倉野立人のブログです。

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令和3年9月長野市議会 「インボイス制度」に関する討論に登壇

2021-09-29 | 日記

開会中の 長野市議会令和3年9月定例会は、この日 議案審査の最終日を迎え、市が提出した「議案第87号 令和3年長野市一般会計補正予算」を初め「認定第1号 令和2年度長野市一般会計・各特別会計」など20の案件について可決認定が行なわれました。

このうち 私は、総務委員会所管の「請願第10号 消費税の事務に付加される適格請求書(インボイス)導入を中止するよう国に対する意見書採択を求める請願」について、この委員会が「不採択」とした結果について反対する旨の「討論」を行なうべく登壇いたしました。

 

 

と いうのも、私の下(もと)に 地域で細々と農業を営む営農者(Aさん)から、半ば悲鳴に近い声が寄せられたからです。

曰く「インボイス制度の啓発資料を見たが、われわれ零細農家にとっては負担が非常に大きくなるように感じられるばかり。このまま制度が施行されたら 代々続いた農業を断念せざるを得ないとも思わされる内容だ。なぁクラチャン、この制度について拙速に施行されることの無いよう アピールしてくんねぇかい。」と乞われたこともあってのことでありました。

 

「インボイス制度」は、2019年の消費税増税に伴い設定された「軽減税率」との両税(税率)が存在することになったことを踏まえ、政府が「取引の透明性を高めつつ正確な経理処理ができること」を目的として 2023年から導入する新たな納税(申告)制度です。

 

 

 

そのうえで、いわゆる中小事業者に付与されている「益税」の排除と、軽減税率など複数税率対応の厳格化を目的として考えられました。

いずれも、国の厳しい財政状況を背景に、税収の増加を図る狙いがあるものと思われます。

 

〔インボイス制度 関連サイト〕

      ↓

インボイス制度とは?2種類の消費税率へ対応するポイントをわかりやすく解説 | ペイサポ ~お店がはじめるキャッシュレス決済~

 

 

これまでの消費税制度においては、売上高が1,000万円以下など一定の要件を満たす場合 事業者は「免税事業者」となり、その僅かな売り上げの中で消費者から徴収された消費税分は「益税」として納税義務は発生しませんでした。

しかし国は、インボイス制度導入に伴い、かかる中小事業者からも微細とも言える税収を図ることとなり、経営圧迫に拍車をかけることが懸念されています。

この「益税」については課題があることは承知していますが、これについては、現行の簡易課税制度の改正で対応可能との意見もあり、直ちに中小事業者を負担増に巻き込むことには無理があると言わざるを得ません。

また 軽減税率など複数税率対応については、現行の 消費税率と税額が記載されている「区分記載等保存方式」で対応可能であるとの意見があり、現行の制度を煩雑化してまで制度を導入することに疑問の声が挙げられています。

前述のAさんは、この制度に対し 中小零細事業者に事務負担を増加させる一方で、これまで細々ながら他者との取引が行なえていた環境が大きく変わり、状況によっては 自分にインボイスが発給されない事態となり、他者との取引を伴う営農自体が継続できなくなることが懸念されると不安を訴えています。

このことについては、課税事業者として登録すればイイとの声もありますが、前述のとおり、その登録自体が営農を圧迫することになることから、非常に厳しい選択を迫られていると悲嘆に暮れておられます。

なお 農業者については、農協などを「中間事業者」として委託販売の形態を取ればイイとの声もありますが、Aさんについては ここ数年をかけてインターネットを駆使しての消費者との直販ルートを構築しつつあるとのことで、今さら農協の傘下には入れないとのこと、ここにも新たなジレンマが生じることになっているそうです。

このことについては、実にさまざまな業界から疑問の声が挙げられています。

日本商工会議所や全国中小企業団体連合会は、収益に結びつかない経費負担が増えることとなり、中小企業・小規模事業者の活力を失わせる。免税事業者に対する取引排除等の影響を回避する十分な措置が講じられるまでの間、少なくとも凍結すべきとし、全国建設労働組合総連合会は、現行の「区分記載等保存方式」で対応可能とし、中小企業家同友会は「中小・小規模事業者の死活問題である」と断じ、日本税理士会連合会は「事業者及び税務官公署の事務に過度な負担を生じさせる。」と延べ、また、全国青年税理士連盟は「免税事業者が取引先から排除又は仕入れ税額控除ができない金額に相当する額の値引きを求められる事態が想定され、公平性を欠く。」と述べるなど、この制度の導入に対し さまざまな立場の人たちが反対または凍結の意見を述べるに至っています。

 

 

 

私は、今般 この新制度の提案には、2つの疑問を呈せざるを得ません。

一つは、よりによって このコロナ禍の最中(さなか)に、新制度の導入を示したタイミングの悪さであります。

制度自体は 2023年からの施行ということでありますが、とりわけ中小事業者にとって、そこに向けた準備作業には膨大な負担が予想されるところであり、何より 2年に亘るコロナ禍で疲弊し切った中小事業者等に対し、さらなる負担増を強いる施策の開始を通告することは、疲れ切って それでも一歩一歩前へと進む人々の足首に、さらなる重りをぶら下げる行為に他ならないのではないかと思わざるを得ないところです。

さらに言えば、国の厳しい財政状況を鑑みて税収の厳格化を図るというのであれば、先ずは、真に適正な税を徴収しなければならない大企業への恩典を見直すべきであり、そこにメスを入れずして「取れるところから取ろう」と言わんばかりの新制度には、中小事業者ならずとも疑問を呈せざるを得ません。

 

今回の「インボイス制度」は、その実施について多くの課題と負担感が内在することを認識すると同時に、税収という観点では、社会全体の不公平感を是正せずにこの制度導入に踏み込むことは、人々の納税意識を著しく損なうことになりかねないことを懸念するばかりであります。

以上の点を踏まえ、市民生活に最も身近な長野市議会においては、半ば一方的に施行を迎えようとする「インボイス制度」に対し、現時点から反対や凍結の意思表示をすべきであることを訴え、私からの討論といたしました。

 

このことについては、私以外にも複数の議員が賛成・反対の討論を行ない、採決の結果 反対少数で可決(不採択)されてしまったところです。

 

いずれにしても 私とすれば、さまざまな方々の多様な意見を受け止めながら それを議会の場で述べることで、問題提起の一翼を担ってゆきたいと存じております。

9月議会の議論は終結することとなりましたが、これからも不断の意をもって 諸課題に臨んでゆきたいと思いを新たにいたしました。

 

 

 

 

なお、この日 28日は、長野市域内でのコロナ陽性感染者発生の報告は無く、長野県全体でも5件に止(とど)まったことが報じられていました。

 

 

 

長野市域のみならず、県内でも(コロナ陽性感染者が)減少傾向にあり、今のところ 安堵が共有されるところです。

が しかし、今のうちが肝心…感染者数低減の今のうちに、また いつ来襲するやもしれぬ、次なる〝波〟に備えて万全を期するべきことは 言うまでもありません。