倉野立人のブログです。

日々の思いを、訥々と。

難しい判断

2019-03-27 | 日記

3/26 Tue. 

 

この日の信濃毎日新聞の朝刊一面トップに、県内の特別養護老人ホームで起こった 「介護中事故」 について、担当していた准看護師に有罪判決が下されたとの記事があり、注目した、というより 注目せざるを得ませんでした。

記事によると、安曇野市の特別養護老人ホームで2013年12月、入居者の女性=当時(85)=がおやつのドーナツを食べた後に死亡した事故で、注意義務を怠ったとして業務上過失致死罪に問われた松本市の准看護師(58才)の判決公判が、地裁松本支部で行なわれ、裁判長は求刑通り罰金20万円の有罪判決を言い渡したとのことです

 

今回の介護中事故の刑事訴追については、介護現場を担う職員の萎縮につながりかねないとして、関係者が全国で勉強会を開くなどしてきましたが、今回、職員の注意義務を厳しく求めたといえる司法判断は介護現場に大きな影響を与える可能性があるとのことです。

 

起訴状などによると、この准看護師は、入所している高齢女性にドーナツを提供して窒息させ死亡させたとしています。

検察側は、女性は食物を口に詰め込む癖があり、被告には窒息などの事故を防止するためにおやつはゼリー状の形態で提供し、動静を注視する義務があったのに怠った―などと指摘しています。

一方、弁護側は、女性に摂食・嚥下(えんげ)障害はなく、被告が動静を注視しなければならない状況ではなかった―と主張。おやつの形態を看護職員がチェックする態勢になっておらず、ドーナツの状態などから窒息ではなく脳梗塞や心疾患などで死亡した可能性があるとして無罪を訴えていました。

 

他の紙面では、この判決に対し、県看護協会の会長のコメントとして 「なぜこのような形で職員に罪を科すのか。利用者の全てを把握しておくのは不可能です。このような判決が通れば、介護現場は萎縮ししまう。」 と述べ、また傍聴に駆けつけた大阪市の看護師は 「(事件後)介護現場は萎縮していると聞く。これが正当な判決だとしたら誰も介護に携われない。」と危機感を募らせていることが伝えられ、また兵庫県の看護師経験者は 「利用者の尊厳を守るため(危険性のある利用者の)全ての食事を流動食にはしたくない。その思いを踏みにじる判決だ。」 と無念さをにじませていたとのことでした。

 

 

かくいう私も、自分の父親を、生前 約7年ほど 母親と一緒に介護したものでした。

頸椎損傷になって半身が不自由になった親父は、それでも在宅にこだわり、加療のため入院[病院]する以外は家で過ごし、食事・入浴・排泄などの生活行動を家で看たものです。

そんな親父も、ご多分に漏れず加齢と共に嚥下力[えんげりょく]が弱まり、咽[む]せたり吐いたり、そのうちにそれもできなくなってしましました。

今となれば、時間経過と共に 「食べる力、飲み込む力」 の衰えが顕著だったなぁと回顧されるところです。

 

他の家庭と同様、ウチの場合も、たった一人の親父の介護に汲々としたものでしたが、例えば今回の裁判のように、複数の、それも要介護状態の高齢者の介護を担う施設においては、その現場で働く方々のご苦労はいかばかりかと思うところです。

それでも 「職業人」 として現場に立つ以上は、事故が無くて当たり前、何かあれば責任を問われることも いか仕方ないとも申せます。

 

今回の判決は、高齢者の方の様子[特徴]や施設での業務の管理の状況など、複雑な要件が絡まったうえでの事故に対する司法判断となり、評価が分かれるところと思います。

 

被告側は即日控訴ということで、今後の推移が改めて注目されるところですが、いずれにしても 高齢化社会・施設介護傾向の昨今、お年寄りの看取りについて、私たちは重い課題を突きつけられ、難しい判断を迫られるようになったニュースだと実感させられたのは、私だけではないでしょう。