最近、あまり聞かなくなった言葉に「健忘症」というのがある。
認知症という言葉が、すっかり定着したせいでもあろうか。
広辞苑で健忘症を引くと、
①、記憶がいちじるしく障害される症候。
②、物事を忘れやすい性質、とある。
■
前置きは、そのくらいにして、
暇つぶしに雑誌をめくっていたら「健忘症の特効薬」という活字に出会った。
載っている話は、中国・明代の典型的な健忘症の男の話しであり、
筋書きも大げさで愉快なので、以下、引用させてもらう。
■
斎(中国・春秋時代、山東省)に、ひどい健忘症の男がいた。
行けば止まることを忘れ、寝ては起きることを忘れるという、ていたらく。
その妻が心配して「よく膏盲に入った病気を治す名医がいるから、行って診てもらったら良かろう」とするめた。
くだんの男は、早速、馬にまたがり弓矢を携えて出かけた。
ところが、まだ一丁も行かぬうちに、急に便意をもよおした。
馬を降り、矢を地面に立て、馬を樹につないで用便を済ました。
終って左のほうを見ると、矢が地面に突き刺さっている。
これは危なかった、どこから飛んで来たのだろう。
もう少しで当るところであったと、首をすくめた。
右を見ると、馬がつないである。
こんないい馬が手に入って良かったといい、馬を引いて出かけようとした。
すると、いま排便したばかりの自分の糞を踏みつけた。
足をちぢめて、糞を踏んで靴が台なしだ、
惜しいことをしたと言いながら、くるりと回って、もと来た道を戻って行く。
本人は、それとは知らず自分の家の前で、しばらく、うろつき、
ここは誰の家だろう?病気を治してくれる先生の家かも知れないと、つぶやく。
そこへ妻が出て来て、夫に向かい口ぎたなくののしった。
すると、男は、しょんぼりして、
ご新造さんは私と知り合いでもないのに、
どうして、そんなにガミガミ私をいじめるのですかと言った。
■
この話しには、健忘症に対する2種類の特効薬も紹介されている。
いずれも漢方薬で、
(1)巴戟天丸=健忘症の専門薬。丸薬で毎服30粒を服用。
(2)丹参飲子=記憶を善くする薬。煎じて随時服す。
ただし、この2種類の処方については、信用できる医師の指示に従えとある。
認知症という言葉が、すっかり定着したせいでもあろうか。
広辞苑で健忘症を引くと、
①、記憶がいちじるしく障害される症候。
②、物事を忘れやすい性質、とある。
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前置きは、そのくらいにして、
暇つぶしに雑誌をめくっていたら「健忘症の特効薬」という活字に出会った。
載っている話は、中国・明代の典型的な健忘症の男の話しであり、
筋書きも大げさで愉快なので、以下、引用させてもらう。
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斎(中国・春秋時代、山東省)に、ひどい健忘症の男がいた。
行けば止まることを忘れ、寝ては起きることを忘れるという、ていたらく。
その妻が心配して「よく膏盲に入った病気を治す名医がいるから、行って診てもらったら良かろう」とするめた。
くだんの男は、早速、馬にまたがり弓矢を携えて出かけた。
ところが、まだ一丁も行かぬうちに、急に便意をもよおした。
馬を降り、矢を地面に立て、馬を樹につないで用便を済ました。
終って左のほうを見ると、矢が地面に突き刺さっている。
これは危なかった、どこから飛んで来たのだろう。
もう少しで当るところであったと、首をすくめた。
右を見ると、馬がつないである。
こんないい馬が手に入って良かったといい、馬を引いて出かけようとした。
すると、いま排便したばかりの自分の糞を踏みつけた。
足をちぢめて、糞を踏んで靴が台なしだ、
惜しいことをしたと言いながら、くるりと回って、もと来た道を戻って行く。
本人は、それとは知らず自分の家の前で、しばらく、うろつき、
ここは誰の家だろう?病気を治してくれる先生の家かも知れないと、つぶやく。
そこへ妻が出て来て、夫に向かい口ぎたなくののしった。
すると、男は、しょんぼりして、
ご新造さんは私と知り合いでもないのに、
どうして、そんなにガミガミ私をいじめるのですかと言った。
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この話しには、健忘症に対する2種類の特効薬も紹介されている。
いずれも漢方薬で、
(1)巴戟天丸=健忘症の専門薬。丸薬で毎服30粒を服用。
(2)丹参飲子=記憶を善くする薬。煎じて随時服す。
ただし、この2種類の処方については、信用できる医師の指示に従えとある。