質問その4
Q 神楽はどのくらいの時間やるの?
御神屋に降る雪/村所神楽
A 神楽三十三番の話をしましょう。
現在、宮崎の夜神楽は、夕方から朝までかけて三十三番が舞われます。一つの演目が、40分から一時間、なかには二時間近くを要する演目もあるので、三十三番を上演するとなると、どうしても20時間くらいかかる。それを短縮したり省略して今では12時間くらいに収まるようになってるけれど、昔、聖徳太子が66個の仮面を作り、その面を使って六十六番の神楽を舞わせたという伝承がある。これが、世阿弥の「風姿花伝」「申楽談義」にも記録されている。当時の話として、その六十六番を遂行するためには、一週間かかる、それではあまりにも長すぎるので短縮したのが神楽三十三番であり、それをもっと縮めたのが能楽の「式三番」であるという。世阿弥は「能楽の祖形は神楽なり」とも言っています。
米良山系の神楽では、まず神迎えの舞「清山」から始まり、少年の舞人が場を清める「花の舞」、剣(つるぎ)による地神鎮魂の舞「地割」の三番を神事神楽といっています。呼称は異なるが、他の地域の神楽もおおむねこのような構成になっている。先にお話した中之又神楽の「鹿倉舞」は地区の鎮守神社の大祭・中之又神楽の夜に奉納されるのですが、それとはべつに中之又では「鹿倉祭り」という狩法神事があり、山中の鹿倉神社で「神迎え」「鹿倉様の舞」「神送り」の三番が舞われます。各地の「宮神楽」などをこの「式三番」を念頭に置いてみるとわかりやすいでしょう。あるいは、この式三番こそが神楽の原型といえるかもしれませんね。
銀鏡神楽「星の舞」
一方、東米良(西都市)の銀鏡神楽では、毎年、12月13日に式一番「星の舞」が舞われて「星宿神=土地神=宇宙根本神」を迎える。そして次の日の夕刻、「猪頭の奉納」「式二番・清山」から始まった神楽が、翌14日朝まで舞い続けられ、2時間ほどの休憩時間を経て狩法神事「シシトギリ」とそれに続く「神送り」でようやく、午後1時頃、神楽33番が終わる。さらに翌16日の午前中に銀鏡川の河原で狩猟儀礼「シシバマツリ」が行なわれる。すなわちすべての神事・神楽を終えるのに4日間 (12日の準備・土地神祭りまで入れると5日間) を要するのです。ここには、「神楽66番」の謎を解く手がかりがあると僕は思っています。
宮崎の平野部から日南海岸へかけて行なわれる「昼神楽」では、「田造り」「田植え」「収穫」等の稲作儀礼(作祈祷神楽という)を中心に12番くらいを5~10時間程度で演じる例が多くなっていますが、もともとは三十三番を伝えていた、という伝承があるので、これも短縮形でしょう。
神楽の夜は更けて/高千穂秋元神楽
宮崎の夜神楽では、およそ12時間~20時間くらいが基本的な上演時間だと思ってもらっていいです。観客数の減少などで各地の神楽が昼神楽に組み替えられていくなかで、「夜を徹して神楽が舞い続けられる」という上演形態が分厚く残っているということも宮崎の神楽の貴重な財産です。
神楽の朝・高千穂押方五ケ村神楽
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