京都サンガF.C.○3-1●FC岐阜
15'駒井善成
28'駒井善成
41'安藤淳
86'樋口寛規
■士気=1cm1mm
士気の高さは、あらゆる物事を超越してしまうかもしれない。「背水の陣」という言葉がある通り、もうこれ以上引けないから戦うしかないという状況に身を置いてしまえば、弱兵もたちまち強兵に変身する。サッカーでも、まるで催眠術をかけたかのように集団の士気を騰げて、勝利をもぎ取るタイプの指揮官がいる。いわゆるモチベーターと呼ばれる人で、短期決戦には滅法強い。元大分のシャムスカなどが記憶に新しいが、我らが大木武監督は、どちらかといえばモチベーションに頼らないタイプ。競争原理でやる気は喚起しても、士気を一気に騰げてしまうような魔術はない。その大木監督が前節の敗戦を受けてこんなことを言った。「最後に足を出せるか、最後の0コンマ5秒を大切にできるのか、そこの勝負になってくると思います。それができるかできないか。」―確か大木監督が甲府の監督だった時、「1cm1mmの努力」ってキャッチフレーズを使っていたことを思い出した。いくら士気が騰がったからといって、人間が突然強くなったり上手くなったりはしない。だが、1cm1mmの積み重ねが思わぬ力を発揮する。1mmを追い続ける者とあきらめる者との間には、とてつもなく大きな差が横たわっている。
今日の試合ではそんな小さな努力を実践した者たちがいた。とりわけ、1得点目と2得点目がそうだった。
■奪え!そしてためらうな!
1得点目を挙げた駒井善成は、相手の処理ミスを掠め取ったチョンウヨンから受け、そのまま一気に1人躱し、また1人躱してゴールを奪い取った。ボールを奪ってからの反転攻撃までのタイムロスは一切なし。そして2点目は、自陣深くで鋭い出足からボールを奪った安藤淳から。まさに相手より等0.5秒早く足を伸ばしてカットすると、迷うことなくサイドを駆け上がり、これまた迷うことなくクロス。駒井がナイストラップで相手を躱して2点目を奪い取った。どちらのゴールの基点も、1cm1mmを相手よりも早く寄せたことから始まっている。他にも中山博貴や染谷悠太の出足は終始鋭く、富山戦とはまるで違う「士気」を感じた。
最終盤の「負けられない戦い」では、フォーメーションがどうこうより、個人個人がこの気持ちを持ち続けられるかどうか。幸いなことに多くの選手が去年の天皇杯でも同じような体験をしている。メンタル面で引っ張る役目はベテランだ。安藤、中山そして水谷雄一が気合い充分なので、あとは駒井のような若武者がいかに思い切りやれるか。前を向いたらためらうな!そんな士気を持続しつづけることが大事。「苦しい時は私の背中を見なさい」って澤穂希が言うように、精神が肉体を走らせることも、ある。
〈京右衛門的採点〉
水谷 6.0 …何度か果敢に飛び出して決定機を阻止。無難かつ出来。
安藤 7.0 …2点目に繋がる攻め上がりなど、攻守に躍動。飛び出しも目立った。
染谷 7.0 …高いカバーリング能力を披露。奪ってからのビルドアップも○。
バヤリッツァ 5.5 …強さと裏腹に脆さも見せ、失点時を招くミスも。プレーも荒かった。
黄 5.5 …高い位置から何度もクロスを送ったが、正確性を欠く。守備も危なかしい。
チョンウヨン 5.5 …ボールを奪う、受けるまではいいが、繋ぎや散らしが雑。プレスキックは○。
福村 6.0 …地味だが全体のバランスをとる仕事ぶり。特に後ろのカバーのタイミングが良い。
中山 6.5 …豊富な運動量で縦横無尽に駆け、プレスに、反転攻撃によく顔を出した。
工藤 6.0 …第一プレス者として愚直に戦術をこなす。いい飛び出しも目立った。
中村 5.5 …局面のテクニックは見せたが、決定的に崩す武器は繰り出せず。疲れ気味?
駒井 7.5 …キレキレドリブル以上に強烈なプレスが圧巻。このゲームを決めた男。
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長沢 5.5 …前線で収まらず。チャンスへの抜け出しやクロスでチャンスは作ったが。
内藤 5.5 …守備的な仕事が多く、早い寄せを見せたが、ファウルで止める癖にヒヤヒヤ。
宮吉 ――
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大木監督 6.5 …前節挙げた課題を実践させた手腕を評価。連戦を見据えた交代策?