交差点で信号待ちをしていると、
近くにいた親子連れから、こんな声が聞こえてきました。
「〇〇ちゃん、よく見ておきなさい。
しっかり勉強しないと、あんな仕事にしか就けないんだからね」
親子連れの視線の先には、
ヘルメットに作業服姿の若い男性が立っていました。
職業差別でしょうか?
親の価値観の、子供への押しつけでしょうか?
確かに「あんな仕事」という物言いは、子供の教育上好ましくありません。
どんな仕事でも、そこで働く人たちは、
社会を構成する大切な役割を担っているのですから。
しかし一方で、この親の言葉は真実でもあります。
人は誰だって体力的にきつい仕事や体が汚れる仕事、
危険な仕事はやりたくないし、わが子にさせたいと思う親もいません。
そういう意味では、学歴という狭義においてだけでなく、
資格取得や専門知識といった広義での勉強という点において、
この親の言ったことは、決して間違いではありません。
「自分のやりたいことを見つけよう」
「自分のやりがいを大切にしよう」
「自分の得意なことを伸ばそう」
そうやっていつの頃からか、日本の学校教育は、
子供たちを学歴社会や受験競争などから遠ざけたい一心で、
シビアな現実を教えることから目をそむけてきたような気がします。
「嫌なことを我慢してすることはない」
その結果、子供たちから失われたのは、
どんな仕事に就いてでも、自分の力で生きていくという覚悟、
自立する精神です。
「やりたい仕事が見つからない」「やりたい仕事に就けない」
そんな理由で職に就かず、生活費に困窮する若者にさえ、
この国は扶助の手をさしのべてくれます。
しかし、そんな史上例のない社会福祉政策が、
いつまでも持続できるわけがありません。
ましてやこれを持続させるために、
移民の受け入れが必然などと言う政治家は、
本末転倒もいいところです。
本当に子供の幸せを願うなら、
現実の社会の仕組みと厳しさを教え、
「自立の覚悟」を持たせることではないでしょうか。
私ですか?
歳を取るたびに、
親の言ったことが身に染みる今日この頃です。