二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

昇格プレーオフプレビュー「理想は、面白くない試合」

2013-11-29 | 蹴球
 暦の上でもディセンバーを迎える12月1日(日)、Jリーグは2度目の昇格プレーオフ(以下PO)準決勝を迎える。京都サンガは2年連続の3位で“ポールポジション”を獲得。この一戦に臨むにあたり、思うところを書き連ねてみます。

■まず、去年と今年の比較

【PO進出決定時期】
 去年…最終節で引き分けてPOへ(1週間前)
 今年…39節で事実上PO決定(約1ヶ月前)

【POに対するメンタル】
 去年…僅差で2位から転落したという後悔の念
 今年…早くからPOを戦うことは覚悟

【PO直近5試合の調子】
 去年…○○●○△好調だったはず
 今年…○△●●●割と低迷気味

【PO緒戦の対戦相手】
 去年…大分(レギュラーシーズン0勝0分2敗)
 今年…長崎(レギュラーシーズン2勝0分0敗)

【POに対する経験値】
 去年…当然ながら未経験
 今年…苦い思いを経験済み

 以上5項目のうち4項目において、去年よりポジティブな状況にあることが確認されました。特に最終節でガックリときてしまった去年は、長谷部誠的に言えば「心が整っていなかった」。その点、準備期間が十分すぎるあった今年は万全の状態で臨むことが期待できます。リーグ戦終盤はちょっとリラックスしすぎたましたけれども。


■続いて対戦相手・長崎との比較

【得点力】
 京都…■■■■■■■68得点(リーグ4位)
 長崎…■■■■■  48得点(リーグ16位)

【守備力】
 京都…■■■■■46失点(リーグ3位)
 長崎…■■■■ 40失点(リーグ1位)

【今年の対戦】
 第15節 長崎●0-1○京都
 第35節 京都○2-0●長崎

【現在の調子】
 京都…○△●●●4得点6失点
 長崎…●○○●●3得点4失点

【経験値(J1昇格)】
 京都…J1昇格(降格も)多数
 長崎…ピカピカの1年生

【経験値(監督)】
 京都…大木監督・昇格1回(甲府/入替戦勝利)
 長崎…高木監督・昇格1回(横浜FC/自動昇格)

【マスコット】
 京都…パーサくん (マスコット総選挙36位)
 長崎…ヴィヴィくん(マスコット総選挙11位)

 以上7項目を分析すると、実績も相性も京都の優位で、完敗しているのはマスコットくらい。注目する点はやはり長崎の得点力の低さで、逆にこの総得点でPOに入れたのはいかに僅差の試合をモノにしてきたかを物語る。ちなみに長崎の40得点のうち1/3の13得点が75分以降。粘り強いチームであることを裏付けますが、京都はさらに終盤に強くて25得点(1位/22クラブ)。ちなみに長崎はここ2試合連続ノーゴール中です。


■POの魔物~下位しか勝ってないよ伝説~
 去年のPOで1つわかったことがあります。それが「引き分けの場合、年間順位が上位のクラブを勝者とする」というルールによるバランスの傾斜。上位は引き分けでもOK=つまり0.5点のアドバンテージは、上位に有利なルールと思いきや、それが下位に精一杯力を出し切らせる強烈なスパイスになりました。捨て身になってしまえば劣勢の軍でも大軍を破ってしまえるのは、背水の陣とか窮鼠猫を噛むなどといった言葉が示す通り。そうでなくとも長崎は元々貪欲に喰らい付いてくるチーム。それを踏まえて、魔の0.5点を持っている京都はいかに戦うべきでしょうか。


■現在の京都の問題点
 今の京都にとって一番気がかりな事は、やはり3連敗中だという点。原因は割と明確で、点が取れないから。これはシーズンを通しても言えることで、1試合で7点・8点奪える攻撃力があったかなかったかが、1位2位と3位を分けた差だったと断言できます。攻撃力不足はシーズンを通しての課題なので、急に改善するとは思えません。サッカーというのは上手くできているスポーツで、前に重心をかけるとどうしても後ろが手薄になってしまう。点を獲りに前に出て、逆に奪われてしまうということだけは、POでは一番避けなければいけないこと。まぁ当たり前のことですが。


■理想的な試合展開は「面白くない試合」
 POで魔の0.5点を持ってる側にとって大事なのは、攻撃よりも守備。極端なことを言えば、京都は無失点ならば得点0でもJ1へ昇格できるのです。守備面に注目すると、今年のキーポイントになるような試合がありました。それが第15節の長崎戦。何とか守って福村貴幸のFKがオウンゴールを誘って辛勝したという大変評判の悪かったゲームですが、拙者はこのゲームを高く評価しています。相手に主導権を握られても粘り強く腰を据えて守り、ファンタスティック度ゼロ、エキサイティング度ゼロでも現実的な判断を遂行した…「もう一度見たくなる面白いサッカー」を標榜する大木サッカーとは対極のような内容で物議を醸しながらも、そこには去年欠けていた強かさがありました。今年のPOで京都がまず目指すべきは、無失点。無失点が達成できるならば無得点でも構わない。それくらい割り切って「面白くない試合」ができれば理想的。(付言しておくと「引き分け狙い」とか「かたつむり大作戦」とは違います)


■注目プレイヤーは三平和司と内野貴志
 散々いろんな所で名前が出ている通り、プレーオフに出場して2つ勝ち抜いたことのある選手は、今回の進出4チームの中では三平だけ(長崎の井上は昨年出場なし)です。勝者としての経験値だけでなく、通常とは異なる緊張感のある一発勝負には三平(と姜成浩)の底抜けの明るさは決してマイナスにはならないはず。プレー面でいえば、ゴール前に入り込むタイミングが合うかどうか。三平の場合中央に張ったり、中に早く入りすぎてマークを受けてしまうと持ち味が消えるので、相手の視界の外から入ってきてピンポイントで合わせるプレーを出してほしいもの。ここ最近はチャンスで外しまくってますが、大一番では“持っている男”だと期待します。
 もう1人注目する選手を挙げるとすれば、内野貴志。リーグ終盤に内野を使えたのはとても意味があったことで、たとえ先発でないとしても、守りきりたい場面でハイボールに強い内野を投入する選択肢を計算できるようになりました。特に長崎が“アジアの大砲作戦”に出てきた時には、地対空要塞・内野の存在は心強いことこの上ありません。去年の大分の林丈統がそうだったように、レギュラーシーズンで思うように活躍できなかった存在、あまりチャンスがなかった存在が躍動する流れになれば最高です。そういう意味では宮吉拓実も、ここで大仕事をしてほしいな、と最後に個人的な願望。


「必昇」を背負うのは、やはりこの男!