071:老人（富田林薫）

ゆっくりと過去の記憶をひもといて子供にもどる老人の目は

070:章（富田林薫）

ばらばらで意味をなさない文章をパズルのように組み立てている

069:カフェ（富田林薫）

早朝に滝に打たれて身を清め純な気持ちでメイドカフェへと

068:報（富田林薫）

はじめての歓喜の時をまちわびてほほ朱に染める火災報知器

067:事務（富田林薫）

街角にもうつかわない事務机ならべてつくるナスカの地上絵

066:ふたり（富田林薫）

ふたりしてファーストフードに隠された笑顔の秘密をさぐりにゆこう

065:鳴（富田林薫）

単調に鳴りひびく鐘　感情を静めるように聞きいっている

064:百合（富田林薫）

白百合が咲きまくる野を駆け抜けたあの子の夢は東京ミュウミュウ

063:オペラ（富田林薫）

繊細なオペラグラスの直前を拍手の鳩がとびたってゆく

062:竹（富田林薫）

おとなりの竹田さんちのタケノコがあたまに生えてとても困った

061:注射（富田林薫）

「わるい子ね、お注射しちゃうぞ」てっ言われたら元気も出るかな興味津々

060:韓（富田林薫）

韓国でチョナンカン似のハコフグがとても人気になってるらしい

059:くちびる（富田林薫）

早朝に滝に打たれて手にいれた沢尻エリカの赤いくちびる

058:抵抗（富田林薫）

長身で赤い帽子の衛兵に撃ちおとされる抵抗の群れ

057:鏡（富田林薫）

手にしたら鏡のようなきらめきを放つ言葉を綴ってゆきたい