歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

工作機械を内製する鴻海

2011-01-14 23:14:40 | ものづくり・素形材
 このブログで何回か取り上げていますが、台湾系大手EMSの鴻海(Foxconn)はつくづくすごい会社だと思います。最新号の日経エレクトロニクス(2011年1月10日号)にどこまで広がるのか,社員100万人の「鴻海」圏という特集記事が掲載されていますが、これを読んで「とうとうここまで来たか」という感慨を抱かざるを得ませんでした。かつて6年前の日経エレクトロニクス誌に「2005年度の連結売上高は3兆1056億円。2006年度は約4兆円が目標」と書いてあるのを読んで、凄い会社だなと思いましたが、同誌最新号によると2010年の売上高はなんと8兆円近くに達するとのこと。凄すぎます。
 鴻海の大きな特徴は部品そして金型の内製率が非常に高いことで、そのために導入する製造装置の量は半端なものではありません。同誌最新号にはその具体例が掲載されていますが、その規模のあまりの大きさにため息が出そうになります。

(以下引用)
マシニング・センター
>Apple社の注文をこなすため、ファナックの小型マシニングセンターを実に1万台導入
>オークマの「VTR-160A」「VTR-350A」などを2009年に一挙に200台を購入。日本では、その1/100しか売れない。
SMTマシン(表面実装機)
>ソニーマニュファクチャリングシステムズから2008年に11億台湾ドル分購入
射出成形機
>住友重機、東洋機械金属、ファナックなどから8000~1万台を購入
(引用終わり)

 このため日本の工作機械メーカー、設備メーカーにとって今や鴻海は「足を向けて寝られないといえるほど」(日経エレクトロニクス誌)の得意先になっています。しかし記事によると鴻海はコスト抑制のために製造装置の内製を進めており、既に一部の装置は2010年から米国メーカーのブランド名を付けて外販され始めているのだそうで、日本企業としてはうかうかできません。
 そこで思い出したのが、東京大学名誉教授で、素形材技術の研究者としても有名な中川威雄氏のことです。彼は鴻海社長のテリー・ゴー(郭台銘)氏と親密な関係にあります(こちら)。鴻海の製造装置の開発には、日本人技術者も少なからず関わっているものと思われ、中川氏もその一翼を担っているものと想像されます。実際、鴻海が出願した特許の中には発明人の欄に彼が名前を連ねているものが見られます(こちらこちら)。

 巨大な資金力と世界最高レベルの頭脳を擁し、エレクトロニクス製品の加工組立という領域を大きく超えて成長しようとする鴻海と、日本企業は今後いかにして共存していけばよいのでしょうか。多くの日本企業にとって大きな課題であるように思います。