ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

誤想防衛の続き

2013年02月25日 23時43分39秒 | 刑法
先日の問題はひねると難しくなりそうです。


夜間、AはBを後ろから殴ってBは道に倒れ込んだ。Aはすぐさま逃げたが、甲がそれを見ていたため、Bを助けようとした。

しかし、BはAがさらに殴ってくるものと勘違いし、甲に殴り掛かった。しかも、Bは甲が殴ったものと思っており、その手を止めなかったため、甲は腹が立ったので、甲は持っていたナイフでBの顔面を切り付けた。

Bは顔を押さえつつ、よろけたため、後ろから自転車に乗ったCと接触し、Cも転倒した。

その際、BとCは地面に頭を強打し、死亡した。


甲は何罪か?



Bは誤想防衛で違法性が阻却されないため、Bの勘違いして殴り掛かる行為は急迫不正の侵害に当たります。

そこで、甲はBに対して、攻撃の意思と防衛の意思があるため、防衛の意思は否定されませんが、防衛行為の必要性と相当性のうち、相当性を欠きます。

そのため、傷害致死罪が成立し、過剰防衛による刑の減免が認められます。


一方、Cに対しては、Cは何ら攻撃をしていないため、甲にとっては誤想過剰防衛、あるいは、緊急避難にあたると考えられます。


誤想過剰防衛と考える場合には、過剰性の認識があれば故意あり、過剰性の認識がなければ故意が阻却され過失犯の成否が問題になります。

また、故意は規範に直面した場合の反対動機の形成の有無であり、規範は構成要件において類型化されていること、また、故意の個数は構成要件において抽象化されているため、問題になりません。

そして、甲は、Bに対して過剰性の認識があり、その結果、BとCに対して過剰な行為による結果が発生しているため、両者に対して故意犯が成立します。


さらに、36条2項の適用ないしは準用によって刑の減免があります。
(過剰性の認識がない場合は過失犯の成立があり、過失犯が成立されれば刑は免除されないのに、過剰性の認識があり故意が阻却されない場合に、36条2項によって刑の免除が認められるのは刑の不均衡として、刑の免除は認められず、減軽のみ認めるとする考えもあります。)



次に、Cとの関係では緊急避難と考える場合には、Bに対する過剰な防衛行為がCに及んでおり、また発生した結果との間に法益権衡が認められないことから、過剰避難になるかと思います。
なお、やむを得ずにしたとはいえず、補充性が否定される場合には、過剰避難も成立しないことも考えられます。


以上から、
Bに対しては傷害致死罪の過剰防衛による刑の減免。
Cに対しては傷害致死罪の成立+36条2項の刑の減免(減軽)。
又は、
Cに対しては傷害致死罪の成立+37条1項ただし書きの刑の減免。

といった感じでしょうか。



Cに対してはちょっと自信がありません。




※3月5日追記

Cに対しては、大阪高判平成14年9月14日の判例が想起されます。

大阪高判の事例を本事例に即しますと、以下のようになるでしょうか。


甲は、Bから暴行を受けているCを助けようと自動車を急後退させたが、Cを轢過し、死亡させた。

判例は、被告人はが主観的には正当防衛だと認識している以上、Cを死亡させた行為については、故意非難を向け得る主観的事情は存在しないというべきであるから、いわゆる誤想防衛の一種として、過失責任を問い得ることは格別、故意責任を肯定することはできない。



とすると、誤想防衛の一種として故意責任を阻却するのですから、誤想過剰防衛の一種も含まれるのではないか、と見ることもできそうです。


ただ、あの事例は、本件に関していえば、Bに対する正当防衛が成立していた事例であり、過剰防衛の場合は射程外ですので、Cに対して誤想過剰防衛の一種としても故意は阻却しないのもありだと思います。
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誤想防衛

2013年02月24日 21時49分52秒 | 刑法
誤想防衛の話です。


誤想防衛は、正当防衛としての構成要件があると思ったのに、実際は無かった場合のことです。

この場合、故意説からは、違法性阻却事由の錯誤であり、反対動機の形成の機会がなかったのであるから、故意責任は認められない、と言えます。


以下のような勘違いしそうな事例に気を付けなければなりません。


夜間、AはBを後ろから殴ってBは道に倒れ込んだ。Aはすぐさま逃げたが、甲がそれを見ていたため、Bを助けようとした。

しかし、BはAがさらに殴ってくるものと勘違いし、甲に殴り掛かった。しかも、Bは甲が殴ったものと思っており、その手を止めなかったため、甲もBを殴り返し、Bは全治1週間の怪我を負った。

甲は何罪か?



この問題で、このような回答は間違っています。

甲は、暴行し、Bは傷害を負ったため、傷害罪が成立する可能性がある。
しかし、甲は、Bが殴ってきたので、これを止めるために殴り返している。この時、BはAが殴り掛かってきたと思い、誤想防衛である。

誤想防衛は、違法性阻却事由の錯誤に当たり、故意が阻却され、犯罪は成立しない。

そこで、Bの殴り掛かる行為は、急迫不正の侵害とはいえず、正当防衛は成立しない。
では、緊急避難が成立し、違法性が阻却されないか。



















勘違いしやすいのが、Bが殴り掛かってきたのが誤想防衛であり、故意が阻却し、犯罪が成立していないことです。

この場合であっても、Bの違法性は阻却されないため、Bの殴り掛かってきた行為は急迫不正の侵害であり、甲は、正当防衛が成立する可能性は否定されないことです。


犯罪が成立しないのは、どの点かに注意しないと見落としてしまいますね。
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承継的共同正犯

2013年02月24日 21時39分23秒 | 刑法
承継的共同正犯は、著名な論点です。

通常、結合犯について議論がされ、強盗罪や詐欺罪の時に問題になりやすいです。


昨年、最高裁判例として、傷害罪の承継的共同正犯が出たそうです。


最高裁判例



甲、乙がAを暴行していて傷害を負い、途中から丙が加担して、Aがさらに重篤な傷害を負った場合、丙に、甲、乙が発生させていた結果も合わせた重篤な傷害結果を帰責できるか、という問題です。


詳しくは、以下のとおり。
【裁判要旨】
「他の者が被害者に暴行を加えて傷害を負わせた後に,被告人が共謀加担した上,更に暴行を加えて被害者の傷害を相当程度重篤化させた場合,被告人は,被告人の共謀及びそれに基づく行為と因果関係を有しない共謀加担前に既に生じていた傷害結果については,傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく,共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によって傷害の発生に寄与したことについてのみ,傷害罪の共同正犯としての責任を負う。」


論文的には、このような感じでしょうか。

 承継的共同正犯は、共同正犯が一部実行全部責任として、正犯として処罰されるのは、相互に意思の連絡の下、互いの行為を利用補充し合って犯罪を実現したことにある。すなわち、共同実行の意思と共同実行の事実である。
 また、承継的共同正犯の場合、先行行為を積極的に利用した場合には、後行行為とを互いに利用補充し合う関係にあるといえることから、承継的共同正犯を肯定する。


 傷害罪の場合、先に傷害結果が発生したところに丙が加担したのは、甲、乙の先行行為による傷害結果を積極的に利用しようとする意図ではなく、単に丙の暴行の動機、契機に過ぎないのであって、共同実行の意思も事実もないといえる。

よって、丙が加担する前の傷害結果については、丙は帰責されない。
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管轄の合意の瑕疵

2013年02月23日 22時11分26秒 | 民訴法
管轄の合意については、理解があまり進んでいないので、少し考えてみました。


当事者間に管轄の合意が存在し、専属的合意管轄が生じるとすれば、当事者は当該管轄裁判所に対する訴え提起のみ認められるという当事者間の拘束力が生じます。

では、これを無効とすることができる場合は、いかなるものがあるでしょうか。


1点目
管轄の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければならない(11条2項)。

そのため、一定の法律関係に基づかない訴えに関しては成立しないため、無効です。

また、書面でしなかった場合(例外として電磁的記録があります(11条3項))、あるいは、書面に瑕疵がある場合は、無効です。



2点目
では、民法の規定の類推適用ができるでしょうか。

公序良俗に反する場合(民法90条)、本来は無効となるはずです。

例えば、当事者が強制的に合意させられたとか、一方的に不利益を及ぼすにもかかわらず、他方の地位に基づいて合意したとかの場合です。

この場合、合意は当然無効としたとしても、訴え提起に対して応訴したことにより応訴管轄が生じ(12条)、結局は無効にならないということが考えられます。

そのため、公序良俗違反により無効とするならば、応訴管轄まで無効としなければ当事者間の公平を図れません。

応訴管轄まで無効になり、管轄は生じないとするには、公序良俗違反の効力は、合意の無効だけではなく、応訴管轄まで無効とすることになります。

これを肯定するには、無効の効力を拡張することも当事者間の公平のため、認められると考えることになるでしょうか。

逆に否定するには、合意管轄のみ無効であり、応訴管轄が生じているのであるから、結局現在の管轄裁判所での訴訟係属が認められることになるでしょうか。


また、応訴管轄を無効とする効力まで認めるとしても、当事者が主張しなければ認められないと考えられますので、時機に後れた場合には、責問権の喪失(90条)になるといえるのではないでしょうか。
この管轄については、当事者の利益を保護する目的と考えられますので、責問権の対象となると思われます。



一方、錯誤、詐欺による、無効、取消の類推適用はどうでしょうか。

この場合、民法上、当事者が主張して初めて遡及効が生じ、無効、取消の効力が生じることになります。
とすると、かかる主張をして初めて合意管轄が取り消される又は遡及的無効になり、この後に応訴管轄が生じると考えられます。

とすれば、この場合は、類推適用を認めても不都合性は無いといえるでしょう。


しかし、前述の公序良俗違反は無効としないとした場合には、公序良俗違反の方が瑕疵の程度が大きいのであるから、錯誤、詐欺の類推適用も認めないとした方が、論理が通りやすいように思います。
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表現の自由への制約の言い回し

2013年02月22日 23時17分39秒 | 憲法
近時の最高裁判例でも絶対無制約とか言っていますね。


最高裁判例の事案での表現の自由への制約についての文言。

最高裁平成23年7月7日第一小法廷判決

【判示事項】
卒業式の開式直前に保護者らに対して大声で呼び掛けを行い、これを制止した教頭らに対して怒号するなどし、卒業式の円滑な遂行を妨げた行為をもって刑法234条の罪に問うことが、憲法21条1項に違反しないとされた事例


【裁判要旨】
 卒業式の開式直前に、式典会場である体育館において、主催者に無断で、保護者らに対して、国歌斉唱のときには着席してほしいなどと大声で呼び掛けを行い、これを制止した教頭らに対して怒号するなどし、その場を喧噪状態に陥れるなどして、卒業式の円滑な遂行に支障を生じさせた行為をもって、刑法234条の罪に問うことは、憲法21条1項に違反しない。
(補足意見がある。)

【抜粋】
「被告人Xがした行為の具体的態様は、上記のとおり、卒業式の開式直前という時期に、式典会場である体育館において、主催者に無断で、着席していた保護者らに対して大声で呼び掛けを行い、これを制止した教頭に対して怒号し、被告人Xに退場を求めた校長に対しても怒鳴り声を上げるなどし、粗野な言動でその場を喧噪状態に陥れるなどしたというものである。表現の自由は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならないが、憲法21条1項も、表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ意見を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されない。被告人Xの本件行為は、その場の状況にそぐわない不相当な態様で行われ、静穏な雰囲気の中で執り行われるべき卒業式の円滑な遂行に看過し得ない支障を生じさせたものであって、こうした行為が社会通念上許されず、違法性を欠くものでないことは明らかである。」
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194条、195 条

2013年02月18日 12時49分17秒 | 民法
民法194条は、192条の特則です。

条文上は、占有者が、善意で買い受けた、とありますが、ここにいう、占有者は192条の善意取得者を言いますので、善意取得者に当たらないけど、過失のある善意の占有者は、194条による保護はされません。


194条は、

占有者が、…、善意で買い受けたときは、…代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。

とあり、過失があっても善意の者は、善意取得者でなくても保護されるように読めます。

しかし、193条、194条は192条の特則であることから、善意取得者でない限り適用はありません。

条文だけだと間違えそうな気がします。

このことは内田民法に書いてありました。




しかし、195条はよくわかりません。
取引の安全とは異なり、動物の占有者を保護する規定であるため、善意取得者ではないようです。


とすると、家畜以外の動物は、人の支配に服しないで生活するのを常態とする動物のことなので、犬猫は家畜でしょうから当たらず、ヘビや魚がこれに当たるのでしょうか。


九官鳥は、家畜以外の動物でないとした判例があることから、人が飼うのが通常の金魚等は家畜以外の動物に当たらないでしょう。



ヘビを盗んだ人がペットショップに売り、これを乙さんの物じゃないかなーと疑いながら、買った甲は、善意取得者じゃないけど、195条に当たり権利を取得することはないのかなー。


この場合、193条、194条が及ばないから、買った人と所有者の関係は、195条から、買った人が優先するのだろうか。
#善意の占有者には当たるでしょう。


ただ、過失があるけど、家畜以外の動物に当たるから、買った人が勝ってしまうのはおかしい気がします。
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訴えの変更

2013年02月17日 19時40分11秒 | 民訴法
民事訴訟法において、新しい証拠が出てきた場合、訴えの変更という方法と、時機に後れた攻撃防御方法という方法があります。


前者は、新しい証拠によって訴えの変更、又は追加的変更があり得ます。

後者は、新しい証拠によって、現在の訴訟資料として追加することがあります。


いずれも証拠の使い方、請求の内容によって変わります。


時機に後れた攻撃防御方法として却下される場合でも、訴えの変更、追加的変更については、認められなければ既判力によって遮断されるおそれがあるので、こちらの方がより慎重に検討する必要がありそうです。


そうすると、訴えの変更を認めないとする理由は、訴訟手続きが著しく遅延した場合であっても、相手方が故意に変更しなかった、長引かせたかったとかでない限り、認める必要があるというのがよさそうです。


同じ事実であっても、使い方、訴訟手続きによって、認めたり認められなかったりするので、きちんと検討する必要がありますね。



請求の基礎に同一性があるかどうかが要求されている趣旨
1 防御対象が予想外のものに変更されないという被告の防御上の利益
2 訴訟資料の利用可能性を確保(訴訟経済を図る)

から、

1 両請求が社会生活上同一の事実かどうか
2 旧請求における訴訟資料を利用できるか

という判断基準になります。



訴えの変更について判例があります。

昭和39年7月10日
「相手方の提出した防御方法を是認したうえでその相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合、すなわち相手方の陳述した事実をとってもって新請求の原因とする場合においては、かりにその新請求が請求の基礎を変更する訴の変更であっても、相手方はこれに対し異議をとなえその訴の変更の許されないことを主張することはでき」ない。


これは、請求の基礎が変更されない場合はもちろん、変更される場合であれば本来被告の同意がなければ訴えの変更ができないけれども、本件のような相手方の主張に依拠する場合には、被告の同意なく認められることを判示したものと言えます。
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会社法

2013年02月13日 23時07分29秒 | 商法
親子関係にある会社で、その関係を悪用して、子会社の損失によって親会社かわ利益になるような取引をした場合に、親会社を事実上の取締役理論によって、損害賠償請求をするという考えがあります。

しかし、これって、法人は取締役になることができないとする、331条1項1号に思いっきり反しないですかね!?


法人格否認の法理や親会社の取締役らに第三者責任として追及する方がいいように思いました。
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肝に命じる言葉

2013年02月12日 22時40分00秒 | その他
成功したのは周りのおかげ。
失敗したのは自分のせい。
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短答

2013年02月11日 18時36分04秒 | 行政法
行政法の短答はやはり難しいです。

商法も同じくですが。


行政法はやはり判例の知識が足りないことが痛感されます。
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