二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2019明治安田生命J2リーグ 前半戦レビュー

2019-07-09 | 蹴球

 早いもので今季のJ2も全対戦が1巡してシーズン折り返し。今のところ天候不良や災害による中止・順延等もなく、このまま何事もなく日程を消化できるシーズンになればいいな、と。それが一番なのです。

 前半戦を終えての印象は、「圧倒的に強いチームの不在」。開幕前に戦力値がズバ抜けてると思われてたチームも簡単には勝てず、結局頭1つ抜けて首位に立ったのは山形。前年は12位。好チームそうとは思っても首位折り返しとはさすがに誰も考えなかったはず。そして2位には京都。こちらは前年19位。開幕前はむしろ降格候補だった。この結果、誰が予想できただろう。誰もいないに違いない。

 

〈2019前半戦順位〉


■「組織力型」vs「強戦力型」vs「超ポゼッション型」
 山形は以前触れた通り「組織力型」のチーム。全員が他人任せにすることなく、90分間集中して21試合でわずか13失点の堅守を築いた。3バックで中央のレーンを塞ぎ、サイドが駆け戻って外側のレーンも防ぐことができる守備重視の布陣。4位水戸も「組織力型」で、こちらは4-4-2をベースにハイプレスとボールの位置へのスライドの早さで14失点の堅守を基本に躍進した。両チームともいわゆる“高火力アタッカー”はいないが、低年俸な好選手は豊富。粒揃い。可能性の宝庫。攻撃イメージをチームで共有して手数をかけずともゴールへ迫る力を持つ。この手のタイプが昇格争いの一翼を担っている点が今季のJ2を象徴している。7位金沢もタイプ的にはここ。既に水戸の伊藤槙人や金沢の毛利駿也がJ1に引き抜かれているように、低予算で躍進したがゆえの引き抜きが怖い。

 3位柏、5位大宮は今季J2の強化費トップ2で、J1クラスの「強戦力」を擁するチーム。あまりリスクを取らずにまずはきっちり守備を構え、攻撃は外国人を中心とした高火力アタッカーをキーとしてこじ開ける。6位甲府もおおむね同じタイプでリーグ2位の33得点を叩き出した。高予算の「強戦力型」がハマれば強いのは当然なのだが、当然相手も抑えどころを対策する訳で、結果大宮はドローが多く、柏と甲府は下位相手に取りこぼしもあった。例えば20位栃木相手に柏は△0-0、大宮は△0-0、甲府は●0-1。今のJ2は「強戦力」だけで突き抜けられるほど甘くはない。大宮の高木琢也監督はそこらへんはわかっていて、特定の選手に依存しないチームに仕上げようとしているのはうかがえるが…。一方柏はさらにブラジル人2名を獲得する札束攻勢。恐ろしや。いまひとつ振るわない11位新潟もこのタイプ。FW呉屋大翔への依存が強まる8位長崎もタイプ的にはここだろうか。


 今季J2のサプライズチームは2位京都。去年降格圏を彷徨い「無戦術」と揶揄されたチームだったが、新人監督・中田一三氏がモダンなゲーム戦略を持ち込むと、10試合程度でスタイルを確立。極端なボール保持率&パス数を弾き出す「超ポゼッション」でゲームを支配する。特に5月以降は相手を圧倒するゲームも目立つが、決定機が勝ち点3に結び付かないことも多い。ゲーム運びは未熟だが、一歩ずつ進化はしている。京都ほど極端なポゼッションではないが、ゲーム運びと戦術習熟度が高いのが9位徳島。ここにきて調子が上がってきており、昇格争いに食い込む気配。一方で「ポゼッション」を志向して失敗したチームも多い。ペッキア福岡や大木岐阜、エスナイデル千葉は低迷。10位岡山はシーズン当初からスタイルを調整してボールを持つことにこだわらなくなり、上位に食らいつく。

 


■前半戦順位を予想していた?日程君

 飛び抜けて勝ち点を稼いでいるチームがないこと、飛び抜けて勝ち点を取れていないチームがないのも昨シーズン(下図参考)と似た展開になっている。
 そう考えると、現時点で勝ち点31以上(10位岡山以上)が昇格争いの目安か。ただ、12位横浜FCが下平隆宏監督に交代後ぐんぐんと調子を上げており、このあたりまでは昇格レースに絡みそう。後半戦に大きな連勝(5連勝、6連勝以上)ができる力を付けたチームが現れれば、自動昇格を掴み取れるだろう。そんな激戦の予感漂う後半戦の最初のカードに、何と1位山形vs2位京都の対戦が用意されているではないか!誰も予想しなかったと思われていた前半戦順位を、日程君は読み切っていたというのか!!恐るべし日程君!

 昨年折り返し時点の順位表を眺めてみると、後半で急激に失速したチームがある。それが昨年前半2位山口と前半11位の岐阜。それぞれ小野瀬康介と古橋亨梧というキープレイヤーをJ1に引き抜かれ、みるみる失速した。夏の移籍マーケットの動きも、J2の趨勢を占う重要なファクターとなっている。そうなると「主力を引き抜かれない経営体力」を持つ柏や大宮がやっぱり昇格本命に浮上するようにも思える。むしろ早速新戦力を補強してるし。ただ、横浜Mに伊藤を引き抜かれた水戸はC大阪から福満隆貴を補強するとの報道もあり、去年とは少し流れが違うのかもしれない。山形や京都はリーグ全体では中予算で戦力的にも手薄なので、キープレーヤーを引き抜かれるととても痛い。逆に木山監督や中田監督の元でやってみたいというJ1の若手(あるいはJ3のアンダーチームの若手)を借りてこられるといいのだが。東京五輪1年前ということで、出場機会を求める若手がJ2にやってくる可能性も例年より高そうな気がする。とにもかくにも移籍動向を見る前にどうこう言ってもはじまらない。えっ?横浜FCに中村俊輔?えーー?

 

■仁義なき残留争い
 一方で下位にいるチームは、そろそろ目標を「残留」に切り換えて現実と向き合う季節になった。去年の熊本は前半勝ち点22から降格しているので、勝ち点23の17位愛媛より下は残留争いを意識すべきポジションになる。残留に向け監督交代という形でを目標を明確化したのが22位岐阜。北野誠監督は大木武監督時代のボールを中心とするサッカーからの転換に着手し、きちんとスペースを守れるチームへ組み直そうとしている。順位の近いチームは叩き、上位からは勝ち点1をもぎ取るようなチームを作るにはうってつけの後任監督だ。

 17位愛媛と19位鹿児島はシーズン当初から内容は悪くない。川井健太監督も金鍾成監督も手腕は確かなので、現状を継続しつつ、目標を曖昧にせず(あまり夢を見すぎず)モチベーションを上げていくのが得策か。18位千葉、20位栃木、21位福岡は現状上手くいっているとはいえないチーム。低予算で明らかに戦力が劣る栃木は打つ手も限られている。お金を使うならば戦力補強の方か。一方千葉は昨年の人件費12億(リーグ2位)、福岡は9億(リーグ6位)という比較的高予算なクラブ。双方事情は異なるが既に監督交代を行い、後任監督は内部昇格人事でまかなった。がしかし上手くはいっていない。2度目の監督交代に踏み切るか、あるいは得点を獲れる外国人を連れてくるか…。昨年21位で折り返した京都は夏に大量に選手を補強し、流れ関係なくゴールだけ奪うカイオのような選手がいてようやく残留にこぎつけた。何だかんだ言っても仁義なき残留争いで最後にモノを言うのはカネ。カネの使い途として即効性のある監督なり選手を引き当てられる運も試される。


 昇格とも残留とも関係なさそうな位置にいる15位山口がここにきて不気味さを増す。破壊力のある攻撃陣と脇の甘い守備というある意味魅力的なサッカーを繰り広げていたが、守備面が安定しはじめると攻撃も上手く回り出した。得点数は現在リーグ1位の34。後半戦の台風の目として暴れ回りそうな予感もあるが、再び脆さが出ると岐阜・福岡に次ぐ失点数33を喫しているだけに、自らを傷付ける諸刃の剣にもなりかねない。だが、そういうチームが1つくらいあるのも面白い。2017年のエスナイデル千葉がそんなチームだったなぁ。

 

◆個人的なJ2前半戦ベストイレブン

※異論は認めますが苦情は受け付けません。大宮の選手がいないじゃん、とか。

GK 櫛引政敏(山形)

DF 伊藤槙人(水戸→横浜FM)・栗山直樹(山形)・染谷悠太(柏)

MF 岩尾憲(徳島)・ヒシャルジソン(柏)・小屋松知哉(京都)・仲間隼斗(岡山)・仙頭啓矢(京都)

FW ピーターウタカ(甲府)・黒川淳史(水戸)

監督 中田一三(京都)

あー…カルバハルや熊本雄太、黒木恭平、前寛之、奥井諒、イヨンジェ、鈴木孝司、呉屋大翔あたりも入れたかった…