平成20年の行政法の問題は、勧告の処分性が問われています。
似たような話を
景品表示法のところで書いています。
流れとしては、本来、勧告は従うか従わないかを相手方の任意に任せるものであり、行政指導といえるため、処分性は認められないとも思えます。
しかし、
本件勧告は、これがなされるとその後に公表や命令、業務停止といった相手方に不利益を及ぼす行政行為がなされるため、重要な役割を果たします。
そして、これによってもたらさられる不利益の影響は、住民の信頼を失い、経営が困難になって、入所者等に多大な負担を掛けることになり、非常に大きいといえます。
また、処分性が認められる命令や業務停止、許可取消などがなされた後に取消訴訟を提起したのでは、当該訴訟の確定まで期間を要し、その間上記不利益が生じるおそれが高いといえ、勧告自体を取り消す必要性が高いといえます。
なお、差止訴訟ができるから、取消訴訟を待たなくてもよいという主張があり得ますが、訴訟要件が厳格であることから認められる可能性は低いため、なお不利益が生じるおそれが高いといえると思います。
そこで、勧告によって、これらの不利益が生じるおそれのある行政行為がなされる可能性があることから、このような地位が直接形成されるものといえ、法効果性が認められ、処分性が認められます。
最後は、法効果性から認められるように書きましたが、従来の法効果性ではなく、相手方の不利益性と処分として取消訴訟を提起させる必要性の点から処分性を認めるといった流れと捉えることもできるかと思います。
そうすると、
形式的には、処分性の定義には当たらない。
しかし、
その後の処分がされる流れの前提となっていること、
処分がされた後の不服申立では救済が十分ではなく必要性が高いこと、
かかる行為を処分として取り消さなければ不利益の程度が大きいこと
などから、処分性が認められる、としているように捉えられるかと思います。
平成17年7月15日の病院開設中止勧告事件を引用しておきます。
「病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができるなくなるという結果をもたらすものということができる。」「病院開設中止の勧告の保険医療機関の指定に及ぼす効果及び病院経営における保険医療機関の指定の持つ意義を併せ考えると、この勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に当たる解するのが相当である。」