歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

日本鋳造協会の賀詞交歓会に出席させていただきました

2011-01-18 18:38:59 | ものづくり・素形材
社団法人日本鋳造協会の賀詞交歓会に出席させていただきました。鋳造業界とは長くお付き合いさせていただいていますが、皆さん変わらずお元気そうで何よりでした。
鋳造業界が頑張っているからこそ日本のものづくりが成り立っているという構造は今でも変わりありません。彼らがこれからも発展していくよう、私も微力ながらお手伝いしていきたいと思います。

三条の和釘と伊勢の式年遷宮

2011-01-17 23:53:43 | ものづくり・素形材
 新潟県三条市を訪問した際、興味深いお話を聞きました。

 新潟県の三条地域振興局では高度熟練技能者などを「にいがた県央マイスター」として認定する制度を設けています。このマイスターに認定された三条市の伝統的鍛冶技術の職人のお宅に、数年前に一組の母子が訪れてきました。「息子を弟子にしてください」という母親の言葉に、鍛冶職人は驚きました。日本では数少ない伝統的な技法で刃物を作る職人とはいえ、自分の生計を立てるのが精一杯でとても従業員を雇う余裕がない、と職人は断るのですが、この母子はその後も何度も訪れてきて「息子を大学に進学させるつもりで貯金をしてきました。ですから当分はただ働きでも構いません。息子を弟子にしてください。」とお願いされ、根負けする形でこの職人は若者を弟子にとることにしました。
 とはいえ今の時代にただ働きをさせることは労働法の関係上できません。困ってしまった職人の姿を見た鍛造メーカーがこの若者をパートで雇い入れ、彼は週の半分をこのメーカーで働き、半分を職人の下で修行することになったのです。若者が仕事を覚えていくに従い職人の下で働く日数が増えていき、今では職人の弟子として定着し、給料も貰えるようになったとのことです。

 現在、伊勢神宮では第62回式年遷宮に向けた準備が進められています。式年遷宮とは1300年以上も前から続いている、20年ごとに社殿を造り替え神座を遷す神事であり、古来から伝わる建築の技能伝承の機会としても重要な位置づけにあります。この社殿の建築には和釘という日本独特の釘が用いられるのですが、今では和釘を生産して伊勢神宮に供給できるのは三条市の鍛冶職人たちだけなのだそうです。
 日本古来の鍛冶技術によって作られる製品に対する重要が減り続ける中、技術を守り続けることは容易なことではありません。将来を考えると子息に後を継がせることに不安を覚える職人たちも少なくないものと思います。敢えて職人に弟子入りしようとする若者が現れなければ、式年遷宮という日本の伝統を継続させることは危ういかもしれません。
 社殿をひたすら作り直す式年遷宮があったからこそ、1300年前の木造建築がそのまま伊勢神宮には生き続けてきました。これは世界に誇る日本の文化遺産といってよいでしょう。我が国は政教分離の国ですから、特定の宗教に政府が肩入れすることは好ましいものではないということはわかるのですが、何らかの国の支援があってもよいのではないかと感じます。

田島軽金属を訪問しました

2011-01-16 17:18:59 | ものづくり・素形材
 先週金曜日、埼玉県羽生市にあるアルミ鋳物メーカーの田島軽金属さんを訪問しました。同社は砂型でアルミ鋳物を鋳造しているメーカーで、大型アルミ鋳物では業界トップクラスの技術と設備を擁し、大きなものでは2トンを超えるような製品を作っています。


 製品は少量生産の特殊なものが目立ちます。まず目に止まったのが、社屋の前にあった大きな円形状の鋳物です。こちらはCTスキャンの内部に備わる回転装置の部品で、重量は340kgあります。ちなみにCTスキャンの内部でこの装置は150回/分という高速回転をするのだそうです。


 これらは液晶製造装置の部品で、アルミとセラミックスの複合材(MMC)で出来ています。MMCは大変優れた特性を持つ素材で、アルミ並みの軽さで鋳鉄以上の剛性を有します。このため軽量で高剛性を必要とする(たわみや変形が少ない)、あるいは高速で移動・停止を必要とする(慣性が小さい)チップマウンタや高速プレスなどの精密機械や検査機器部品、液晶や半導体製造装置分野の各種部品に使われているのですが、日本でこのMMCの鋳物を生産しているのは田島軽金属だけなのです。MMCはアルミ溶湯に微小なセラミックスの粉末を混ぜて鋳造するのですが、セラミックスの粉末をアルミ溶湯の内部で均等に分布させるための攪拌技術にノウハウがあるとのことでした。

 
 工場も見学させていただきました。アルミは鉄よりもはるかに引け性が強いため、鉄鋳物とは工程が一部異なるとのことですが、素人の私には鉄鋳物の工場とあまり変わりないように感じました。

 このほか田島軽金属は、従来鋳物に比べて内部品質を大幅に向上させた「ポアレスキャスト(PLC)」、押湯効果を飛躍的に向上させる高周波押湯加熱システム、三菱重工業と共同開発した電動式鋳型反転機など、多くの独自技術を有しています。同社は従業員60人という小さな会社ですが、日本のハイテク産業を支えるすごい会社です。同社のような優れた素形材メーカーはこれからも日本は大切していくべきでしょう。

工作機械を内製する鴻海

2011-01-14 23:14:40 | ものづくり・素形材
 このブログで何回か取り上げていますが、台湾系大手EMSの鴻海(Foxconn)はつくづくすごい会社だと思います。最新号の日経エレクトロニクス(2011年1月10日号)にどこまで広がるのか,社員100万人の「鴻海」圏という特集記事が掲載されていますが、これを読んで「とうとうここまで来たか」という感慨を抱かざるを得ませんでした。かつて6年前の日経エレクトロニクス誌に「2005年度の連結売上高は3兆1056億円。2006年度は約4兆円が目標」と書いてあるのを読んで、凄い会社だなと思いましたが、同誌最新号によると2010年の売上高はなんと8兆円近くに達するとのこと。凄すぎます。
 鴻海の大きな特徴は部品そして金型の内製率が非常に高いことで、そのために導入する製造装置の量は半端なものではありません。同誌最新号にはその具体例が掲載されていますが、その規模のあまりの大きさにため息が出そうになります。

(以下引用)
マシニング・センター
>Apple社の注文をこなすため、ファナックの小型マシニングセンターを実に1万台導入
>オークマの「VTR-160A」「VTR-350A」などを2009年に一挙に200台を購入。日本では、その1/100しか売れない。
SMTマシン(表面実装機)
>ソニーマニュファクチャリングシステムズから2008年に11億台湾ドル分購入
射出成形機
>住友重機、東洋機械金属、ファナックなどから8000~1万台を購入
(引用終わり)

 このため日本の工作機械メーカー、設備メーカーにとって今や鴻海は「足を向けて寝られないといえるほど」(日経エレクトロニクス誌)の得意先になっています。しかし記事によると鴻海はコスト抑制のために製造装置の内製を進めており、既に一部の装置は2010年から米国メーカーのブランド名を付けて外販され始めているのだそうで、日本企業としてはうかうかできません。
 そこで思い出したのが、東京大学名誉教授で、素形材技術の研究者としても有名な中川威雄氏のことです。彼は鴻海社長のテリー・ゴー(郭台銘)氏と親密な関係にあります(こちら)。鴻海の製造装置の開発には、日本人技術者も少なからず関わっているものと思われ、中川氏もその一翼を担っているものと想像されます。実際、鴻海が出願した特許の中には発明人の欄に彼が名前を連ねているものが見られます(こちらこちら)。

 巨大な資金力と世界最高レベルの頭脳を擁し、エレクトロニクス製品の加工組立という領域を大きく超えて成長しようとする鴻海と、日本企業は今後いかにして共存していけばよいのでしょうか。多くの日本企業にとって大きな課題であるように思います。

養老鉄道のサイクルトレイン

2011-01-13 18:09:52 | Weblog
 
 地方出張では目的地までの現地の移動にタクシーを使うことが多いのですが、今日の目的地である工場は幸い駅から徒歩で行ける距離にあったので鉄道を使うことにしました。
 今回乗車したのは、揖斐から大垣を経由して桑名まで走る養老鉄道です。近鉄のお古とはいえ立派な車輌を使っていますし、通勤・通学の時間帯はかなり利用客がおり、地方のローカル私鉄にしては結構頑張っていると思います。また、沿線には桜の樹が多く植えられており、春の桜のシーズンの沿線風景は実に美しく、「撮り鉄」の方々にも人気のある路線であるそうです。


 また、現地で初めて知ったのですが、この養老鉄道は「サイクルトレイン」という自転車の車内への持込みを認めている車輌を用意しています。これは沿線住民の利便性向上だけでなく、沿線にサイクリングコースが多く、訪れる観光客に対するサービスの一環なのだとか。大垣駅から自転車を持ち込んで乗車する利用客を何人か見かけましたが、確かに便利だろうなと思いました。首都圏でもこうしたサービスを導入して欲しい気がしますが、混雑の度合いが養老鉄道とは違いますから無理でしょうね。

大垣精工株式会社を訪問しました

2011-01-12 20:14:33 | ものづくり・素形材
 岐阜県の大垣市を訪問しています。今日は金属プレス金型メーカーの大垣精工株式会社を訪問しました。同社は金型だけでなく電機部品などの精密プレス加工も行う、日本を代表する金属プレス金型メーカーの1つで、社長の上田勝弘さんは日本金型工業会の会長でもあります。


 場所はJR大垣駅から南へ車で30分ほどのところにあります。来てみて気がついたのですが、やはり日本を代表する金型メーカーである丸順とマルスンが隣に並んでいます。ちょっと壮観だと思いました。

 
 建物の表示は日本語、英語、中国語、韓国語の4ヶ国語表記となっています。上田さんは国際交流に熱心で、特に韓国とは密接に交流しており国立ソウル産業大学名誉教授も務めています。
 大学に金型学科を設置するなど韓国が国を挙げて金型技術者を熱心に育てている状況を見た上田さんは、日本でも同様の教育を行うことが必要であると国に強く訴え、その結果、地元の岐阜大学に金型創成技術研究センターが平成18年に設置されました。今では同様の学科が群馬大学、芝浦工業大学にも設けられるようになりましたが、年間2500人の金型技術者が大学から輩出される韓国に比べてまだまだ足りないと上田さんは考えているようです。

 
 工場の中も見学させていただきました。若い社員の姿が目立ちます。大垣精工では営業職の方も入社して3年間は金型工場で働き、金型づくりの基礎を徹底して学ぶことが求められます。
 また印象的だったのは、大垣精工には事実上定年というものがなく、また高齢になったからといって賃金が下がらないということです。「高い精度の金型を作るには経験が不可欠で、経験に見合った賃金を用意すれば70歳を過ぎても人は十分な付加価値を生み出すものだ」、「高齢になったからといって賃金を下げる企業は人を材料としてしか見ていないのではないか。人は「人材」ではなく「人財」だ」、と上田さんは語ります。

 優れた業績を示す中小企業はやはり違うと感じました。次回訪れる機会があれば、日本の金型産業の今後の進むべき方向性などについてじっくりお話をお伺いしたいと思います。

三条のB級グルメ「カレーラーメン」

2011-01-11 23:25:06 | Weblog
 日本海側でも有数のものづくりが盛んな地域として知られている新潟県の県央地方。本日、この県央地方の中核をなす三条市と燕市を出張で訪れてきました。
 両市は「燕三条」という新幹線の駅名が示すように、外部の人間からは1つの地域として捉えられがちですが、三条市は伝統的な鍛冶技術、燕市は研磨技術の水準の高さが突出しており、ものづくりの産業集積の性格はかなり異なります。また、両市共に地元のB級グルメとしてラーメンが有名なのですが、三条市はカレーラーメン、これに対して燕市は背脂ラーメンと、これもまた異なります。一つの地域として捉えられがちであるだけに、違いを強調したい地元意識の現われなのかもしれませんね。
 本日の昼食は訪問した新潟県三条地域振興局の方のお勧めに従い、三条市のカレーラーメンを選びました。入手したパンフレットによると、三条市のカレーラーメンは70余年の歴史を有し、ものづくりに徹する職人たちに愛され続けてきた由緒あるB級グルメなのだそうです。私が食べたのは、振興局から近い中国菜館「朱夏」の「海鮮カレーあんかけ麺」でしたが、ちょっと具材が高級過ぎてB級グルメとしてはいまいちふさわしくないように思いました。値段も850円とB級グルメにしては少々高めです。次に訪れる機会があれば、別のお店のカレーラーメンにチャレンジするか、それとも燕市の背脂ラーメンにしようか・・・

国立科学博物館「空と宇宙展」に行ってきました

2011-01-09 18:56:32 | Weblog
 国立科学博物館で開催されている「空と宇宙展」を観てきました。
 日本の航空・宇宙開発の歴史を振り返るというこの企画展示の内容は、かなり技術寄りな地味なものです。しかし狭い会場は家族連れで溢れかえっており、小さな子どもたちの姿も多く見受けられました。

 
 この混雑は連休ということも影響していたとは思いますが、多くの家族連れが押し寄せるという事態はやはり今回の展示の目玉である「はやぶさ」の効果でしょう。「はやぶさ」の帰還が日本人の科学技術に対する意識に与えたインパクトの大きさはこれまでもマスコミで多く報じられていましたが、私もそれを強く実感しました。


 個人的には、「はやぶさ」の観測記録が手書きで書き綴られていたことが興味深かかったです。軌道の計算などは当然スーパーコンピュータで緻密に行われていたと思うのですが、手書きで記録するというアナログな手法もあわせて行われていたという点が実に日本的であるように思いました。


 それと思わず見入ったのがこちら。名機「ゼロ戦」のプロペラを成形するのに用いられた金型です。占領軍によって廃棄させられずによく残っていたものです。

 大変な混雑でじっくり見て回ることができなかったとはいえ、来てよかったと思います。

喫茶店で貰ったお年玉

2011-01-06 22:14:49 | Weblog
今朝は大宮から東武野田線に乗り、大和田という駅で下車しました。とある小さな工務店をヒアリングのために訪問したのですが、私が訪問時間を一時間早く間違えていたことが判明し、仕方なく適当に時間を潰すことにしました。
しばらく駅前をウロウロして、手頃な喫茶店を見つけたので入ってみることにしました。夫婦で経営している、何の変哲もないごく普通の喫茶店でしたが、近所の方々のファンが多いようで結構賑わっていました。モーニングセットを注文したら、マスターから「これはお年玉です」と貯金箱とお年玉が入ったポチ袋を頂きました。ポチ袋の中身は百円玉でしたが、久しくお年玉を貰っていない私にとっては単なる値下げではなくこんな計らいが結構嬉しかったりします(笑)
最近は大手のコーヒーチェーン店とファーストフード店に押され、こうした普通の小さな喫茶店は今では貴重な存在になっているのかもしれないなあ、と思いつつ、440円のモーニングセットでノンビリしたひと時を過ごさせてもらいました。私も最近は外出先でコーヒーを飲む際は専ら大手のコーヒーチェーン店なのですが、これからは小さな喫茶店にも足を運んでみようと思いました。

遅ればせながら謹賀新年

2011-01-05 22:19:02 | Weblog
年末にひどい風邪を引いてしまい、今年の正月休みはほとんど寝込んでいました。ようやく回復したかと思えば早速仕事です。
築地にある食品会社を訪問したついでに築地本願寺に参詣してきました。これが私にとっての初詣です。