二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2016明治安田生命J2リーグ第16節 金沢vs京都

2016-06-05 | 蹴球

ツエーゲン金沢△1-1京都サンガF.C.
           14'エスクデロ競飛王
            (↑イヨンジェ)
58'山雅人
 (↑山藤健太)


[警告・退場]
・金沢
23'山雅人(C1反スポーツ的行為)
90'+2野田紘史(C1反スポーツ的行為)
・京都
なし


【全体の印象】
 前半は京都が金沢に攻め手を与えず、ゲームを支配。長短のパスを織り交ぜる攻撃で金沢を翻弄し、左に流れたイヨンジェの折り返しからエスクデロが先制。その後もセットプレーを除いてほぼワンサイドゲームだった。後半、京都山瀬が決定機を逸した直後から金沢は京都の右サイドを再三衝きはじめ、同サイドからの崩しで同点弾。その後前線が活性化した金沢に対し、京都はプレスがハマらなくなり、守備の対応も後手後手に。エスクデロを下げてからはチャンスも作れないなど、交代策もハマらないままドローに終わった。


【雑感】
■加賀百万石の最初の日
 この日6月4日は、前田利家が金沢に入城した日を記念し、「百万石まつり」が催されていた金沢。433年前、まだ金沢城が尾山城(尾山御坊)と呼ばれていた時代で、当時は柴田勝家の甥・佐久間盛政の城だった。とはいっても、盛政は直前に起こった賤ヶ岳の戦いで既に羽柴秀吉に敗れ去っている。柴田勝家も福井北庄城とともに滅亡しており、いわば用意周到の状態で秀吉の武威を示すための入城だった。加賀の太守に封じられた利家は、あくまでも当時京都山崎の宝寺城を本拠にしていた秀吉の露払い役に過ぎなかった。
 さてこのゲーム前半の戦いぶりをみると、京都が金沢に露払いをさせて昇格戦線に高らかに武威を示す、そんな様相が思い浮かぶくらいの出来だった。水も漏らさぬような安定した守備と前線から追い込むプレスがガッチリ連動。奪ってからの展開も長短のパスを織り交ぜ、攻めも左右中央偏らない。流れの中からは相手に攻めの糸口すら与えないほど。ちょうど11節の清水戦と立場を逆にしたような、そんな前半だった。勝負の分かれ目となったのは、石丸監督が「後半の最初に山瀬へ入ったクロスは狙っていた形だった。ゴールが決まれば、もう少し上手くいったかもしれない」と語る通りの場面。69分の堀米のシーンも含め、決定機で仕留められるかどうかは、次の段階へと進むための課題だろう。

■佐久間盛政とアンドレイ
 さて、金沢城の話に戻ろう。前田利家の前城主・佐久間盛政は鬼玄蕃とも呼ばれる猛将だった。賤ヶ岳の戦いでは、秀吉軍の真っ直中を奇襲し、中川清秀を討ち取って砦を奪取している。総大将の柴田勝家はすぐに撤退するように命じたが、盛政は敵陣に中入りしたまま居座ってしまい、戦力を分断してしまったことが柴田軍敗北の一因となった。(ただし柴田軍敗北の決定的要因はもっと広大な視点での戦略面)
 本来のポジションから敵陣に入り込む、といえばこの日のアンドレイだ。前半はアンドレイの中入りがかなり効いていた。アンドレイがトップ下~堀米の前目でボールを収めるため、金沢の中盤4枚のラインもアンドレイに引きずられ、そのまま相手を押し込めた。ところが後半、金沢が左サイドバック野田のところから攻勢に出はじめると、アンドレイが前にいるため佐藤健太郎だけではカバーしきれなくなり、後手を踏むようになった。もちろん、原因はアンドレイ1人だけではない。一番気になるのは後半から急激に全体の運動量が落ちたことで、どうも気温や湿度のせいでもなさそう。出足が鈍った原因はクリアにしておきたいところ(前半調子に乗って飛ばしすぎた?)。
 とりあえずアンドレイのポジションとか、バランスが悪くなった点については監督も把握しているようなので、ゲーム中にそこらへんをいかに修正していくかは今後の課題(アンドレイの言い分と少し齟齬があるけど)。何事も上手く行きすぎて問題点が見えにくくなるよりは、抱えている問題点と向き合える状態の方が発展途上中のチームには有り難い(修行脳)。とどめを刺せない問題、突き放せない問題、ワンパターン化しつつある交代策など、まだまだ向き合うべき課題はたくさんある。昇格戦線はまだ三の丸とか二の丸に差し掛かったところ。ひとつずつ課題をクリアして、一歩一歩階段を上がっていけば、いつか本丸にたどり着けるはず。本丸に石丸が座るその日まで。