二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2013 J2第3節 福岡vs京都

2013-03-17 | 蹴球

アビスパ福岡●1-2○京都サンガF.C.
19'石津大介
         45'駒井善成
         90+1'三平和司

■人心を掴む指揮官
 まず、アビスパ福岡を賞賛せねばならない。この試合の前半は、完全に福岡のゲームだった。特に優れていたのはサイドを攻める時、さらに大外から誰かが走り込んで京都の守備網を無力化した動き。いわば囮のように大外を周り込む無駄走りは、中央突破をかけられた時には大きなリスクになるにも関わらず、福岡の選手たちに迷いはなかった。京都の左サイド・駒井善成―福村貴幸のラインがこれに手こずり、最初の得点も左を豪快に突破されて折り返された末の失点。今年の福岡が「迷いなく」やっているのは新指揮官、マリヤン・プシュニクの手腕だろう。指示を受ける側が指示を出す側を完全に信頼していて、「この人の言う通りやっていれば、間違いはない」そういう覚悟を植え付けている。そして、がっちりと人心を掴んでいる。プシュニクは京都の強みをパスを繋ぐ点ではなく、囲んで奪うという点だというところまで見抜いていた。そのためのボールの動かし方や大外に人を走り込ませるフリーランのやり方までオーガナイズしていた。一方の京都も原一樹を中心に、何とか攻めの糸口を開こうとするも、細かいミスを連発。前半終了間際には福岡のスローインから駒井が処理を単純ミスして相手にボールを献上し、そこからバヤリッツァがあっさり躱されてクロスを入れられるという万事休すな状況に。相手のミスキックで助かった直後に、駒井の卓越した個人技による同点弾が生まれるのだから、サッカーはわからない。

■奪う人、現る
 福岡に初手を奪われっぱなしだった前半を受け、後半、大木監督が施した修正は適切だった。プレスの位置や網のかけ方の連動を再確認し、高い位置からプレスをかけていくことで、目に見えて中盤の運動量が増えた。特に工藤浩平と横谷繁の動きが「前」を意識しはじめる。ところが工藤のスルーパスから抜け出した原が堤俊輔に倒され、堤一発退場という「事件」がまた流れを複雑にしてしまう。数的不利に陥った福岡は、当然「チャレンジ」よりも「守備を固める」方にシフト。数的優位になることで、京都はまたまた苦手な命題 ~固めた相手を崩すという~ を突きつけられた。大木監督が切ったカードは宮吉拓実、そしてサヌ。相手を押し込み、ときに肝を冷されるようなカウンターを浴びる展開の中にあって、依然として前への推進力になったのは2枚のFWではなく、横谷と工藤、そして安藤淳だっただろうか。福岡の堅陣の前に、なかなか最前線に基点を築けなかったのだ。
 87分に入った三平和司は、それはもう決勝点を奪うために切られたカードだった。「浩平さんがボール持った時に動こうと…」していたという三平。中盤から出てくるボールをゴールに入れるというシンプルな大仕事の背景には、やはり人と人との信頼関係がある。


〈京右衛門的採点〉
 オ 6.0 …前への飛び出しでピンチを救うプレーが目立つ。
安藤 6.0 …右サイドを完全に京都のサイドにしたが、2度の得点機を逸した。
染谷 5.5 …いい対応を見せていたが、パスミスなども多かった。
バヤリッツァ 5.0 …強さと脆さ両面。あわやPK献上なヒヤヒヤな対応もあった。
福村 5.5 …左サイドを上手く使われ、相手の後手を踏む場面が多かった。
秋本 5.5 …攻守ともにポジショニングが中途半端、一歩遅れ気味。
工藤 6.0 …前半は存在感なし。後半、狙いすましたスルー2本で勝負を決める仕事。
横谷 5.5 …よくボールに絡んだが、怖さを発揮できず。後半中央に入って存在感が出た。
駒井 6.0 …ミスが目立ち全体としては不出来だったが、超絶技巧同点弾は値千金。
 原 6.0 …ボールサイドに顔を出し、いい狙いを続けたが、機能したかどうかは疑問。
久保 5.5 …シュートに貪欲だったが、細かいミスを連発。原とのコンビもあまり良くない。
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宮吉 5.5 …横谷が追い越しやすいスペースを作るなど、地味な働きは評価。
サヌ 4.5 …ほとんど何もできず。ボールを受けてからの判断も遅い。
三平 6.5 …ワンチャンスを泥臭く決め決勝点。宮吉と組むと、前線の自在性が増す。
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大木監督 5.5 …前半は不出来。後半の修正対応と最後に切ったカードが運を呼び込んだ。