[映画紹介]
腎臓病を患い、週3回透析を受ける。
そんな人生にうんざりしている
旅行会社勤務のリン・ミン。
ある日、リン・ミンは、
「亡くなったらドナーになってくれる人と結婚したい」
という趣旨の動画を、アップロードしてしまう。
すぐに削除したものの、
その僅かな隙間で見たという青年がコンタクトしてきた。
会って説明しようと考えたミンは、
指定された料理店に行くが、
そこに現れたのは挙動不審な男、
風変りで超天然なリュ・トという青年だった。
ミンは、今は考えが変わったと告げるものの、
リン・ミンが行く先々に必ず現れるばかりか、
リン・ミンの面倒を見るために
彼女の家に住み込んでしまう。
予測不能な行動でペースを狂わせてくるリュ・トに
嫌悪を感じていたリン・ミンだったが、
リュ・トの純粋さ、素直さに次第にひかれ、
心を通わせていく。
しかし、リュ・トがリン・ミンに付きまとうのには、
ある理由があった・・・。
ともに不治の病を抱えている2人の男女を描く
中国製ラブロマンス。
物語の舞台は、中国・湖南省の長沙市近辺。
リン・ミンの透析治療の大変さが描かれる。
週3回病院に行き、透析を受ける。
3時間の間、じっとしていなければならない。
もう4年もそんな生活を続けている。
腕には無数の注射針の跡、
厳しい食事制限、水分摂取制限と戦い、
少し油断するだけで命取りになる。
ドナーの出現が唯一の希望だが、
移植手術が遺族の反対で直前で流れてしまい、
もう一人の被移植者の青年
(腎臓は二つあるので、
一人で二人に移植できる)
が泣き叫ぶ姿も描かれる。
実はリュ・トは、悪性脳腫瘍という不治の病を患っており、
リン・ミンの病状を知ったリュ・トが、死後、
ドナーになろうと考えていたのだ。
悪性脳腫瘍再発の恐怖と闘いつつ、
再発しても手術を受けない、
腎臓はリン・ミンにあげると主張する。
それを説得して手術を受けさせようとするリン・ミン。
ドナーとしてのリュ・トと
愛する対象者としてのリュ・トとの相克。
腎臓患者のリン・ミンを励ますリュ・トと、
リュ・トに手術を受けさせようとするリン・ミン。
励ます方と、励まされる方が途中で入れ替わる。
リュ・トは初めの方、風変りで奇矯な人物として描かれ、
リン・ミンの嫌悪を観客は共有するが、
次第にリュ・トの思いやりと暖かい心に触れ、
魅力的に見えて来る、作劇上の見事さ。
次第にお互いに心を開き、
思いが通う経過が
大変ていねいに自然に描かれる。
リン・ミンの両親や
リュ・トの母親の存在も泣かせる。
監督は、ハン・イエン。
リン・ミン役はリー・ゲンジー、
リュ・ト役はポン・ユーチャン。
二人の演技が素晴らしい。
4月5日に劇場で短期間上映された作品が
早くもNetflixに登場。
原案は、朱金平が雑誌「婚姻与家庭」に投稿した記事
「最功利的婚姻交易,最情的永恒定」(2015年)。
原題は「我們一起搖太陽」で
「一緒に太陽を揺らしましょう」。
太陽は東から上り西に沈むが、
時々サボって曇天・雨天になる。
だから太陽を揺すって起こそう、
という、篇中出て来る挿話から取ったたもので、
日本で付けた邦題ほどベタではない。
サブタイトルの「Viva La Vida」は「生きる」という意味。