ブログ 古代からの暗号

「万葉集」秋の七草に隠された日本のルーツを辿る

伏見稲荷神符18 <交い矛>から<交い大根>への変遷 

2009-09-28 21:36:42 | 日本文化・文学・歴史
出雲王朝の末裔という富家の紋章<交い矛>は平安時代になってから<交い大根>
に変えさせられた、という富氏の証言も確認すべきことと思い『日本家紋総鑑』で
<交い大根>を探してみた。これによれば陰と陽の二種類の<違い大根>があり、
陰の紋を用いる富田氏の注記には「出雲国より起こる宇多源氏佐々木氏族」とあり
陽の紋には本庄氏・丹後国宮津藩の大名家の定紋・美濃国高富藩の大名家の替え
紋とある。また丸に違い大根・丸に細違い大根・六角に違い大根・隅切り角に違い
大根など様々な違い大根紋が用いられていた。特に出雲国より興るという富田氏は
出雲王朝の富命の富を共有しており、富氏の証言の信頼性は高いと思われる。

<交い矛>から<交い大根>に変わったという富氏の紋章。
確かに矛は王権の象徴であり、新しい王権には目ざわりだったろう。しかし、富家
は大根紋に変えさせられたというよりは、あえて大根紋に変えたのではないかと私
は思う。絵柄は大根(だいこん)ではあるが、一族の思いは<おうね>という誇り
を末永く伝えようとしたのではないか?
富氏は熊野大社のクナドの大神を祀っていたと証言しており、出雲東部の意宇(お
う)が本拠地であったと思われる。出雲系の神々には<大国主命、大物主命、大三
輪、太田タネコ>など<おう・おお>を冠する神名が多い。国引き神話の地、意宇
は出雲発祥の地と思われる。


王権を象徴するという矛の紋も探してみたが、神社の紋・一般の紋ともに現存して
はいない。しかし建御名方富命との係わりで矛が存在するのではと『諏訪大社の御
柱と年中行事』(宮坂光昭・1992年・郷土出版社)で調べたところ、矛が見つかっ
た。

諏訪大社には上社と下社があり、下社は春宮と秋宮の二座一社の形態をとっている
ため、年に二回神霊の遷座の神事(下社遷座祭)が行われる。
その遷座の行列の古例によると、

 神霊を宝殿から神輿に移し、その行列の先駈二人は紺色素袍(すほう)に侍烏帽
 子に杖をもつ。薙鎌二人、以下の供奉は白丁姿。後紋付日麻御旗八人、<御矛>
 八人、萌黄地倭錦御旗二人、小御正台八人、<乱刃御矛>二人、紺地金襴御旗二
 人、榊二人、御筐三人、神輿、立烏帽子八人、大祝(おおはふり)騎馬、槍、薙
 刀、挟箱、五官祝騎馬、槍、薙刀、挟箱、両奉行、伶人(横笛・太鼓)氏子が
 続く。

出雲系の諏訪大社の神霊に十本の矛が供奉していたことで、直感が当たり満足であ
った。が、志村図書館で何気なく手にした『謎解き祭りの古代史』(ОB編集部・
1999年・彩流社)をパラパラめくりつつ拾い読みをしていたら、近江雅和氏が諏訪
大社の御柱祭について記述したページに釘付けになった。
なんと<諏訪大社のすべての御柱に三つの×印がついている>というのである。



いったい御柱のどこに×印があるのだろう?
勇壮な場面にばかり目を奪われて気付かなかったが、先の『諏訪大社の御柱と年中
行事』中の下社御柱を撮している小さな写真を拡大してみると、たしかに御柱の根
元から3メートルほどの位置に大きな×印が刻まれている。

近江氏は「この×印が、何を意味するかについては、いまだに触れられていない。
(中略)物部系、出雲系が関係するものには×印があるという事実に注目したい。
1984年、荒神谷遺跡から358本の銅剣が出土して話題になった。この銅剣に×印
の刻印がついていたのである。この銅剣は武器というより祭祀用のシンボルとして
の剣だろう。となると×印は神を示し、同時にその集団の系統を意味するマーク
だと考えられよう。」という。

出雲王朝の紋章<交い矛>は逃れていったとされる信州の諏訪神社の御柱に脈々
と伝えられていたようである。

2004年、私は諏訪を訪ねる機会があり、用事の合間に諏訪大社の下社を訪れた。
ところが現在の御柱は白木ののっぺりした柱で×印はどこにも見当たらなかった。
もう意味のわからない×印は消してしまったのだろうか。
しかし以前、長野県に行った時の記憶を手繰っているうちに、記憶が蘇ってきた。
昭和36年か7年ごろに訪れた諏訪の御柱には<赤い大きな×が三つ>刻まれてい
て、不気味な感じを抱いた事を思い出した。
確かに諏訪の御柱には三つの<交い矛>が刻まれていたのです。


  

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