ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

誤想防衛

2013年02月24日 21時49分52秒 | 刑法
誤想防衛の話です。


誤想防衛は、正当防衛としての構成要件があると思ったのに、実際は無かった場合のことです。

この場合、故意説からは、違法性阻却事由の錯誤であり、反対動機の形成の機会がなかったのであるから、故意責任は認められない、と言えます。


以下のような勘違いしそうな事例に気を付けなければなりません。


夜間、AはBを後ろから殴ってBは道に倒れ込んだ。Aはすぐさま逃げたが、甲がそれを見ていたため、Bを助けようとした。

しかし、BはAがさらに殴ってくるものと勘違いし、甲に殴り掛かった。しかも、Bは甲が殴ったものと思っており、その手を止めなかったため、甲もBを殴り返し、Bは全治1週間の怪我を負った。

甲は何罪か?



この問題で、このような回答は間違っています。

甲は、暴行し、Bは傷害を負ったため、傷害罪が成立する可能性がある。
しかし、甲は、Bが殴ってきたので、これを止めるために殴り返している。この時、BはAが殴り掛かってきたと思い、誤想防衛である。

誤想防衛は、違法性阻却事由の錯誤に当たり、故意が阻却され、犯罪は成立しない。

そこで、Bの殴り掛かる行為は、急迫不正の侵害とはいえず、正当防衛は成立しない。
では、緊急避難が成立し、違法性が阻却されないか。



















勘違いしやすいのが、Bが殴り掛かってきたのが誤想防衛であり、故意が阻却し、犯罪が成立していないことです。

この場合であっても、Bの違法性は阻却されないため、Bの殴り掛かってきた行為は急迫不正の侵害であり、甲は、正当防衛が成立する可能性は否定されないことです。


犯罪が成立しないのは、どの点かに注意しないと見落としてしまいますね。

承継的共同正犯

2013年02月24日 21時39分23秒 | 刑法
承継的共同正犯は、著名な論点です。

通常、結合犯について議論がされ、強盗罪や詐欺罪の時に問題になりやすいです。


昨年、最高裁判例として、傷害罪の承継的共同正犯が出たそうです。


最高裁判例



甲、乙がAを暴行していて傷害を負い、途中から丙が加担して、Aがさらに重篤な傷害を負った場合、丙に、甲、乙が発生させていた結果も合わせた重篤な傷害結果を帰責できるか、という問題です。


詳しくは、以下のとおり。
【裁判要旨】
「他の者が被害者に暴行を加えて傷害を負わせた後に,被告人が共謀加担した上,更に暴行を加えて被害者の傷害を相当程度重篤化させた場合,被告人は,被告人の共謀及びそれに基づく行為と因果関係を有しない共謀加担前に既に生じていた傷害結果については,傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく,共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によって傷害の発生に寄与したことについてのみ,傷害罪の共同正犯としての責任を負う。」


論文的には、このような感じでしょうか。

 承継的共同正犯は、共同正犯が一部実行全部責任として、正犯として処罰されるのは、相互に意思の連絡の下、互いの行為を利用補充し合って犯罪を実現したことにある。すなわち、共同実行の意思と共同実行の事実である。
 また、承継的共同正犯の場合、先行行為を積極的に利用した場合には、後行行為とを互いに利用補充し合う関係にあるといえることから、承継的共同正犯を肯定する。


 傷害罪の場合、先に傷害結果が発生したところに丙が加担したのは、甲、乙の先行行為による傷害結果を積極的に利用しようとする意図ではなく、単に丙の暴行の動機、契機に過ぎないのであって、共同実行の意思も事実もないといえる。

よって、丙が加担する前の傷害結果については、丙は帰責されない。