何事も最初が肝心である。
出会ったときの印象、あるいは出来事は、
なかなか忘れないものだ。
“金山城”は群馬県太田市にある。
初めてその山城へ行ったのは、19歳の春だったと思う。
羽生のレンタルビデオ屋で偶然会った高校の同級生が、
金山城まで連れていってくれたのだ。
彼は決して二枚目ではないけれど、
不思議と周りには女性の影が絶えなかった。
会うたびに前とは違う女の人を連れていたし、
高校時代はしょっちゅう他校の女の子と遊んでいた。
その日も彼は2人の女の子を呼んだ。
突然の呼び出しだったにもかかわらず、
その女の子たちは彼からの電話に快く応じたらしい。
彼とどんな関係なのかはわからず、
少なくとも恋人とはほど遠い存在だったと思う。
案外、元カノの友だちだったりするかもしれない。
どこで彼女たちを拾い、
どんないきさつで金山城へ向かったのかはもう覚えていない。
彼の運転する車でひたすら北へ向かい、
気が付けば金山の山頂に着いていた。
そこは展望台が設けられ、
太田の夜景が一望できるようになっている。
初めてそこを訪れた者は意外に思うかもしれない。
その山城から見渡せる夜景は、
まるで東京の高層ビルからの眺めのようなのだ。
無数に煌めく外灯と建物の明かり。
一瞬、山の中にいることを忘れてしまう。
往古、金山城主もこうして領土を見渡したのだろう。
「デートに使うなよな」と、彼は釘をさした。
おそらく彼は、何度となくそこに女の子をつれてきたのだろう。
デートでなくとも、好きな女の子をつれてきても効果的かもしれない。
恋人に近い関係ならともかく、
その日ぼくら4人が簡素な展望台に立っても、
とても甘酸っぱい雰囲気にはならなかった。
男女ペアになることもなく、
ぼくらはずっと4人一緒にいた。
そしてどんな話をしたかというと、
“牛丼”である。
金山城から牛丼屋が見えたわけではない。
何がきっかけでその話題になったのかはわからないけれど、
夜景を背景に牛丼の話でかなり盛り上がったのを覚えている。
2人の女の子は牛丼が好きだと言った。
何度も店に行っているらしく、
私流の“おいしい牛丼の食べ方”を熱っぽく語り始めた。
彼女たちは“つゆだく”派で、
しかも注文するのは大盛りらしい。
卵はあまりかき混ぜずに落とすのがいいのだとか、
紅生姜はたっぷり乗せ、
唐辛子は量が半分くらいになったらかけるのだとか、
とても楽しそうに語るのだった。
(続く)
※画像は金山城からの眺め。
出会ったときの印象、あるいは出来事は、
なかなか忘れないものだ。
“金山城”は群馬県太田市にある。
初めてその山城へ行ったのは、19歳の春だったと思う。
羽生のレンタルビデオ屋で偶然会った高校の同級生が、
金山城まで連れていってくれたのだ。
彼は決して二枚目ではないけれど、
不思議と周りには女性の影が絶えなかった。
会うたびに前とは違う女の人を連れていたし、
高校時代はしょっちゅう他校の女の子と遊んでいた。
その日も彼は2人の女の子を呼んだ。
突然の呼び出しだったにもかかわらず、
その女の子たちは彼からの電話に快く応じたらしい。
彼とどんな関係なのかはわからず、
少なくとも恋人とはほど遠い存在だったと思う。
案外、元カノの友だちだったりするかもしれない。
どこで彼女たちを拾い、
どんないきさつで金山城へ向かったのかはもう覚えていない。
彼の運転する車でひたすら北へ向かい、
気が付けば金山の山頂に着いていた。
そこは展望台が設けられ、
太田の夜景が一望できるようになっている。
初めてそこを訪れた者は意外に思うかもしれない。
その山城から見渡せる夜景は、
まるで東京の高層ビルからの眺めのようなのだ。
無数に煌めく外灯と建物の明かり。
一瞬、山の中にいることを忘れてしまう。
往古、金山城主もこうして領土を見渡したのだろう。
「デートに使うなよな」と、彼は釘をさした。
おそらく彼は、何度となくそこに女の子をつれてきたのだろう。
デートでなくとも、好きな女の子をつれてきても効果的かもしれない。
恋人に近い関係ならともかく、
その日ぼくら4人が簡素な展望台に立っても、
とても甘酸っぱい雰囲気にはならなかった。
男女ペアになることもなく、
ぼくらはずっと4人一緒にいた。
そしてどんな話をしたかというと、
“牛丼”である。
金山城から牛丼屋が見えたわけではない。
何がきっかけでその話題になったのかはわからないけれど、
夜景を背景に牛丼の話でかなり盛り上がったのを覚えている。
2人の女の子は牛丼が好きだと言った。
何度も店に行っているらしく、
私流の“おいしい牛丼の食べ方”を熱っぽく語り始めた。
彼女たちは“つゆだく”派で、
しかも注文するのは大盛りらしい。
卵はあまりかき混ぜずに落とすのがいいのだとか、
紅生姜はたっぷり乗せ、
唐辛子は量が半分くらいになったらかけるのだとか、
とても楽しそうに語るのだった。
(続く)
※画像は金山城からの眺め。
この写真に触発されてこのところ毎夜みている。じっくりぐるりを見回すと、不思議な世界にきたような・・・気になる。昼間はわりあい見慣れていて
私は鳥になって巣にくらしてる気分と言っていた。
しかし城下を見下ろす武将の視点をクニさんに教わり、あと少しでおさらばする感傷と、秋の月光のもとにたたずむ、もののふのあわれが重なり、「吉野家の
牛丼をくらう女」はレンブラントのような名画になる予感を感じました。
ゼミの人たちとお邪魔したとき、
あのおいしい食事に夢中で外を見はぐってしまいました。
「不思議な世界にきたような」夜景とはどんなものなのでしょう。
「あと少しでおさらばする」とのことで、
虹さんが目にしている夜景は、いましか見られない特別な夜景なのでしょうね。
秋ということもあって味覚の季節です。
今度金山城へ行くときは、牛丼を山頂へ持っていって、
もののふたちを忍びながら食べようかなと思ったりしています。
いや、できれば金山城内で「牛丼をくらう女」を目にするのが一番なのでしょう。
峠の釜飯屋ならぬ、峠の牛丼屋ができるかもしれませんね(笑)