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くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

「日本に自衛隊がいてよかった」

2011-12-01 21:48:00 | 書籍の紹介
率直に書きます。

「〇〇君のお父さんの仕事は、人殺しの練習をすることです」
教室で児童に向かってそう言い放った日教組の教員がいたそうです。

「憲法に違反している団体だから、自衛隊が配る水はもらってはいけません」
阪神・淡路大震災では、そう指示した左派の教師がいたと言います。

しかし、東日本大震災では、
救援活動をする自衛隊に対し、そんな言葉を放つ人間は皆無でした。
そんなことを口にすれば、たちまち袋叩きにあいそうなほど、
東日本大震災の被害は想像を絶する凄惨なものでした。


「日本に自衛隊がいてよかった」 桜林美佐 著 / 産経新聞出版 刊

どんなに批判されようが、賞賛されようが、自衛隊は自らを語りません。
彼らは「行け」と言われたところに行き、「やれ」と言われたことをやるだけです。
なぜなら、それが軍隊であり、そうでなければミッションを完遂することはできないからです。
しかし、その中にいるひとり一人は、私たちよりも厳しく鍛えられているとはいえ、
心と感情をもった同じ人間です。

この本は、そんな黙して語らぬ自衛隊に代わり、
東日本大震災に立ち向かった隊員の姿を描いたノンフィクションです。

私たちは、災害が起きるたびに派遣される自衛隊の活躍を見て、
「銃火器類はもっと減らして、災害復旧・救助に特化すればいいのではないか」
という論調になりがちです。
また、それを裏づけるように、
一般国民へのアンケートでは、自衛隊に最も期待することとして、
「災害時の復旧・救助活動」 が50%以上を占めているといいます。

しかし、勘違いしてはいけないのは、
自衛隊は災害復旧・救助活動の訓練をしているから
災害で活躍できるわけではありません。
自衛隊員は「戦争」という極限状態を想定して訓練しているからこそ、
どんなに過酷な状況であっても、
警察官や消防隊員には真似できない活動ができるということです。

災害復興・救助活動では「敵の弾」は飛んできません。
だから「死ぬかもしれない訓練」を繰り返している自衛隊員は、
ある意味「余力」をもって救助活動にあたることができるのです。
また、自衛隊は戦場を想定し、衣食住のすべてを自分で賄う自己完結組織です。
だからどんな荒廃した被災地であっても、乗り込んでいって活動ができるのです。

したがって、今回のような未曾有の災害時に、
警察官や消防隊員では不可能な復旧・救援活動を期待するのであれば、
「軍隊」としての自衛隊の存在も認める必要があります。

換言すれば、冒頭に紹介した心無い教師たちの発言は、
災害復旧・救助隊としての自衛隊の存在をも否定する、浅薄な考えに過ぎません。

この本からは、日本を、そして人の命を守り、
救おうとする自衛隊員ひとりひとりの想いがひしひしと伝わってきます。
そんな自衛隊に、冒頭の心無い教師たちも守られていると思うと、
腹立たしさすら覚えます。

「自衛隊が感謝されるのは、国民が不幸なときだ。決しておごるなよ」
多くの人に期待され、士気の高まる部下に向かって、指揮官が戒めます。
なんと腹の底に響く言葉でしょう。

国民の命を守るために自衛隊があります。
そして、彼らはそのことをよく自覚しています。
決して命令だったという理由だけで、あのような過酷な状況下で、
被災者の救出や遺体捜索が遂行できたわけではないことがわかります。
一万数千人もの同胞の命が失われた「戦場」を目の当たりにた自衛隊は、
きっとこれまでよりも、ひとまわりもふたまわりも強くなったでしょう。

自衛隊が発足して半世紀以上がたちます。
その間、今日に至るまで自衛隊は戦闘で人の命を奪ったことはありません。
その間、今日に至るまで自衛隊に救われた同胞の命は数知れません。
やはり、「日本に自衛隊がいてよかった」のです。



上司と必ずうまくいく方法とは?

2011-11-26 23:05:43 | 書籍の紹介
転職する若手社員の半数以上が、
「職場の人間関係」を理由にあげているそうです。
特に、上司との関係がうまくいかないといいます。


「人は上司になるとバカになる」 菊原智明 著 / 光文社 刊

一社員だったときは仕事もできて、面倒見の良い、頼りになる先輩だったのに、
課長や部長になったとたん、急に嫌な上司になってしまうことは珍しくありません。

そんな上司にどのように対処し、どうつき合っていくか。
この本では、そんな上司に悩む社員のための対処法を紹介しています。
嫌な上司のタイプを五つに分類し、長々と解説していますが、結論はひとつです。

①嫌な思いをしても反論せず、その場はこらえて言うとおりにする。
②そして仕事で実績をあげ、上司の信用と信頼を獲得する。

たったこれだけです。
そうすれば、たいていのことには上司は目をつぶり、口を出さないようになります。
残念なことですが、会社は 「何を言ったか」ではなく、
「誰が言ったか」が重視されることが多いところなのです。
いかにもトヨタホームで8年間トップセールスマンに輝いた著者らしい言葉です。

身も蓋もありませんが、現実であり真実です。

管理職になったとたん嫌な上司になるような人は、
部下のことが嫌いになったわけでも、憎いわけでもありません。
平社員のときにはなかった、組織に対する責任や役職への保身がそうさせているのです。
したがって、その点を安心させてあげればいいというわけです。

「そういう上司だと思って聞き流す」
「仕事に打ち込み、成果が挙がるその日まで虎視眈々と準備を続ける」
そんな言葉には、あたりまえすぎてあきれるのを通り越し、怒りさえ覚えてしまいました。

それは結果論であって対処法ではありません。
読者が聞きたいのは、そんなありきたりの言葉ではないはずです。

少なくとも、上司との人間関係に悩み、
藁をもつかむような思いで本書を購入しても、ここには「救い」はないでしょう。
そんな読者は、「詐欺だ!」と憤慨するかもしれません。

ただ、そんな人間関係に悩める読者も、
このような上司はどこの会社にもいるということを認識すべきでしょう。
学校であれば、自分と合わない人・嫌いな人とはつき合わないようにすることができます。
しかし、会社ではそういうわけにいきません。

生まれ育った場所も、年代も、立場も違う人の集まりが会社です。
むしろ気の合う人より、合わない人の方が多いかもしれません。
人間関係を理由に辞めていたら、一生転職を繰り返さなければなりません。

相手を変えようとしても、人間関係はうまくいきません。
だから自分を変える。
その究極の方法が、「仕事で実績をあげる」ことだということです。

やっぱり、身も蓋もありませんね。
ちょっとがっかりした本でした。



リスク管理の原則

2011-11-12 23:21:23 | 書籍の紹介
「リスク管理」の原則は、
「最も悲観的な状況」と「最も楽観的な状況」の両方を予測し、
対応策を検討することにあります。

たとえば、今回の福島第1原発事故のように、
「すべてのバックアップ電源が喪失する事態は想定していなかった」というのは、
正しいリスク管理のあり方であったとは言えません。

リスク管理を行なうにあたって、専門家の意見を聞くときには、
担当者は、ついつい楽観的な見解を受け入れて同調し、
悲観的な専門家の意見は否定したくなってしまうものです。

しかし、本当に有効なリスク管理を行なうためには、
悲観と楽観の両極の見解を冷静に受け入れし、対応策を検討しなければなりません。
どちらか一方が欠けたら、それは十分なリスク管理であるとはとは言えません。

以上は、先日受講したリスクマネジメント講習会での講師の言葉です。

そういう意味では、
この本は、福島第1原発事故の放射能汚染の影響に関する、
「悲観の極」にあるものです。

「2015年放射能クライシス」 武田邦彦 著 / 小学館 刊

ご存知の方も多いと思いますが、著者である武田邦彦氏の説は、
インターネットやマスコミなどでも、賛否両論があります。
武田邦彦氏そのものをトンデモ科学者と揶揄する人もいます。

認めたくないものを切り捨てることは簡単です。
私たちは希望的な予測を信じ、その対極にある絶望的な予測には、
どこかに否定の根拠を見つけて耳目をふさぎたくなります。

確かにこの本に書かれた暗澹たる未来が、必ずやってくるとは言い切れないでしょう。

しかし、それは政府や御用学者たちの「ただちに健康に影響はない」とか、
「この数値であれば問題ない」と言った発表が、
本当に信憑性のあるものかどうか、将来でなければわからないのと同じことです。

私たちがすべきことは、両極の意見を聞いて、
どちらか正しいと思うほうを選び、信じることではありません。

あらゆる可能性を認識し、備えることです。




決してマネできないクレーム対応

2011-10-26 22:36:48 | 書籍の紹介
昔、「ミンボーの女」という映画がありました。(1992年 伊丹十三監督)

暴力団にたかられ、食いものにされていることが常態となっているホテルを舞台に、
従業員たちが民事介入暴力専門の女弁護士(略してミンボーの女)と力を合わせ、
不当要求を撃退して、正常なホテルに立て直していくというストーリーです。

この本を読んで、真っ先にその映画を思い出しました。


「日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人」 三輪康子 著 / ダイヤモンド社 刊

まさに、事実は小説(映画)よりも奇なり。
反社対応にもすごい世界があるものです。
映画以上に過激な暴力団との対峙に驚かされました。

著者は、新宿歌舞伎町にあるビジネスホテルの女性支配人です。

彼女が支配人として着任したとき、
ホテルの駐車場は暴力団の車で不法占拠され、
ロビーでは白昼堂々、カツアゲが行われているような状態だったそうです。
警察に電話をしても「ああ、犯罪者が泊まっているホテルでしょ」
と、真剣に取り合ってもらえなかったと言いますから、
完全に暴力団関係企業の扱いです。

そこで彼女は、暴力団におびえながら働く従業員を守り、
一般のお客さまが安心して宿泊できるホテルにするため、
孤軍奮闘の闘いを始めます。

タイトルだけを見ると、
不当要求を繰り返す反社会的勢力や悪質クレーマーに対し、
どう立ち向かっていくかを示したビジネス本のようですが、
むしろ、読み物としての要素が強く、
さまざまなエピソードが臨場感たっぷりに語られています。

宿泊を拒否され、日本刀を振りかざす相手と対峙したり、
不法駐車をやめさせようとして殺気立った相手に襲われ、
あわやというところで駆けつけた警察官に救われたりと、
まさに映画さながらのエピソードが満載です。

「信念が、理不尽な状況から自分を救う」
著者はそう語りますが、決して真似のできる対応ではありません。

とにかく著者(支配人)を筆頭に、
責める方も、守る方もキャラクターが際立っています。
この本、きっとドラマ化のオファーがあるのではないでしょうか。



「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」

2011-07-31 19:07:00 | 書籍の紹介
外国で人気があるのは、マンガやアニメ、日本食や日本製品だけではありません。

英国BBCが世界16カ国を対象に調査する「世界に良い影響を与えている国」では、
日本が三年連続トップになり(2011年は4位)、
米国旅行会社が世界4万軒のホテルを対象に調査する「ベストツーリスト」でも、
日本人旅行者は三年連続で1位(最優良観光客)に選ばれています。
また、ビザ(入国許可証)なしで入国できる国が一番多いのも日本人だそうです。

また、欧米と対立することの多いイスラム諸国とも、
日本は敵対することなく、友好な関係を保っています。

それはなぜでしょうか。
残念ながら、この本にはその答えは記されていません。
率直に言って、タイトルに期待をして読むと、大きな肩すかしを喰らいます。

 竹田恒泰 著 / PHP研究所 刊

「日本人の気質や文化を培ったものは何か?」
それがこの本の主題であり、それは「天皇制である」というのが著者の答えです。

憲法改正や死刑制度存廃などと同じように、
さまざまな考え方や意見のある天皇制ですが、
「なるほど、そういう見方もあるのか」と気づかされます。

諸外国では、国王は国民を直接統治し、
統治者が変われば、国家そのものが変わりました。

日本の天皇制は、鎌倉幕府が開かれて以降、明治維新までの670年間、
征夷大将軍という官職で政権を武士に委ね、武家社会による統治が続きました。
その間、統治者たる将軍が交代しても、常にその上には朝廷があり、
天皇は畏敬される存在として連綿と続いてきました。

天皇の住まいであった京都御所には、高い城壁も、深い堀も築かれていません。
それを見ても、日本の天皇が西欧や中国の王や皇帝とは異なる存在であったことを示しています。

古代にまで遡れば2000年以上にわたって続いてきた天皇制が、
われわれ日本人に与えてきた影響は、現代社会で教育を受け、
さまざまな価値観の多様性を知った私たちには、
想像もできないほど大きなものがあったに違いありません。

現代の日本社会に天皇制が必要か否かを論ずる前に、
明治維新から敗戦に至るまでの天皇制を近視眼的に見るのではなく、
長い日本の歴史と文化の中で、天皇制が日本人に与えてきた影響について、
中立の立場で考えてみる必要があると思った一冊でした。