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ドラマ『地面師たち』

2024年08月21日 23時00分00秒 | 映画関係

[ドラマ紹介]

タイトルバックで、次のような説明がなされる。
「地面師とは、他人の土地の所有者になりすまして、
売却を持ちかけ、偽造書類を使って多額の金をだまし取る
不動産詐欺を行う集団のことである。
地面師詐欺は、リーダー、交渉役、情報屋、
法律担当、偽造書類作成者、なりすましのキャスティングなど
複数人で行われ、
緻密かつ高度な犯罪テクニックが必要とされる」

この説明が全てで、
本作は、不動産詐欺を行う
「地面師」の犯罪を描く。

2017年、オリンピック前で再び土地価格が高騰し始めた東京。
伝説の大物地面師・ハリソン山中を中心として
地面師たちが、
ある不動産会社に詐欺を仕掛けていた。
第1話でその手口を紹介。
広大な土地で、所有者が不在の物件が
売りに出されているという情報を流し、
食いついてきたターゲットに対して、
印鑑証明書、登記事項証明書、固定資産評価証明書、
固定資産税課税証明書、住民票、免許証、保険証、
実印、物件の鍵等を偽造し、
売買交渉現場に所有者のニセモノを送り込み、
巨額な売買代金をせしめると、逃亡。
法務局で印鑑証明の不一致で登記を却下されることにより、
詐欺が発覚する。
偽物の所有者には氏名誕生日、干支などを仕込み、
答えられない質問には
耳に仕込んだミニスピーカーで回答を教える、
等々の手口が紹介される。

ハリソンは次のターゲットとして、100億円ほどの物件を立ち上げる。
高輪に広い駐車場と施設を持つ寺院
所有者は40代の尼さん。
標的となったのは大手ディロッパーの石洋ハウス。
大井町のビル建設が頓挫し、
代替地を求めて、開発事業部部長の青柳隆史が前のめりになっていた。
会社には会長派と社長派の確執もあった。
問題は、購入者とニセの所有者との面会と
施設の内覧時に
尼さんを不在にさせるか。
そして、ニセ所有者の教育。
計画は順調に進んでいるように見えたが、
思わぬ落とし穴が・・・・

これに捜査2課の刑事の捜査が加わる。
かつてハリソンを逮捕寸前まで追い込みながら、
逮捕することができなかった定年間近の刑事・辰は、
新人刑事と共に独自の捜査を開始していた。
刑事は自殺を装って始末されるが、
相棒の刑事は自殺を信じられずに捜査を続ける・・

地面師集団の構成は、
ハリソン山中がリーダーで、
真面目なサラリーマン風の風貌で交渉役をする辻本拓海(つじもとたくみ)、
元司法書士で複数の不動産関係の資格を持つ法律屋の後藤義雄、
地主に成り済ます人物のキャスティングを担当する手配師・稲葉麗子、
適切な土地や物件を仕入れる情報屋の竹下。
身分証や公的証書の偽造を手掛ける長井。
そして、地主の尼になりすますキャスト。

ハリソンは元暴力団幹部で、人を殺すことをためらわない冷酷無比な性格。
辻本拓海は高級デリヘルの送迎ドライバーをしていた時、
ハリソン山中と出会い、


その肝の座ったのを見込まれれて、
地面師にリクルートされ、
右腕として働いている。
かつて父が経営している不動産会社が地面師詐欺に遭い、
父が放火による一家心中を図り、
母親と妻と幼い息子を亡くした過去があり、
そのだました地面師と出会うために地面師になった側面がある。

地面師側、
騙される石洋ハウスの社内事情、
刑事・辰の捜査
を交互に描写し、飽きさせない。
特に、本人確認の場面がスリリング
映画「ダイ・ハード」のあるシーンを使った下りなど、うならせる。

1話終わるたびに次回を観たくなる
良質な連続ドラマだ。
聞けば、Netflixは一話に1億円の製作費を投入したという。
テレビ局のドラマとは桁が違う。
良い作品ができるはずだ。

原作、脚本、演出もさることながら、
キャスティングの妙が成功の大きな要素で、


ハリソンを演ずる豊川悦史、                           拓海を演ずる綾野剛ははまり役。
後藤のピェール瀧、麗子の小池栄子
辰のリリー・フランキー
この人でなければ、という演技。
青柳の山本耕次、竹下の下っ端役のお笑い芸人のアントニーまで
よくぞキャンスティングしたという見事な出來。

2017年に実際に起きた被害額約55億円に上る
「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルとしている。
事件の舞台となったのは五反田駅から徒歩3分の立地にある
旅館「海喜館」で、
まんまと所有者のなりすましに引っ掛かった。
実は所有者は死亡しており、
相続した2人の男性(所有者の実弟とされる)が所有権を移転、登記していた。
従って、登記所が積水ハウスの売買予約に基づく仮登記を認めず、
この時点で、積水ハウスは詐欺にあったことを認めた。
後に旭化成グループが正式な所有者から
土地を取得しており、
跡地に高層マンションを建設した。
詐欺が成功した要因として、
不動産会社が地面師対策として通常実施する
「知人による確認」を実施しなかったことがあげられる。
取引をしようとする「所有者」の写真を近隣住民や知人に見せる方法で行われる
本人確認手法の一種で、
真の所有者は当旅館で生まれ育っているため、
近隣で知らない者はいないほどであったのにもかかわらず、これを怠った。
積水ハウスのマンション事業部はこの案件を成立させたい一心で、
稟議承認の前に社長に現地を見せ、
社長が飛び越し承認し、
社内では「社長案件」と呼ばれるようになり、
稟議書承認の際、異論を挟むことができなかった。
当時の不動産部長は、「この取引はおかしい」と言い続けたが、
聞かれることはなく、
真の所有者から「売買契約はしていない、仮登記は無効である」
と記載された内容証明郵便が届けられたが、
積水ハウスはこれらを妨害行為と思いこんだ。
(このあたり、ドラマにうまく取り入れられている。) 
偽の所有者役は、自分の誕生日を忘れる、干支を間違えるなどしていた。
現住所の記載を求めた際、番地が書き間違えられていたのに警戒しなかった。
支払いには銀行振込ではなく、
換金が容易で引き出しなどの記録が残らない預金小切手が決済方法として利用された。
事件発覚後、
詐欺グループ10人は逮捕され、
有罪判決を受けた。

2019年に、新庄耕が
本事件を下敷きにした小説を出版。
今年7月、
続編「地面師たち ファイナル・ベッツ」が集英社から刊行。
海外に逃亡したハリソン山中が、
シンガポールで新しい地面師詐欺チームを結成し、
北海道・釧路での200億円不動産詐欺に挑む話だという。

 



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