土)には、同じ丁須の頭の西50mで死亡事故。17日にNHKで妙義山の岩峰歩きを放映していた。これに触発されたのだろうか。
しかしなぁ、今日の歩きは何だったのだろう。スタートからコースを間違え、三方境ではわけがわからなくなり、ようやく下った女道も、途中から沢伝いになってしまった。こんなあやふやな歩きには縁がなくなったと思っていたが、根っからの方向音痴がそれを妨げたのか。これで紅葉満喫とでもなっていたら、少しは救われたのだろうが、「モミジに映える妙義山」には遠かった。
とはいえ、撮った写真を後で見直すと、ちょっと早かったかなと思いながらも、やはり上毛カルタ状況かなといった感じがしないでもない。現に、やたらと写真を出している。何が不満なの? と自問自答してしまいたくなる。
(今回の恥ずかしながらの軌跡)
この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
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