056:とおせんぼ（富田林薫）

プライドがとおせんぼする街角に迷い込んでる　あとひとことが

055:頬（富田林薫）

泣きじゃくるミンミンゼミが昨夜から頬にとまって飛び立たなくて

054:虫（富田林薫）

真夜中が冷たくあしらうコンビニにあつまる羽虫は傷ついている

053:ブログ（富田林薫）

真っ白なブログページにこんにちは初めましてと書きしるす午後

052:舞（富田林薫）

ハミガキのチューブを気合いで絞りきり舞散る桜のように旅立つ

051:しずく（富田林薫）

明け方の樹木のしずくをあつめてはかたくとざした唇に垂らす

050:萌（富田林薫）

夕闇に萌えてバラバラ秋葉原　夢のつづきをメイド喫茶で

049:戦争（富田林薫）

戦争でなげきかなしむ人たちを鶴亀もようのふろしきでつつむ

048:アイドル（富田林薫）

駅前にアイドル写真が舞う街できみの姿を探しています

047:辞書（富田林薫）

悲しみの文字がない辞書だきしめて時がたつのをまっていました

046:凍（富田林薫）

シベリアの凍土のなかのマンモスに目覚まし時計は必要じゃない

045:コピー（富田林薫）

何枚もコピーをとられてしまったようで僕のココロの本物はどこ

044:飛（富田林薫）

飛ぶことができる駝鳥の背にのってオハヨーの朝はアフリカの僕

043:曲線（富田林薫）

キャンバスに曲線を描く指先を夜が明けるまでみつめていたい

042:豆（富田林薫）

夕焼けに豆腐のカドが鋭角で今なら死ねると思わせぶりで