空飛ぶ自由人・2

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小説『オオルリ流星群』

2022年07月09日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

神奈川県秦野市が舞台。
祖父の代からの薬局を継いでいる種村久志は、
近所にチェーンのドラッグストアが出来たことで
業績不振に悩んでいる。
45歳という年齢もあり、
人生の曲がり角を迎えていた。

その状況を、高校時代からの友人、勢田修が解説してみせる。
それは「ミドルエイジ・クライシス」だと。

※「“中年の危機”。
仕事、家庭と忙しくやってきて、
気づけば四十代。
それまでの生き方を振り返ったり、
人生の後半戦について考えたりするだろ?
そしたら急に、
『俺の人生、このままでいいのかな』
と不安になったり、うつっぽくなったりするやつが出てくるわけよ。
ちょうど、悩みの多いお年頃なんだな。
思春期ならぬ、思秋期ともいうらしいぞ」

というわけで、思秋期を迎えた
高校時代の仲間5人の交わりを描く。
一人は薬局の行く末に不安を抱く久志。
一人は勤めていた会社をやめて、司法試験の勉強をしている修。
一人は地元の中学校に教師として勤めている伊東千佳。
一人は仕事に行き詰まって会社をやめ、
引きこもり生活をしている梅野和也。
そしてもう一人は、天文学者を目指している
山際彗子(けいこ)=通称スイ子。

この5人は、高校3年の時の文化祭に、
1万個の空き缶で作ったタペストリーを一緒に作った仲間だ。
羽ばたくオオルリをデザインしたタペストリーの制作は、
強い思い出と共に、仲間意識でつながっていた。

オオルリの写真は、↓。


実は、タペストリー作りには、もう一人関わっており、
言い出しっぺの槙恵介が途中で離脱した事情は、
ついに分からず仕舞いだった。
そして、東京に出た恵介が
泥酔状態で電車に轢かれて死んだわけも謎だった。

そのメンバーに一つの衝撃が走る。
彗子が町に戻って来たのだ。
国立天文台の人員整理にあい、失職。
故郷に帰って来たのは、
ここで天文台を建てて、
太陽系の端にある微惑星の観測をするのだという。

こうして、昔空き缶のタペストリーを作った仲間が再度集結し、
彗子の夢である天文台作りに励む姿を描く。
その途中、恵介の死の真相が分かり、
また、引きこもりの和也の再起も図られる・・・

28年前の輝かしい時代を取り戻すために、
45のおじさん、おばさんが夢を追い求める。
というシチュエーションは、
やり尽くされた感はあるが、
まあ、一つのジャンルだと思えば、納得する。

天文台を建設する山をどうやって借りるか、
費用のかかるドーム建設をどうやってクリアするか、
等々難題を解決するのは約束どおり。
善意と善意の連鎖がそれを可能にする。
そうした中で、久志の薬局も方向をみつけていく。

ありきたりの食材で、
ありきたりの料理法を駆使、
と意地悪く思うなかれ。
こういう話は、その中に埋没した方が得というものだ。
「28年も経って、変わらない人間なんていないよ」
と言いつつ、
「二度目の青春」を取り戻そうとする物語。

筆者の伊与原新氏は、
東大大学院で地球惑星科学を専攻されていた人だという。

 



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