茶語花香

人生は旅なり。
中国茶をはじめ、花のある暮らし、読書、旅などを中心に、日常の出来事を綴ります。

『深入大吉嶺 探尋頂級荘園紅茶』

2017-07-07 10:42:34 | 本・映画・舞台

ダージリンの世界へ誘い込む。

Clonal茶樹をメインに、五種類の茶樹からブレンドしたファーストフレッシュ。
淡白な味わいで、口に入った瞬間の感覚と変わらない。やがて香りが口腔に咲き始め、キリリとした繊細な甘みがさざ波のように広がる。波紋の力加減が徐々に強くなり、絶え間なく味蕾を押し寄せてくる。
そして悠長な甘みが戻ってきた。まるで颯爽なそよ風が青々とした高原を吹き抜け、白い野花の咲き誇る野原をかすめて過ぎていき、霧の立ち昇る寒い杉林を行き来し、最後に蜜たっぷり含んだきいろ小花畑へと飛びかかった。

(本より抜粋Puttabong Tea EstateのクィーンQueen)

ダージリンの自然風景をうまく溶け込みながら、茶湯の深みを比喩し伝える。達筆だ。

このような本、翻訳の意欲を掻き立てられます。

目を瞑ってどんな味わいのお茶か
想像をかき立てたくなる。

片手に本、片手に友人がくれた美味しいダージリンファーストフレッシュ。
途轍もなく楽しい時間だ。

ダージリン町の歴史、地理、文化
荘園の人達の暮らし
荘園ごとおすすめのダージリンティーの紹介
中国語なんだけど、おすすめの一冊。
著者は台湾麗采蝶茶館の二人のオーナーで、
そこにも訪ねてみたくなった。




新たなチャレンジ-『茶味的初相』の翻訳

2014-12-14 14:17:18 | 本・映画・舞台
                         
               「茶味的初相」(2012年出版 李曙韻著)

手元に届いたばかりの書籍。
台湾茶人李曙韻氏の初エッセイ。

カバーの写真は、乾燥したヘチマの断面でできている茶壺の敷物。茶汁が染み込んだ。

題の「茶味的初相cha2 wei4 de chu2 xiang4」は、
風情が漂う素敵なタイトルです。

そもそも、中国語の「茶味」とは何だと思いますか。
茶の味だと理解するのが普通ですけれど、
本書では、「茶人のなすべき素質や品格」と述べています。

そして「初相」という言葉は、
実に想像の余白を秘める表現です。

茶人が必要とする眼(かなめ)
茶席における要素
果てもなく長い茶の道のりの極意
古くからある茶道具一つ一つのもつ物語

本書の醍醐味。

お茶の専門書とは違い、エッセイとして綴られた本書は、
時には人や茶器への愛しい気持ちを、
時には示唆に富む綴りを。

淡々とした文脈は、肌で茶人の生き様を感じ取ります。
中国古典文学や日本の茶文化にも大変精通する著者
本書でたくさんの事を教わりました。

ここまできて、なぜか「日日是好日」を読んだ時の感動が蘇ります。
「茶味的初相」は、それとは異なる筆致ですけれど、
「日日是好日」以来の感動を頂きました。

実は、「日日是好日」は、初めて自分の手で中国語に訳してみたいと
脳裡をよぎった書籍です。
その後、すでに翻訳された中国語版の存在を知り、
原書と照らし合わせて読みふけていた日々がありました。

目の前の「茶味の初相」は...
「日々是好日」に匹敵するほど、
翻訳の意欲を掻きたてる一冊です。

まだ拙い自分と拙い日本語ですが、
好きな本を全書翻訳すること自体は、
自分にとっては今までない新たなチャレンジになります。

そして...
それを2015年の個人目標に掲げたいと思います。
ここまで宣言しましたら、もう後は引けませんよね(笑)

ブログを見て頂いている方々、
翻訳版を読んでみたい方は、
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ありがとうございます。
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花について-「風姿花伝」読書感想

2014-10-12 09:53:32 | 本・映画・舞台

ようやく読み終えた風姿花伝の現代語訳版。
その風(伝統)を得て、心より心に伝えていく花として、「風姿花伝」書名の由来らしい。

民衆芸能申楽を、美と幽玄を主とする能へと、
昇華させた室町時代の世阿弥は、
稀代な能芸者らしい。

「風姿花伝」をはじめとする
二十一冊にも及ぶ能役者の心得を綴った彼は、
きっとものすごく繊細なお方。

七歳の初稽古から、年齢に応じた稽古の心得を綴った「年来稽古條々」の章では、人間の生きざまを綴られた気がする。

無邪気と見る子どもの初花
若さゆえの一時の花
そして...まことの花


「風姿花伝」では、「花」をキーワードに。世阿弥生涯の著作では、この「花」の探究と解明のためになされたという。

ここまで考えたことのなかった、多岐な意味がもつ「花」という言葉の奥義。

もの珍しさの花
花を、咲かす
花を、知る


色々なことが、「花」という粋の言葉に繋がる。

今は、花(華)のある茶席を想像してみた。

と同時に、能という伝統芸を、観てみたくなった。

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映画「利休にたずねよ」

2013-12-19 09:41:59 | 本・映画・舞台

なんとなくアウトドアがしづらくなったこの寒さの中、映画「利休にたずねよ」を観てきました。

千利休。茶道の美の真髄は、この男をぬきでは語れません。英語にもなっているWabi-Sabiの世界を理解するには、まず利休を理解しなくてはならないからです。

わずかながら知っている利休の逸話の中、一番心が打たれましたのは、秀吉と利休との間にあった朝顔のストーリーです。秀吉様は、利休の庭に咲き誇る朝顔の好評を聞きつけ、それを観にくるために利休の茶室に訪れました。ところが、利休は、君主の秀吉のために、庭中の朝顔を一つも残さず摘み取りました。がっかりした秀吉が、茶室に入ると、床に綺麗に咲く一輪の朝顔が目に飛びつきます。一輪ゆえに際立てられた朝顔の美しさに秀吉は深く感動したといいます。利休ならではの究極のおもてなしです。

映画にはその逸話はでませんでした。代わりに、あまり知られていない利休さんの美への追求の場面がいくつかあって、映画の一つの見所です。

利休役を演じるのは海老蔵さん。さすが歌舞伎俳優、立ち振る舞いが美しい。利休の妻役を演じるのは、女優の中谷美紀さん。中谷美紀さんのこと、今までもけっこう好きで、和服の似合う美人ですね。

歴史上、利休には前妻と後妻がいて、後妻の宗恩自身も茶道に精通し、利休に新しい袱紗さばきを提案できるほどの素晴らしいパートナーでした。

映画では、利休の娘が秀吉に秀吉の側室として申し込まれた時に、利休の妻は、ずばり断りました。

究極な美を追求し、茶室作りおいても秀吉とはまっ逆な思想をもつ利休。二人の確執が深まり、結局は、秀吉に自分への警戒心を買うことになった利休は、秀吉に自害を命じられて潔く切腹してしまいました。

こういう歴史ものも好きです。

お茶の勉強を通じ、歴史的な出来事を覗くことで、タイムスリップしたような気分です。その時代の人々の暮らしや価値観を覗けた気がして、面白いのです。

実は、中国茶の勉強が楽しいと思う理由の一つもそこにあります。高校生まで中国にいたが、今中国茶の歴史的出来事を勉強する時は、やはり教科書に載っている正統派の歴史内容と、違うアングルから歴史に触れることができ、あの時代に生きた人の気持ちをほんの少し感じ取ることができて楽しいのです。

一人で観た映画「利休にたずねよ」の時間は、至福でした。

12月7日から全国上映中。ぜひ、足を運んでみてください。

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日日是好日

2013-10-01 15:16:33 | 本・映画・舞台

「日日是好日ー「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」(森下 典子)。

 留学をきっかけで、日本での生活は、つい先日で二十一年目に突入する運びとなりました。こんなに長く住みついたのは、100%自分の意志。だって日本大好きだからほかに理由などありません。だけど、実は、いまだに正座が大の苦手。これからもおそらく改善される見込みがないなー(苦笑)。しかし、まだよく分らない茶道の詫び寂びの世界や日本独特な美学に触れると、いつもしっくりくるものがあります。そんな私にとっては、日本の茶道は、神秘的な世界であり、遠くから眺めておきたい世界でもあります。

 茶道のやり方や道具の説明を写真付きで書かれている本も多い中、活字のこの一冊に、私はただ感動します。茶道の向こうの世界をようやく覗けた気がします。

 タイトルの「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」は唐の時代の名禅師が残した言葉らしい。素敵な言葉とうっとりしています。

 著者は二十歳頃茶道の稽古を始め、気がつけば、二十五年間も続いているお方です。

 著者の目を通して見た茶道具、茶花、そして掛け軸にまつわる一つ一つのドラマ、稽古の様子や著者ご自身の心境変化も細々書かれています。著者の経験談を通して、読者側は、まるでバーチャル体験をさせてもらったような気分になります。気がつけば、深く引き込まれてしまった自分がいました。

 お茶の稽古を通して、人生と重なるところも面白い。

 いくつか好きなページを紹介したいと思います。

●がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聞こえる……季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」
●前は、季節には、「暑い季節」と「寒い季節」の二種類しかなかった。それがどんどん細かくなっていった。春は、最初にぼけが咲き、梅、桃、それから桜が咲いた。葉桜になったころ、藤の房が香り、満開のつつじが終ると、空気がむっとし始め、梅雨のはしりの雨が降る...季節は折り重なるようにやってきて、空白というものがなかった。春夏秋冬の四季は、古い暦では、二十四に分かれている。私にとってみれば実際は、お茶に通う毎週毎回が違う季節だった。
●お茶を習っていなくたって、私達は、段階的に目覚めを経験していくでしょうが。だけど、余分なものを削ぎ落とし、自分では見えない自分の成長を実感させてくれるのが「お茶」だ。最初は、自分が何をしているのかさっぱり訳が分からない。ある日を境に突然、視野が広がるところが、人生と重なるんだ。
●お茶を続けているうちに、一滴一滴、コップに水がたまっていたんだ。コップがいっぱいになるまでは、なんの変化も起こらない。やがていっぱいになって、表面張力で盛り上がった水面に、ある日ある時、均衡をやぶる一滴が落ちる。そのとたん、一気に水がコップの縁を流れ落ちたんだ。そんな瞬間が、定額預金の満期のように時々やってきた。何か特別なことをしたわけではない。どこにでもある二十代の人生を生き、平凡に三十代を生き、四十代を暮してきた。
 すぐには分からない代わりに、小さいなコップ、大きなコップ、特大のコップの水があふれ、世界が広がる瞬間の醍醐味を、何度も何度も味わわせてくれる。

 写しきれないほど感動的な綴りばかり。そして綺麗な日本語。一気に読み終わりました。時間が取れれば、もう一度、今度は、日本語を重点において読み直そうと思うばかりです。

 とても苦くてそして濃い抹茶を一服頂いた気分です。著者にお会いしてみたいなーとすら思いました。
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