ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

管轄の合意の瑕疵

2013年02月23日 22時11分26秒 | 民訴法
管轄の合意については、理解があまり進んでいないので、少し考えてみました。


当事者間に管轄の合意が存在し、専属的合意管轄が生じるとすれば、当事者は当該管轄裁判所に対する訴え提起のみ認められるという当事者間の拘束力が生じます。

では、これを無効とすることができる場合は、いかなるものがあるでしょうか。


1点目
管轄の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければならない(11条2項)。

そのため、一定の法律関係に基づかない訴えに関しては成立しないため、無効です。

また、書面でしなかった場合(例外として電磁的記録があります(11条3項))、あるいは、書面に瑕疵がある場合は、無効です。



2点目
では、民法の規定の類推適用ができるでしょうか。

公序良俗に反する場合(民法90条)、本来は無効となるはずです。

例えば、当事者が強制的に合意させられたとか、一方的に不利益を及ぼすにもかかわらず、他方の地位に基づいて合意したとかの場合です。

この場合、合意は当然無効としたとしても、訴え提起に対して応訴したことにより応訴管轄が生じ(12条)、結局は無効にならないということが考えられます。

そのため、公序良俗違反により無効とするならば、応訴管轄まで無効としなければ当事者間の公平を図れません。

応訴管轄まで無効になり、管轄は生じないとするには、公序良俗違反の効力は、合意の無効だけではなく、応訴管轄まで無効とすることになります。

これを肯定するには、無効の効力を拡張することも当事者間の公平のため、認められると考えることになるでしょうか。

逆に否定するには、合意管轄のみ無効であり、応訴管轄が生じているのであるから、結局現在の管轄裁判所での訴訟係属が認められることになるでしょうか。


また、応訴管轄を無効とする効力まで認めるとしても、当事者が主張しなければ認められないと考えられますので、時機に後れた場合には、責問権の喪失(90条)になるといえるのではないでしょうか。
この管轄については、当事者の利益を保護する目的と考えられますので、責問権の対象となると思われます。



一方、錯誤、詐欺による、無効、取消の類推適用はどうでしょうか。

この場合、民法上、当事者が主張して初めて遡及効が生じ、無効、取消の効力が生じることになります。
とすると、かかる主張をして初めて合意管轄が取り消される又は遡及的無効になり、この後に応訴管轄が生じると考えられます。

とすれば、この場合は、類推適用を認めても不都合性は無いといえるでしょう。


しかし、前述の公序良俗違反は無効としないとした場合には、公序良俗違反の方が瑕疵の程度が大きいのであるから、錯誤、詐欺の類推適用も認めないとした方が、論理が通りやすいように思います。