報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

被災地ムザファラバードから

2006年02月09日 18時56分04秒 | ●パキスタン地震
ムザファラバードからお送りします。

この地にきて三週間が経ちます。
ビザを延長し、あと一週間滞在できます。
この間、あるテント・ビレッジで寝起きしています。

この地の被災者の現状を手短にお伝えするのは難しいです。
想像以上に環境は悪いと言えます。
しかし、今日明日生きる死ぬという状況ではありません。
長期的な問題です。
三ヶ月後、半年後、一年後のことが被災者にはまったく分からない。
好転しているかもしれないし、悪化しているかもしれない。
不便なテント生活をしながら、ひとまず今日を生きるしかありません。
未来に対して何の希望も見出せない、それが被災者の現在の気持ちです。

食料は足りているとは言えないです。
シャワーを浴びることもできないので、衛生環境も非常に悪いです。
日中は暑いといっていいくらいの陽気ですが、日が落ちると極端に気温が下がります。
テントの中はかなり冷え込みます。
粗末なテントでは寒さを防ぐことはできません。

数字的には莫大な国際援助金が、届いているはずですが、実際に被災者の手元に届いているのは、驚くほどわずかなものです。

テント生活をする被災者にとってさらに不幸なのは、「被災者救援」が国内外の政治宗教団体の宣伝や勢力の拡大に利用されていることです。
その詳しい実態は僕には窺い知ることができませんが、かなり「過激」な団体が運営するテント・ビレッジもあるようです。

被災地からレポートできるのは今回だけだと思います。
明日からパキスタン・インドの国境地帯の被災地へ行きます。

中司達也
ムザファラバードにて

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ご無事で (ootaka)
2006-02-10 16:10:02
どうぞ、健康を損ねることなくご無事に取材を終えられて帰国なさいますように。
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お待ちしていました (越ヌール)
2006-02-13 19:28:24
>数字的には莫大な国際援助金が、届いているはずですが、実際に被災者の手元に届いているのは、驚くほどわずかなものです。



やはりそうなんですか。

自国内で被災した同胞を、なんとも思わないのでしょうか。

残念ですね。

それがその国の「力」を示していますね。



現地ではまだ余震のようなものがある、と聞いています。

どうかご無事で。
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ootakaさんへ (中司)
2006-02-17 19:44:49
四週間のテント生活でしたが、被災者の方にくらべればはるかに快適といってよい生活でした。

できれば被災者の方とまったく同じ生活をしたかったのですが、そういう我侭を言える立場ではありませんでした。



健康は問題ありませんでした。

しかし、バンコク行きの長時間飛行で風邪をひいてしまいました。



バンコクで写真の整理をしながら、ブログを更新したいと思います。



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越ヌールさんへ (中司)
2006-02-17 19:57:10
現地へいくまでは、それなりの援助がなされているものと思い込んでいました。

しかし、甘かったです。



総額で58億ドルの国際援助が約束されていますが、結局このおカネは「復興」に使われるのであって、被災者の「救援」にはほとんどまわらないようです。

「復興」にはさまざまな利権が生まれ、得をする人がたくさんいますが、「救援」はいわば捨て金ですから。



ここでも、世界の貧困と飢餓の原理がそのまま適用されることになるように思います。
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