Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

『スルース』 vs 『探偵スルース』 Part I

2008-03-22 23:56:26 | Cinema な時間


どうしても見たかったので会社帰りに 『スルース』 (原題:Sleuth) を見た。この作品は 1972 年に公開された 『探偵スルース』 のリメイク。ちなみにスルース  (Sleuth) とは、「探偵」 という意味なので、邦題は 「探偵探偵」 となるのでちょっと笑える。ボードゲームにも「スルース」 という推理ゲームがあるな・・・

リメイク版 『スルース』 では、人気俳優ジュード・ロウにスポットが当たりがちだが、もちろん私もジュード好き。でも、もう 1 人の主役マイケル・ケインは、35 年前のオリジナル版で今回ジュードが演じている役を演じており、リメイク版のマイケルの役をオリジナル版ではローレンス・オリヴィエが演じているというのだから、もうどっちも見なくては・・・ということで、心密かに盛り上がった。

リメイク版の見所は、英国演劇界の粋を集めたとも言える錚々たる面々。最近ちょっぴり U.K. ブームの私にはあまりにも刺激的

リメイク版の監督は、そのローレンス・オリヴィエの再来と言われる英国演劇界の才人ケネス・ブラナー。脚本は、ノーベル文学賞受賞の劇作家ハロルド・ピンター。出演のジュード・ロウとマイケル・ケインはもちろん演劇畑から映画界でも名を馳せている実力派俳優。こんな美味しすぎる・・・(とは言え、私にとって英国演劇界は憧れの世界であるとともに、未知の世界なんだけどね。)


『スルース』  (原題: SLEUTH)
監督: ケネス・ブラナー 
脚本: ハロルド・ピンター
出演: マイケル・ケイン、ジュード・ロウ

                

演劇の舞台を見ているような 2 人劇。それもそのはず、映画のオリジナル版のさらにオリジナルは、演劇だから当然だ (アンソニー・シェーファー作) 。ロンドンでの初演は 1970 年 (日本でも劇団四季による初演が 1973 年) 。演劇が成功して映画化されたそうだ。

若い妻を寝取られた老いた推理作家 (マイケル・ケイン) は、その妻を寝取った売れない俳優 (ジュード・ロウ) を田舎の屋敷に呼び寄せる。2 人きりの世界で、女をめぐる心理ゲームが繰り広げられる。果たして勝者は、寝取られた側なのか寝取った側なのか・・・

初っ端から会話が実にウイットに富んでいる。双方からポンポン飛び出す会話はまるでコメディか?とも思え、可笑しくて笑いをこらえるのが大変。だって周囲は誰も笑っていなかったので

だんだんと心理ゲームが加速するにつれ、これは男の嫉妬なのか、偏執なのか、欲望なのか、何が主題なのか分からなくなっていく。追い詰めていたはずなのに、追い詰められていたり、コントロールしているようでコントロールされていたり、何とも言えないエキセントリックさが心地よい毒のようだ。

スタジオの中だけで撮影したそうだが、室内という設定に飽きないように、カメラの中のカメラも多用したカメラワークが凝っている。アップのショットが多いけれど、くどさはなくて、マイケルとジュードのどの表情も見逃せないから、こちらがスクリーンに顔をつっこんでいる感じ(笑)。

室内の照明も、どこか舞台照明のように。リメイク版を意識したのか、カントリー様式やトラディショナルな様式ではなく、モダンな様式で作られた室内セットに合わせて、照明もモダン。

2 人劇って難しいのだろうなと思う。演技力のバランスが崩れると、見ている方の視点もバランスを崩してしまう。どちらかがスクリーンをはみ出しても、埋もれすぎても後味が悪いものだ。その点、マイケルとジュードは、巧みなのに斬新さがあってさすがという感じ。あっ、これは演出のケネス・ブラナーの手腕なのかな~

ところでマイケルとジュードのロングインタービュー記事を読んだ。イギリス人らしく、sarcastic joke (皮肉をこめた冗談)も満載で面白い ( 
Times Online)。
以下、作品に関する話をテキトーに抜粋したポイントを紹介。
(MC=マイケル・ケイン、JL=ジュード・ロウ)

 オリジナル版の出来が良かったので、この作品がそれを超えるとは思えなかった。なぜ参加したかというと、脚本がピンターだっていうから。
[MC]

  誰かがケネスに向かって 「『スルース』はリメイクじゃないか」 と言ったら、ケネスは 「問題ない。僕がそもそも手がけている作品の多くはリメイクだよ。「オセロ」 を再演するなとでも?」 と言い返していたよ。 
[MC]

  2 作品の類似点をあげると、(オリジナル版の場合) 「Sir」 の称号を持つローレンス・オリヴィエと若僧の役者 (マイケル・ケイン) 、(リメイク版の場合) 「Sir」 の称号を持つマイケル・ケインと 「Mr.」 ジュード・ロウというように、両役者間の階級に格差があることだ。だが、当時と今じゃ、その重みは異なる。当時、ラリー(ローレンス・オリヴィエ)は 「自分と会うときは 'Larry' と呼んでくれていいからと」 手紙をくれたほどだ。ジュードにはそんな心配は無用だろう。 [MC]


  面白いのは、マイケルは共演俳優と共演するまで、その俳優がどんな仕事をしてきたか知らないことだ。
[JL]

  とても喜ばしく、そして驚いたのは、僕もマイケルもケネスも、仕事の仕方が似ているということだ。よく笑い、働きすぎることなく、ジョークばかり飛ばしている。でも、「アクション!」 の声がかかると、やるときはやる。 [JL]

  アメリカの俳優は、悩みながらスタジオの周りを半日でもジョギングしている。イギリスの俳優は怠けものだ。「ジョギングなんてクソ食らえ。とにかくやるっきゃない!」
[MC]

  『スルース』 の現場は笑いが絶えなかった。ジュードも私同様、リハーサルを本気でこなし、本番をリラックスしてこなす。 
[MC]

  オリジナル版スクリプトにある件のセリフ、’ベッドでは、イギリスの男性は下手だけど、イタリアの男性は上手い’ というのはもう古いよ! 
[MC]

etc.

Continued...



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