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引っ越しました~
by lotusruby

21th TIFF Selection : 「パブリック・エナミー No.1」

2008-10-28 00:53:23 | Cinema な時間


「パブリック・エナミー No.1 (Part 1 & Part 2)」

原題: Mesrine: L'Ennemi public n°1 / L'Instint de mort (2008 年 フランス)
監督: ジャン=フランソワ・リシェ 
出演: ヴァンサン・カッセル、セシル・ド・フランス、リュディヴィーヌ・サニエ
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TIFF


今回の TIFF では、個人的な目玉はこの作品。

Part 1 は先週末フランスで公開されたばかり。Part 2 は現地でも未公開? ということで、TIFF ではできたてのホヤホヤを見ることができたわけだが、見る前は暗黒街のフレンチ・ノワールだったら Part 1 と Part 2 の一挙上映 4 時間耐えられるかしらんと、ちょっと心配もあったけど、そんな心配は不要。もう始まったら 4 時間なんてあっという間。お尻が痛いとか思う暇もなかった。

ジャンルは、ノワールじゃないな。フランスに実在した公共の敵 No.1 の異名を取ったジャック・メリーヌ(Jacques Mesrine なんだけど、劇中のジャックいわく、「メスリーヌではなくメリーヌ」らしい・笑)の生涯を追った伝記的ノワールかな(笑)。

映画の冒頭の但し書どおり、「映画はフィクションであり、個人のイメージを完全に描くことはできない」ということを念頭において見るべきジャック・メリーヌの生涯。

何しろ展開が早くて、瞬きさえも許されず(笑)。

「このヤマに乗る?乗らない?」、「よし、乗った。乾杯」、と言った途端、次の場面では刑務所の扉が開く。扉が閉まると、次の場面では、子供が増えているし・・・。ええーーーっと、数分のうちにあれよあれよと過ぎて行く場面もあれば、脱獄場面は息を飲むジワジワ感ありと、緩急のツボがなかなかオツ。

ジャックを演じたヴァンサン・カッセル、民衆の敵、公共の敵なのにこんなにカッコよくちゃダメでしょ・・・と(笑)。

Part 1 では、ジャックがパブリック・エナミー No.1 の名を欲しいままにするまでが描かれ、どちらかというとギャング映画の流れ。欲しいのは金、女、酒 ・・・。Part 2 では、パブリック・エナミー No.1 の称号に陶酔しきって、さらに反体制色を強めていく展開。フランス映画ではよくありがちなイデオロギー的な要素が加わる。右派か左派か、いや俺は 「革命家だ」 と言い出す。

もちろんジャックが、パブリック・エナミーへの道を突き進むきっかけがなかったわけではない。何が正しくて何が悪いのか、それを判断する価値観や 「法」 に対する疑問もチラリと描かれている。

パブリック・エナミーであっても所詮人間。劇中では、彼のすべてを憎み切ることもできないキャラクターになっていることも否めない。

だからといって、ジャックを英雄視したり義賊扱いしているわけではない。ドラマティックな生涯を追っているけれど、そんなドラマ的な情緒を押し付けられることなく、冷静に見ていられる。

ただ、ジャックが通り過ぎたフランスの政治・社会背景について説明がほとんどない。説明がありすぎてお堅い感じになってもいやだけど、もう少し説明があったら良かったのに。

Part 1 と Part 2 が連続で見られたのはラッキーだった。 賛否両論がありそうだけど、娯楽大作としては、緊張感もあってなかなか見応えある作品だと思う。


ヴァンサン・カッセル、第 21 回東京国際映画祭 最優秀男優賞 受賞おめでとう!




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