空飛ぶ自由人・2

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小説『互換性の王子』

2024年06月13日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

準大手飲料メーカー「シガビオ」の御曹司で、
近く取締役就任、更には社長後継者と目されていた、
志賀成功(なりとし) が
何者かによって別荘の地下室に監禁されてしまう。

という衝撃的内容で始まる、
「犯人に告ぐ」の雫井脩介による企業小説。

地下室には、十分な食糧が備蓄されており、
テレビも監視カメラもあり、
冷蔵庫、電子レンジも設置されており、
長期滞在が可能、
監禁が計画的になされたことが伺える。
スマホもなく、外部との連絡は一切取れず、
監禁は半年の長きにわたった。

ようやく鍵が開けられ、
会社に戻ってみると、
社内の状況は一変していた。
監禁当初、父である社長の志賀英雄のもとに
成功からの辞表が提出されており、
「職責の重圧に耐えかねて逃げ出した世間知らずの御曹司」
という評価が定着していた。
その上、成功の事業部長のポストには、
突如現れた異母兄・実行(さねゆき) が就任していた。

志賀英雄は競合メーカー「東京タクト」の社長の娘と結婚して
実行を授かるが、離婚し会社も辞め、
自分の会社「シガビオ」を設立。
再婚し次男・成功を授かる。
実行は東京タクトから追い出され、
「シガビオ」の研究所にいたが、
成功が行方不明になったことから、
「第2の御曹司」として本社に呼ばれ、
成功の後に就任して、辣腕をふるっていた。

企業の信用のため、成功の監禁事件は警察沙汰には出来ず、
成功は一介の営業部員として再出発。
製品の取引先獲得戦線の外回りに放り込まれる。
やがて、新商品開発のチームに加わり、
実行と共にプロジェクトを兄弟で担うが・・・

飲料業界の市場競争の熾烈さがよく分かる。
ライバル会社のラクトと新製品の発売時期が重なってしまい、
工場の不具合で製品が間に合わなくなり、
発売時期を延期したり、
イメージキャラクターの女優をタクトに奪われたり、
タクトに情報を流しているスパイがいる、
というサスペンスも盛り込まれる。
また、創業社長の2代目育成の悩みも伺える。
とにかく読んでて面白い

結末は穏当な落としどころで、
そういう人物配材であったかと納得。
それにしても、英雄社長の深慮遠謀は過剰ではないか。

恋のさや当てもあり、
女性陣も華やかなので、
WOWOWあたりでドラマ化されるのではないか。

ただ、主人公の名前が「成功」と「実行」と
普通名詞と同じなので、まぎらわしい。
タイトルにある「互換性」とは、
他のもの、特に他の機械部品と交換できることで、
二人の兄弟のどちらかを後継者に交換出来ることを示すのだろうが、
もっと良い題名はなかったものか

 



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