クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

クニのウラ部屋雑記(31) ―金山城と牛丼Ⅰ―

2008年09月23日 | ウラ部屋
何事も最初が肝心である。
出会ったときの印象、あるいは出来事は、
なかなか忘れないものだ。

“金山城”は群馬県太田市にある。
初めてその山城へ行ったのは、19歳の春だったと思う。
羽生のレンタルビデオ屋で偶然会った高校の同級生が、
金山城まで連れていってくれたのだ。

彼は決して二枚目ではないけれど、
不思議と周りには女性の影が絶えなかった。
会うたびに前とは違う女の人を連れていたし、
高校時代はしょっちゅう他校の女の子と遊んでいた。

その日も彼は2人の女の子を呼んだ。
突然の呼び出しだったにもかかわらず、
その女の子たちは彼からの電話に快く応じたらしい。
彼とどんな関係なのかはわからず、
少なくとも恋人とはほど遠い存在だったと思う。
案外、元カノの友だちだったりするかもしれない。

どこで彼女たちを拾い、
どんないきさつで金山城へ向かったのかはもう覚えていない。
彼の運転する車でひたすら北へ向かい、
気が付けば金山の山頂に着いていた。
そこは展望台が設けられ、
太田の夜景が一望できるようになっている。

初めてそこを訪れた者は意外に思うかもしれない。
その山城から見渡せる夜景は、
まるで東京の高層ビルからの眺めのようなのだ。
無数に煌めく外灯と建物の明かり。
一瞬、山の中にいることを忘れてしまう。
往古、金山城主もこうして領土を見渡したのだろう。

「デートに使うなよな」と、彼は釘をさした。
おそらく彼は、何度となくそこに女の子をつれてきたのだろう。
デートでなくとも、好きな女の子をつれてきても効果的かもしれない。
恋人に近い関係ならともかく、
その日ぼくら4人が簡素な展望台に立っても、
とても甘酸っぱい雰囲気にはならなかった。

男女ペアになることもなく、
ぼくらはずっと4人一緒にいた。
そしてどんな話をしたかというと、
“牛丼”である。
金山城から牛丼屋が見えたわけではない。
何がきっかけでその話題になったのかはわからないけれど、
夜景を背景に牛丼の話でかなり盛り上がったのを覚えている。

2人の女の子は牛丼が好きだと言った。
何度も店に行っているらしく、
私流の“おいしい牛丼の食べ方”を熱っぽく語り始めた。
彼女たちは“つゆだく”派で、
しかも注文するのは大盛りらしい。
卵はあまりかき混ぜずに落とすのがいいのだとか、
紅生姜はたっぷり乗せ、
唐辛子は量が半分くらいになったらかけるのだとか、
とても楽しそうに語るのだった。
(続く)

※画像は金山城からの眺め。

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2 コメント

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Unknown ()
2008-09-27 11:07:10
この何年かベランダから夜景をみたことはなかったが
この写真に触発されてこのところ毎夜みている。じっくりぐるりを見回すと、不思議な世界にきたような・・・気になる。昼間はわりあい見慣れていて
私は鳥になって巣にくらしてる気分と言っていた。
しかし城下を見下ろす武将の視点をクニさんに教わり、あと少しでおさらばする感傷と、秋の月光のもとにたたずむ、もののふのあわれが重なり、「吉野家の
牛丼をくらう女」はレンブラントのような名画になる予感を感じました。
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虹さんへ (クニ)
2008-09-28 10:12:12
虹さんのおうちから見える夜景は綺麗でしょうね。
ゼミの人たちとお邪魔したとき、
あのおいしい食事に夢中で外を見はぐってしまいました。
「不思議な世界にきたような」夜景とはどんなものなのでしょう。
「あと少しでおさらばする」とのことで、
虹さんが目にしている夜景は、いましか見られない特別な夜景なのでしょうね。

秋ということもあって味覚の季節です。
今度金山城へ行くときは、牛丼を山頂へ持っていって、
もののふたちを忍びながら食べようかなと思ったりしています。
いや、できれば金山城内で「牛丼をくらう女」を目にするのが一番なのでしょう。
峠の釜飯屋ならぬ、峠の牛丼屋ができるかもしれませんね(笑)
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