ブログ 古代からの暗号

「万葉集」秋の七草に隠された日本のルーツを辿る

謎解き詠花鳥和歌 女郎花と鵲ー34

2010-11-20 14:00:04 | 日本文化・文学・歴史
2010年もあと40日あまりとなった。NHKの大河ドラマ「龍馬伝」は身分に左右され
た武士の世から、能力重視の近代日本へ脱皮したいと願う若者たちの熱い魂のドラマであっ
た。龍馬は33歳、志なかばで暗殺されるが、その想いを共有した青年たちが明治政府を立
ち上げ近代日本を築きあげていったことに驚嘆する。

このような変革期には少なからぬ血が流されているが、日本の歴史を知れば知るほど皇位を
めぐる骨肉の争いや、旧勢力と新勢力の覇権争い、はては女性を得るための戦いさえ数多く
語られており、歴史とは人間同士の戦いの歴史のようにさえ思われてくる。

また『日本書紀』の記述を注意深くみると、皇統の交替あるいは朝廷の実力者が失脚、排除
されるときには極悪非道な行為を列挙されるが、その最たるものは武烈天皇即位前紀であろう。
武烈天皇は仁徳天皇系最後の天皇でここで断絶し、次は応神天皇5世孫とされる継体天皇に
移る。
  武烈天皇の残虐性は
   *妊婦の腹を割いて胎児の形を見る
   *人の生爪を抜いて芋を掘らせる
   *人の頭の毛を抜いて樹のてっぺんに登らせ、樹の本を斬り倒し、樹上から落ちてき
    て死ぬ様をみて喜ぶ
など、残虐な性格を言うが、さらに性的な異常者のようにも描かれている。

この武烈天皇即位前紀には仁徳天皇が生まれた日に、応神天皇と武内宿禰とが妻の産屋に飛
び込んで来た鳥の名をそれぞれ交換して命名したという木菟(ずく・みみずく・ふくろう)
宿禰(平群氏の始祖)の子、平群真鳥と息子、鮪(しび)に係わる説話で埋められており
(ブログ女郎花と鵲ー30参照)、平群父子の無礼な行為に太子(武烈の即位前)が怒ると
大伴金村連(むらじ)は「真鳥の賊、撃ちたまうべし、請らくは討たむ」と奏上し、兵を率
いて平群大臣の宅を囲み、火を放ち、真鳥一族は殺される。
そして皇位をねらっていた真鳥のはかりごとの望みが絶たれようとした時に、広く塩を指し
て詛(とごう・呪う・悪しき事が起きるように神に祈ること)時に、角賀の海の塩のみを忘
れて呪わなかったという記述は大変興味深い。なぜなら、当時は太子であったが、後に武烈
天皇となり即位するものの、子は無く皇統が絶えてしまう。これこそ平群臣の呪詛の効果が
あったとも言えよう。そして、呪いをかけるのを忘れた角賀(越前地方)から継体天皇が担
がれて次の天皇となる。
継体天皇は応神天皇5世孫とされ、応神天皇が太子であったころ、角賀を訪れ笥飯大神と太
子とが名前を相易えたという説話があるので、越前出身の継体と、応神とを結びつけるため
の前段として、この平群真鳥の塩の呪詛が挿入されたように思われる。

平群木菟宿禰と同じく武内宿禰の子孫とされる蘇我氏であるが、皇極天皇6年、いわゆる大
化のクーデター(乙巳の変)によって入鹿は殺され、蝦夷は自殺して果て、蘇我本宗家は滅ぶ。

 蘇我氏の系図は
   武内宿禰ー蘇我石川宿禰ー満智ー韓子ー馬背ー稲目ー馬子ー蝦夷ー入鹿 であるが、
大臣として登場するのは、稲目(いなめ)からで、稲目の娘・堅鹽媛(きたしひめ)と小姉
君(おあねのきみ)が欽明天皇の妃となり、また馬子の娘・刀自古郎女(とじこのいらつめ)
が厩戸皇子(聖徳太子)の妃に、法提郎媛(ほてのいらつめ)が舒明天皇の妃となり、敏達
天皇・用明天皇・祟峻天皇・推古天皇・舒明天皇・皇極天皇の歴代にわたり皇室の外戚とし
て隆盛をきわめた。
しかし、臣下でありながら権勢をほしいままにした蘇我蝦夷は祖廟を葛城の高宮に立てて
「八つらの舞(中国では天子は八つら=舞の列が八列、諸公は六つら、大夫は四つら、士は
二つらとされ、八つらの舞は天子のみが催し得た八行八列・64人の舞のこと)」をする。
また、寿陵を今木に造り蝦夷の墓を大陵(おおみささぎ)、入鹿の墓を小陵(こみささぎ)
と称したという。そして皇極二年には聖徳太子の子、山背大兄皇子の一族を自殺においやり
上宮王家は滅亡する。

これらの行為は蘇我氏の横暴ぶりを示すものであると歴史では習ったが、視点を変えて
武内宿禰の子孫である蘇我氏は、祖先に百済王・昔脱解がおり、王族の末裔という自覚を
持ちつつ、大和の王家と姻戚関係を結び、百済の王族として八らの舞を自家の廟の前で行っ
たとしても非難されるべきことであろうか?
同様に、平群真鳥が宮と称し、鰹木を屋根にのせたことも、百済の王族か大和の王族かは
不明ながら、王となるべき資格は持っていたと思われ、不遜な行為とばかりは言えないよう
に思われる。

   









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