二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2013 J2第19節 京都vs愛媛

2013-06-16 | 蹴球

京都サンガF.C.○4-1●愛媛FC
3'バヤリッツァ
          33'河原和寿
78'三平和司
90+2'駒井善成
90+4'三平和司

■バイパスと片側一車線
 開始早々にフリーキックからバヤリッツァが押し込んだ先制点は、意外な展開を生んだ。火が付いたのは石丸清隆監督率いる愛媛FCの方。目を見張ったのはそのスピード感だ。奪ってからとにかく速い。特にミドルレンジのパスに勢いがあり、ある程度すっ飛ばしていく様はまるでバイパスが通っているようだった。アクセル全開で何とか追いつこうと疾走する愛媛に対し、先制した心の余裕からか、“受けて”しまう形になった京都。この試合では最近すっかり鳴りを潜めてしまっている「奪ってからの切り替えの速さ」に注目していたのだが、奪うことすらままならないのだ。奪えたとしても、繋ぎの所でパスにミスやズレが目立ち、すぐに詰まってしまう。それはまるで片道1車線の一般道のようだ。
 京都のミスは反転して愛媛のパイパス攻撃になる。ところでパイパスは入口だけでは成立しない。必ず出口が必要だ。パスの出し手を入口とすると、レシーバーが出口。すっ飛ばして斜め一直線の場所に綺麗に出口を作るのに格好の場所が、福村貴幸の背後だった。福村は31分にも背後にミドルパスを通されピンチを招いた。その2分後にまたしても背後を狙われ、そこから折り返された末の失点。愛媛が前半見せたサッカーは、奪ってから速いサッカー、つまり大木監督がやろうとしている基本のようなサッカーだった。もし京都にバヤリッツァがいなければ、早々にゲームを決められてしまっていたかもしれない。

■下を向くな、牙を剥け
 ではなぜ愛媛が主導権を握っていたのだろうか?それは、おそらくボールに食らいつく気迫の差。石丸愛媛は、素早くボールに寄せる、相手よりもたくさん走る、隙あらばどんどんシュートを打つ、そういうチャレンジャースピリットに充ち満ちていた。そういえば、2年前に天皇杯で勝ち進んだ時の京都もそうだった。鹿島や横浜M相手に牙を剥いて挑みかかったあの時と。いつからこのチームはチャレンジャースピリットを失ったのだろう。あの牙はもう抜け落ちてしまったのか。
 もしも三平和司の投入に“闘志”の意図が込められていたのならば、大木監督は名将である。結局、この日チームに最も足りていなかったものを三平は持っていた。勝ち越しシーンの三平の動きは、そのことを体現している。右サイドで駒井善成から縦パスを受ける、横谷繁に折り返す、相手が一度防いだところをまた奪い直す、そのまま左に流れて自分で決める。この「何がなんでも」という華麗さの欠片もないプレーが、味方を鼓舞した。以降、安藤淳は攻め上がりに凄みが出て完全に右サイドの王様として君臨し、横谷は主審に認められないながらも何度も身体を張って基点を作れるようになった。たった一人が変わることで一歩ボールへの寄せが早くなり、意識のベクトルが前向きなっていく面白さ。
 前半があまりに渋滞気味でイライラさせられたせいで、一気にカタルシスを起こすというエンターテインメント性の高いゲームになったが、そこは最初から牙を剥けよ、自分たちが挑戦者であることは忘れるなよ、と小声で伝えておきたいのであります。


〈京右衛門的採点〉
 オ 6.0 …珍しくミスも多かったが、ハイボールへの強さでCKの嵐を耐えた。
安藤 6.0 …後半75分以降の積極性は長友クラス。それまではパッとしない守備的SB。
染谷 5.5 …押されながらよく守ったが、不用意なスライディングで累計8枚目の黄紙。
バヤリッツァ 6.5 …残念そこはバヤリッツァだ!目の届く範囲は全部弾き返した。
福村 4.5 …背後をケアできず、失点を招く。持ち味のパスも雑なものが多かった。
田森 5.0 …チェックが甘めで、下がり気味にもなり、愛媛に自由にやらせてしまった。
秋本 5.5 …止めることはできたが、奪えない。繋ぎはそれなり。たまにいいフィードも。
駒井 5.5 …相手の勢いに押され気味で、判断も遅く、後ろ向きだった。三平投入後は激変。
山瀬 5.5 …相手の嫌な所に顔を出したが、そこから先でパスが繋がらない場面多し。
横谷 5.5 …あまり収まらず、ミスも目立ったが、三平が入ると別人のように躍動。
久保 5.5 …流れて受けるばかりで怖いプレーは少なかった。安藤のクロスは決めたかった。
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酒井 6.0 …素早かった愛媛の前線によく付いて回り、広い守備範囲をカバー。
三平 7.0 …泥臭いプレーで勝ち越し。2ゴール1アシストの結果以上にプレーで士気を高めた。
 姜 ――
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大木監督 5.5 …相手に走り負け、内容でも圧倒されたが、三平の投入が大当たり。