報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

自民、歴史的圧勝がもたらすもの

2005年09月12日 01時15分50秒 | □郵政民営化
「郵政民営化」の危険性について警鐘をならしてきた多くの人が、国民はこの4年で、小泉改革の何たるかを理解している、と判断していた。選挙において国民は適切な判断を下すはずだ、と。たとえマスメディアの力によって勝つにしても、圧勝はないと見ていた。ところが結果は、小泉大応援をしてきたマスメディアも予想しなかった圧勝だ。誰もが驚く結果だ。もちろん、僕もだ。

しかし、こうした事態を早くから、現代日本人の精神的特性から、予測していた人もいる(引用の引用で申し訳ないが、時間がないので許していただきたい)。

──「彼の二項対立は実に分かりやすく、『小泉=改革=善』対『抵抗勢力=旧守=悪』という『善対悪』の価値評価の図式は、今も暗黙のうちに人々に影響を及ぼしている。これは、小泉首相のレトリックの力にもよるだろうが、一方で、日本社会の側に、複雑な思考に堪ええなくなっており、ひたすら『わかりやすさ』を求めているという知的衰弱があるのではないか。昔は、あまりにも単純なスローガンに対しては、もっと意地の悪い猜疑の目が向けられていたように思うのだが。『誘導されやすさ』が現代人の最も顕著な精神的特徴となっているのではあるまいか」──
(『世界』九月号、「小泉支持率にみる知的衰弱」一九七頁。八幡洋:八幡心理教育研究所所長、臨床心理士、作家)

この分析の正しさを、ある程度認めざるを得ない。日本人は疑うことを止め、この4年間で日本がどうなったかさえ理解できていない。マイケル・ムーア監督は、自国民を”Stupid White Men”と揶揄したが、日本人は”知的衰弱国民”と呼ばなければならないのか。

今回の結果を受けて、小泉首相は今まで以上に、爆走することになるだろう。それが意味するものは、アメリカの財政赤字と戦争、減税のファイナンス以外の何ものでもない。アメリカのイラク戦争の戦費は、現在137兆2000億円。最終的には、300兆円に達するとも予想されている。アメリカの財政はとっくの昔に破綻している。この戦費を自国で賄うことはできない。外国にファイナンスしてもらわなければならない。これだけの巨費をファイナンスできるのは、日本以外にない。ブッシュ政権は、日本のお金を当てにして、アフガニスタンとイラクを侵略し、大勢の市民を殺戮してきた。これで、アメリカの軍事力と日本の金融資産が合体することになる。

今回、日本国民はとんでもない選択をしたことになる。
自分たちの生活を犠牲にして、アメリカの戦争を支え、アメリカの金持ちの生活に奉仕するのだから。

マスメディアは、そのことを知った上で小泉自民を大応援した。今回の、”ありえない歴史的圧勝”は、政府とマスメディアの常軌を逸した連合が起こしたものだ。マスメディアは、やってはならないことを、やってしまった。これは、国民への裏切り行為だ。いずれ引き起こされる結果に、政府もマスメディアも責任を負わなくてはならない。そういう意味で、小泉首相もマスメディアも、大きなミスを犯してしまった。これだけ露骨なことをして、あとから咎めがないと思ったら大間違いだ。小泉首相は、来年9月にさっさと逃げるつもりでいるようだが。

日本国民は、自分たちが信任した小泉改革の正体を、いずれ身を持って思い知らされることになる。今後、国民生活が良くなることは絶対にない。いくら”知的衰弱”といわれても、生活が苦しくなる一方なら嫌でも眼を覚ます日が来る。ブッシュを信任した”Stupid White Men”もいま、ブッシュにNOの声を上げ始めている。

当選した方からも一言。
「明日は、たいへんなことになりますよ」亀井静香氏
「(自民に票を投じた有権者は)あとから、”しまった!”と思うのじゃないかしら」田中真紀子氏

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26 コメント

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Unknown (yt)
2005-09-12 01:35:04
国民の熱狂が覚めないうちにどんどん決めていくはずです。これからどうなるんだろ。
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拙い文章でごめんなさい。 (林檎)
2005-09-12 01:47:01
はじめまして。

いつも拝見させていただいてありがとうございます。良心のようなものを信じた選挙でしたが,暗鬱たる気持ちです。大変でも,しまったと思っても,目を覚ます時が来てくれればよいと思います。



新興宗教の勧誘を受けた時,その宗教の<聖書>のようなものをもらいました。びっくりしたのは,どの本もすでに言われていることの寄せ集めや,変なことがいっぱいだったことです。「これ変だよ」と言っても,この言葉によって自分は救われたというその新興宗教を薦めてくれた人には全然通じなくて,教祖サマを神様のように崇めていました。どんなに反論しても,平行線をたどり自分の幼さから彼等を論破することはできませんでした。ちょっと考えたらわかることなのにと恐かったことを覚えています。" 知的衰弱"という言葉を見て思い出しました。



本を読んだり,考えたり,話し合ったり,そういうことが楽しいことではなくなった子供達を(そういう環境を作ってしまった,自分も含めた大人)育ててしまったツケがきてしまったような気がしました。もしかして,長い長い時間をかけて,こうなるように計画されていたのかな,とSF好きな自分は想像して背筋が冷たくなりました。でも,自分は人の心の良心を信じたいと思います。



拙い文章ですみません。
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ytさんへ (中司)
2005-09-12 04:04:03
コメントありがとうございます。

正直なところ、こんな圧勝になるなどとは想像だにしませんでした。



これだけの圧勝ですから、もう何でもできます。これから反対派へのいじめや粛清をはじめるでしょう。そうして、小泉独裁を磐石なものにすると思います。もはや「郵政民営化」をはじめ、あらゆる改悪は思いのままです。戦後、最悪の事態です。



それでも、ピンチこそチャンスというのも真理であると思っています。

大勢の人々が、小泉改革の本質を見抜いていることも事実ですから。
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林檎さんへ (中司)
2005-09-12 04:31:44
はじめまして。

コメントありがとうございます。

読みやすくて、わかりやすい文章ですよ。



これは、”にわか小泉信者”が起こした現象なのかもしれないと、コメントを読ませていただいて思いました。

”何をするのかは、よくわからないのだが、いまより違ったことをしてくれるなら、何でもいい”そういう人が大部分なのかなと思います。何でもいいから変えてくれ、と。人は変革を望むものですから。そこにズバリとはまってしまったということだと思います。小泉改革が何かをわかって票を入れた人など、ほとんどいないでしょう。だとすると確かに「知的衰弱」ですね。



しかし、期待した変化がなかったと知った時、こういう人々はいつでも反小泉となります。そのとき小泉氏が、まだ首相をしているかどうかはわかりませんが。

今回は、マスメディアを大動員したプチ・マインド・コントロールだったと言えるでしょうか。マスメディアには怒りを禁じえません。
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本当ですか (林檎)
2005-09-12 11:04:51
中司さん



本当ですか。

希望を持ってもいいのですか。

きょうは,暗い月曜日です。
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中司さんへ (宿屋のオヤジ)
2005-09-12 13:10:13
以前にも一度コメントさせていただいた者です。

今回の選挙に関する鋭いご投稿の数々にも敬服いたすばかりです。大変参考にさせて頂きました。有難うございます。

ただ今回結果、日本社会全体に蔓延する”知的衰弱”に最大の原因があることは確かでしょうが、それと同時に国民の民主党(や即席新党)に対する徹底的な”ダメ出し”といった側面もあるのでは無いでしょうか?

小泉氏のレトリックには十分気づきながらも、不甲斐ない民主党にどうしても一票を投じることが出来なかった人たちも決して少なくは無かったと思います。

私はどうしても小泉自民党の暴走を防ぎたい一心で、小選挙区、比例代表ともに民主党に一票を投じましたが、”それでも自民党に投票せずにはいられなかった”人たちのやるせない気持ちもまた理解できます。

この投票率にしてこの結果。私は日本国民のジレンマをも如実に物語っているような気がしてなりません。



今後も愛読させて頂きます。とり急ぎ失敬。
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成熟 (JJ)
2005-09-12 13:49:12
今回の選挙結果に危機感を覚えた人。

そしてこれから示される自民大勝の結果。



私たち有権者一人一人が成熟してそれらを噛み締め次の選挙に取り組むしかないですよね。



反小泉の政治家はそうした成熟していく有権者の受け皿となりうるよう努力していただきたいものです。
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たしかに圧勝ですが。 (Mee)
2005-09-12 13:54:37
朝日新聞にも「小選挙区での得票数で見ると、自民党と民主党は3252万票対2480万票。得票数では、1.3倍だが、議席数では4倍を超す差がついた。」とありましたが。



小選挙区制ですから、多くの人の声(票)は届かないという弊害も大きく出たと思います。



殆どの人が小泉支持であるかのような報道はして欲しくないと思いました。

不支持層の人が「私たちはマイノリティーなのか」と声を潜めてしまわないように願います。
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Unknown (rei)
2005-09-12 15:15:26
昔、日本は戦争をしました。

マスコミは礼讚ました。

国民は熱狂しました。

そのとき、冷静に日本を見つめていた人は何を感じたのでしょう。

状況は違いますが、今回も似たようなものです。大衆が決めるのですから、専門的なことではなく、人々を動かす、歴史をつくる「何か」が必要です。

そしてそれは単純で人間の本能や直感に訴えかけるものでなくてはなりません。



崖から飛び降りたら死んでしまうと忠告する人に対し、「崖から飛び降りてどうして死ぬと言いきれるのか?」と言い、「飛び降りたら必ず長生きできる!」と念仏のように唱えられると人間はどんな間違ったことでも必ず信じてしまいます。

実はこれ、悪徳商法やカルト教の話し方と全く同じなんですよね。

まず脅す→不安にさせる→今なら間に合う

というような手法で小泉氏の作戦は見事に成功してしまいました。

民意が政権を支持したのではなく、政権が民意を作り出したのです。



ですがパーフェクトゲーム過ぎると感じています。勢い良く燃え上がったものは、燃え尽きるのも早いでしょう。人間、何にでも理想を求めそして現実を見ます。

いつか必ず、国民は真実を見ます。そしてまたいつか真実を忘れ、歴史は繰り返します。



しかしいつの時も正論を訴えかける人はいるものです。自民党のヌシのような長らく政治を見てきた人が警鐘を鳴らしている。

もちろん彼らの言うことが全て正論だとは思いませんし、彼らにも問題があります。ですが間違ってはいない。彼らの存在は大変意味のあるものだと私は感じています。
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コメントをありがとうございます (中司)
2005-09-12 16:46:48
──宿屋さんへ──



そうですね。民主党も不甲斐なさ過ぎました。千歳一隅のチャンスをまったく生かせなかった。民主党は、何が言いたいのかさっぱり伝わりませんでした。はっきり言って、ダメ政党であることを露呈しただけでした。自民を攻撃すると、自分のところにも跳ね返ってくるので、腰砕けの優柔不断状態でした。これでは、国民は積極的に票を入れようという気にはなれなかったのですね。



民主党は、政権を執りたいというエゴが丸み見えで、誰のための政治なのかを忘れているようです。単なる自民党の亜流というべき政党でしかないようです。結局、民主党が勝っても同じという印象しか与えなかったのでしょう。



結局のところ、国民不在の民主党の姿勢が、小泉自民への最大の援護射撃になったということでしょう。小泉首相は胡散臭いけど、何が言いたいかわからない民主党に投じていいものか、ということだったように思います。まったくなさけない政党です。



──JJさんへ──



単独過半数なんて、危機的状態です。小泉首相は、あらゆる法案を自由自在に通すことができます。「今回の選挙は、郵政民営化だけを問う選挙だ」という言葉はすぐに忘れるでしょう。「ワタシは国民から信任を受けたのだ。ワタシのすることは国民の意志だ」くらい言い出すでしょう。



今回の結果は、ショック療法に近い効果があるでしょう。



──Meeさんへ──



あまりの圧勝に、僕は、しばらく頭が空白になりました。あってはならないことが起こってしまったのですから。そのあと、今後起こるべき事態を想像しました。最悪だな、と。



それから、その考えを否定しました。

もっと最悪なものを世界中で見てきたではないか。自国民どうしで、殺し合いをする。他国がいきなりやってきて占領する。空から爆弾を降り注がれ、市民の体が引き裂かれる。最悪とは、そういうことを言うのだと。



選挙で、独裁政権が誕生したくらいで、慌ててはいけないと。

今後の成り行きは、とても楽観できるものではないですが、ここで声を潜めてしまうことがあってはならないですね。



──林檎さんへ──



Meeさんのコメントにもあるように、小選挙区制は実際の民意を正確に反映しているわけではないです。得票数は1.3倍に過ぎないのに、、議席数では4倍。数の上では、そんなに巨大な差ではないです。反小泉勢力は、数では決して少数とは言えないです。小泉自民に投票した人も、絶対的な信念があって投票したわけでもないです。



小泉自民に入れた人は、何かかが変わればいい、というくらいの軽い気持ちですが、反小泉の人にとっては、とんでもない事態です。今回の事態に、真剣に危機感をつのらせている人が、何千万人もいるということです。



これだけの人々が、これからの成り行きに注視することになります。それは目に見えない巨大な力だと思います。

安心してくださいとは言えませんが、我々は孤独ではありません。
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