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くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

「中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!」

2011-07-17 23:59:59 | 書籍の紹介
会社にユニフォームを納入している衣料品会社が、
製品の値上げの要望書を持ってきました。

値上げ幅は、現価格の10%~20%。
理由は原料価格と製造している中国の人件費の高騰だそうです。
すでにその会社では、中国での生産に見切りをつけ、
工場をタイやヴェトナムへ移転させる計画が動き始めているといいます。

ただ、品質や縫製技術など、
中国で何年もかけ、ようやく日本国内でも通用するレベルにまで達したのに、
また別の国で一からやり直しだと思うと、なんだかがっくりする・・・
そのようなことを来社した営業担当者が言っていました。

日本を始めとする世界中の企業が、
中国に設備投資をしたのは、製品を安く製造できるからに他なりません。
言い換えれば、安くない中国製品は誰も買わないということになります。

そんなことがあった先週ですが、
偶然というか、たまたまこんな本を読んでいました。

「中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!」 三橋貴明 著 / ワック㈱ 刊 

本書では、「日本経済は中国なしでは成り立たない」という、
マスコミや一部の経済評論家の論調について、
大きく次の三つについて、具体的な数字で検証しています。

1)中国への輸出がなくなったら、日本経済は大打撃を受けるのか?
2)中国からの輸入がなくなったら、我々の生活や経済は大変なことになるのか?
3)中国へのこれまでの多大な設備投資がご破算になると、日本は大損害を被るのか?

細かい数字は転記しませんが、
2009年の対中国・香港向け輸出額は、日本のGDPのわずか2.79%。
例えれば年間500万円の利益をあげている会社が、
顧客の一社が倒産して14万円の売上が減少したこととほぼ同じです。

また、中国は世界人口の5分の1を占め、
経済発展とともに、新しいマーケットとして有望だとする意見もあります。
しかし、いまの中国の格差社会と政治体制下においては、
今後中国国民の多くが、日本のように中産階級になるなどということはありえません。

逆に、中国からの輸入については、日本のGDPの2.44%。
しかも農産物や安価な工業製品が多く、中国製でなければだめというものはありません。
日本の産業の根幹をなす石油などの鉱物性資源のほとんどは、
中東などの中国以外の国から輸入されています。

そして中国への投資残高は、日本のGDPの約1%。
もし日本が中国内の資産を接収されるなどして失ったとしても、
損害には違いありませんが、日本経済が破綻するほどの影響ではありません。

そして何より、「世界の工場」を自負している中国自身が、
資本財(原料や半製品・キーパーツなど)を輸入し、
国内の工場で最終消費財(完成品)にして輸出するという産業構造になっています。
日本は中国製品の輸入国であると同時に、このキーパーツの輸出大国であり、
日本との輸出入が滞ったら、一番に困るのが中国なのです。

前述の衣料品メーカーにとっては、
中国はもはや魅力的な生産拠点ではなくなったようです。

マスコミはあいかわらず、
中国への「依存」「依存」と書き立て、中国の顔色ばかりを気にしますが、
実際の現場では、この衣料品メーカーのように、中国脱却に動き始めているのかも知れません。



「ドロボー公務員」その2

2011-06-11 19:57:00 | 書籍の紹介
先日、ブログで紹介した本の続きです。
続編があるわけではありません。

本書のタイトル「ドロボー公務員」は、
「ブログ市長」「独裁者」とマスコミなどに書かれた、
鹿児島県阿久根市の竹原信一前市長の発言に由来しています。

「市民の平均給与は200万円、でも市職員の過半数が年収700万円以上。
 市の税収は10億円しかないのに、人件費だけで24億円が出て行く。
 公務員はドロボーだ」

竹原前市長はこう言って、全市職員の給与をブログで公表し、
市職員と市議会議員の賞与を半減、議員報酬を年俸制から
議会開催日だけに払う日当制にする案を議会に提出。
議会を猛反対を押し切って、「専決処分」という強行策に出てリコールされ、
わずか864票の僅差で落選しました。

阿久根市民ではない人々は、この報道を他人事のように見ていましたが、
地方自治体の政策や制度も、
本当は私たち国民全体に大いに関係している問題なのです。

阿久根市では、税収が10億円にもかかわらず、
市職員の給与だけで年間24億円が支出されています。
不足している分は国などからの交付金、
すなわち国民が納めた税金で賄われています。

つまり地方公務員の厚遇も、それぞれの自治体住民だけの問題ではなく、
国家公務員やその外郭団体における公務員制度の問題と同じように、
日本全体の問題として関心を持たなければいけないということです。

ちなみに、国家公務員の人件費は約35兆円(2006年)。
これに対して税収は約30兆円ですから、
阿久根市を笑っている場合ではありません。

仮に民主党が公約に掲げた公務員給与の2割削減の半分、
1割が削減されただけでも、3兆円の財源が確保できる計算になります。
3兆円あれば、来年度は年金のための追加国債を発行せずにすむといいます。
民間企業であれば、ここ数年で給与の1割や2割削減された会社はザラです。

公務員が率先してこそ、
そして税収に応じて臨機応変に対応できる給与制度にしてこそ、
真に法に守られるべき、公のために創られた身分というものでしょう。

国家公務員の制度改革は潰されてばかりですが、
ようやく大阪府を初めとして、地方自治体から改革の動きが起こり始めています。
阿久根市も、方法を間違わなければ公務員改革の良い先例になったはずです。
公務員も昔のような「オイシイ」仕事ではなくなる日が遠くないかもしれません。

しかし、それでも多くの若者が、将来つきたい職業として、
また、親が子供に将来つかせたい職業として、公務員をあげます。

なぜなら、公務員が自ら既得権を手放すわけがなく、
そのせいで公務員制度改革が頓挫して日本経済が崩壊したとしても、
民間企業のほうが先に悲惨な状況になることがわかりきっているからです。

なぜそう言えるのか。
それは、公務員が職業ではなく、実際は「身分」であるからです。
 

「ドロボー公務員」

2011-06-09 23:55:00 | 書籍の紹介
あまりにも扇情的なタイトルや、
相手を貶めるような表現は、逆に物事の本質を軽々しくしてしまいます。
それが残念といえば、残念な本でした。

「ドロボー公務員」 若林亜紀 著 / KKベストセラーズ 刊

なかなか進まない公務員制度改革。
選挙のたびに公約に掲げられ、
選挙が終われば官僚の意のままに潰されてきた公務員制度改革。

公務員にもいろいろと言い分はあると思いますが、
話半分にしても、本書で明らかにされる公務員の厚遇ぶりには驚くばかりです。

公務員の平均給与は、民間の平均給与の約二倍。
しかも、この十年間下がり続けている民間の平均給与に対し、
一貫して増え続けているのは公務員給与だけ。

不祥事を起しても容易にクビにはならず、
病気で休職中でも三年以上にわたって給料が支払われる。
そんな公務員が、東京都だけで3.000人近く。

出世しなくても「わたり」と呼ばれる慣習で、
出世した場合と同等の「手当」が支給され、
「〇長級」という名ばかり管理職ばかりが増える。

定年退職者の平均退職金は2,600万円。
天下りすれば、成果がなくても1,000万円を超える年収。
一日の手当が数百万円になることもある非常勤の嘱託委員。
退職後は、同じ掛け金でも厚生年金より多く給付される共済年金。

これらすべてが私たちの税金です。
「ノーワーク・ノーペイ」が原則の民間では考えられません。
民間では会社の収益が落ちれば給料は減るし、
病気で休職しても、給与が支払われるのはせいぜい半年間。
その後は無給となります。

それほどまでに公務員の身分は、二重三重に守られています。
このままでは、国民は公務員に搾取され、
公務員によって国が滅びると警鐘を鳴らしています。

「景気が良くても、公務員の給与が上がるわけではない。
 景気が悪くなったからといって、公務員を批判するのはお門違い」
「平均給与が高いのは、民間よりも勤続年数が長いから」

公務員にもいろいろな言い分があるようですが、
厳しいノルマもリストラもなければ、定年まで退職しないのはあたりまえです。
会社の収益にあたる税収が落ちているのに、人件費を抑えず、
税金を上げればよいという発想は、反社会的というのは言いすぎでしょうか。

日本は主要国のなかでは、
アメリカ、フランスに次いで公務員の多い国だそうです。
確かに、親兄弟、友人、隣近所を見渡せば、
必ず知り合いに一人や二人、公務員がいます。

これでは声高に公務員の厚遇ぶりを批判できません。
また、身内の者は公務員制度改革を推進する政治家を支持できません。
これが政治家のみならず、国民からして、
公務員制度改革を遅らせている原因ではないでしょうか。

まずやるべきことは公務員の数を減らすことでしょう。
それも採用を減らすのではなく、不祥事などによる解雇を厳しく適用し、
仕事の実情にあわせてきちんとリストラする。
天下りは完全廃止して、定年できっちりと公務員をやめていただく。
言うは易し、行うは難しでしょうが。

「安定」と「高給」が保証された日本の公務員。
もしかしたら、人類が発明した究極の理想的な職業かもしれません。

【目次紹介】

第1章 民主党への金まみれ選挙応援―官公労からの内部告発
      お札が飛び交う労組の選挙
      選挙違反も補償の対象
      至れり尽くせりの労組の選挙
      労組はいかにして議員に金を渡すのか
      公務員が国民を搾取する時代
第2章 広がる民間との給与格差
      阿久根市長が起こした「公務員給与革命」
      市役所職員の驚くべき厚遇
      議論をしてはいけない議会
      市民たちの本音
      国民の平均年収
      公務員の家の家計簿
      民間準拠のからくり
      公務員給与の引き下げ始まる
第3章 驚くべき税金使い放題天国
      「まともに研究すれば今の労働政策はすべてムダ」
      妻を秘書にして月50万円の給料を払う理化学研究所職員の公私混同
      宝くじが当たらないワケ―賭け金の半分は天下り団体に消える 
      「事業仕分けをひっくり返せ!」
第4章 ギリシャを笑えない―公務員が世界を滅ぼす
      公務員天国ギリシャの財政破綻
      公務員が国を滅ぼす
      日本の公務員は外国と比べて多いか、安いか
      公務員制度と政治
第5章 官民交流を推進せよ
      役所の「ご意見番」、行政委員は時給177万円
      役所の幹部ポストは公募が世界の常識
      都庁職員の甘すぎる処分―痴漢、横領、過失致死の職員はクビにしてくれ
      都庁では働かずに給料をもらっている休職者が2923名
第6章 官僚を公僕に叩き落とせ
      公務員は首長よりも議長よりも力を持つ
      役人は給料を自分で決める
      官僚の公務員制度改革つぶし
      仙谷大臣が財務省に屈した日
      公務員にスト権が与えられるか
第7章 年金財源は公務員家庭が担え
      雲の上の官舎
      民間の倍の休日
      公務員の年金
      年金財源は公務員給与から出せ
第8章 公務員改革なくして未来なし
      責任を問われない公務員
      年功序列廃止、逆子供手当-天下り、退職金、わたり、逆子供手当
      「腐る金」で内需拡大
      公務員の選挙権を剥奪せよ


「一〇〇年前の女の子」

2011-05-21 22:41:00 | 書籍の紹介
この本は少し前に書店で見かけ、タイトルに惹かれて気になっていたものです。
気になった理由は、今年2月に亡くなった祖母が103歳だったからだと思います。
亡くなった祖母は共働きの両親に代わって、幼い頃の私の面倒を見てくれたのでした。

「一〇〇年前の女の子」 船曳由美 著 / 講談社 刊

本書の主人公、寺崎テイは実在の女性です。
彼女は、明治四十二年(1908年)八月十日に、
栃木県足利郡筑波村の高松という、小さな集落で生まれました。

この物語は、テイの実の娘である著者が、
母テイが語った自身の人生や百年前の農村の暮らしや習俗を再構成し、
小説風に綴ったものです。

テイは事情があって実の母親の顔を知らず、父方の祖母に育てられました。
粉ミルクなどない時代、彼女は祖母におぶわれ、もらい乳をして生き延びます。
二歳になるかならないうちから里子に出され、五歳で貧しい農家へ養女に出されますが、
そのあまりに過酷な生活を見かねた実父によって、七歳の年に高松の家に戻されます。

高松の実家に戻ったテイは筑波村の小学校に通い、
教育熱心な祖母の支えもあって足利の女学校に進学します。
卒業後は独立するためにわずか十六歳で上京し、
池袋の叔父の家に下宿しながら昼は働き、夜は専門学校に通います。
昭和六年、専門学校を卒業したテイは就職、その三年後に職場結婚します。

このテイの人生の物語の合間に、
当時の農村の人々の暮らしぶりや行事が散りばめられ、
史料的にもとても興味深いものがあります。

読んでいると、昭和40年代ころまでは、
明治・大正の生活や習慣の名残りがあったことを思い出させます。
それは明治生まれの祖父や祖母が、
まだまだ元気で家族の中心になって生活していたからでしょう。

祖母は90歳を過ぎた頃から、私が帰省するたびに、
何度も同じ昔話を繰り返すようになっていきました。
いま思えば、あれが老人性認知症の前兆だったとわかりますが、
そのときはそんなことは知りもしませんでした。

「その話は聞いたよ」などと言わず、
本書の著者がしたように、もっと話しを聞いておけばよかったと、
いまとなっては思うばかりです。



「女子大生がヤバイ!」

2011-04-24 16:28:46 | 書籍の紹介
この本のタイトルを見たとき、
自然と昨日のブログに書いた女子大生のことを思い出しました。
会社に来た実習生が特異なのではなかったのだと。

「今の女子大生は、とんでもないことになっている」

そんな内容を連想したのでした。

 「女子大生がヤバイ!」 小沢章友 著 / 新潮社 刊

著者は15年にわたって、某女子大で文章講座を受け持つ大学の先生です。
授業では、毎回さまざまなテーマを与え、それについて学生たちが作品を創作し、
授業で読み上げて相互に批評しあうそうです。

それによって赤裸々に見えてくるのは、
イマドキの女子大生のモノの考え方や本音の数々でした。

表面では親友同士を続けながら、実はどこかでウザさを感じていたり、
友だちに嫉妬し、頭の中で実にリアルで陰湿な行為を想像したり。
また、奔放な性体験を妄想し、黒々とした欲望や感情を
あからさまに文章に創作して発表する学生たち。

著者は、10年前の女子学生には、
ありえなかった作品が増えていると記しています。

しかし、読み進めていくうちに、
登場する女子大生たちの感情表現の豊かなことや、
優れた文章力に感心させられてしまいました。

本書に登場する女子大生は、
昨日のブログで書いたような学生とは、
およそ同じ世代とは思えないほど、
感情や表現力も豊かで、生き生きとしています。

メール文章やネット言葉を巧みに操るが、
まともな日本語も満足に使えないイマドキの若者たち。
そんな内容をイメージしていただけに、新鮮な驚きと面白さがありました。

イマドキの若者が使う「ヤバイ」という言葉には、さまざまな意味があります。

本来の「あぶない」という意味のほかに、「こわい」「おもしろい」「おいしい」など、
あらゆる感情表現が「ヤバイ」の一言でかたづけられてしまいます。
あえて言えば、「すごい」と感じたことの感嘆符のようなものかもしれません。

そういう意味では、この本のタイトルは絶妙だと感じました。

タイトルの「ヤバイ」をどう解釈するか。
それは読者次第です。