ブログ 古代からの暗号

「万葉集」秋の七草に隠された日本のルーツを辿る

謎解き詠花鳥和歌 藤と雲雀(ひばり)ー29 小倉山と鹿⑭

2013-07-26 09:33:24 | 日本文化・文学・歴史
「古代の出雲王家の紋章は2本の矛が交差した<交い矛>であった。」という富氏の証言から
日本文化の中にその残影を探し求めてきましたが、それは矛が2本交差した形を抽象化した
「×」印であろうと推量し、これはと思う4種ほど紹介してきました。
が、私は「古代からの暗号」という隠された物を探すことに意識が強く働いていて、また熱心
でしたが、じつは現在でも誰もが確かに目にしている「×」印があることに気がつきました。






上図は日本の代表的神社建築の様式一覧ですが、一見しただけで屋根の棟木の両端に×字形の
「千木(ちぎ)」を掲げたグループと掲げていないグループに分かれていることに気がつかれ
たことと思います。つまり神様にも系統があり、系統が違えば違う様式の社殿に祀られている
のです。
この中で最も古い形式は神明造(伊勢皇大神宮正殿)大社造(出雲大社本殿)住吉造(住吉大
社本殿)とされ、飛鳥時代に仏教が伝来し寺院の建築が輸入されますが、それ以前にこれらの
形式は出来あがっていたと考えられています。
そしてこの千木こそが出雲王朝を象徴するものであろうと思うのです。

「千木」についてはじめて触れているのは『古事記』ですが、そこでは「氷橡(ひぎ)」と表
記されています。『古事記』上巻三「根の国訪問」の中に大穴牟遅神(大国主神の別名)が
八十神の迫害に屈することなく死の苦難を克服した後に、須佐能男命の坐す根の堅州国に行き
ますが、その娘の須勢理毘売に出会い結婚したいと望むと、大穴牟遅は彼女の父神に様々な試
練を課されこれを乗り越えることが出来た時に須佐能男命は二人の結婚を許可します。その時
の科白は重要なフレーズです。

「その汝が持てる生太刀、生弓矢を持ちて汝が庶兄妹は坂の御尾に追ひ伏せ、また河の瀬に追
ひ払ひて、おれ大国主神となり、また宇都志国玉神となりて、その我が女須勢理毘売を嫡妻と
して宇迦の山の山本に底つ岩根に宮柱ふとしり、高天原に氷橡(=千木)たかしりて居れ、こ
の奴」

この文中の「宇迦の山」とは出雲大社の後背にある山で「宇迦山・御崎山・亀山」とも呼ばれ
ていますが、出雲王朝の末裔という富氏が史実を伝えられた場所も「宇迦山の麓にある出雲井
神社と証言しています。以前「伏見稲荷神符」の絵解きをした際にもこの科白から伏見稲荷神
社の祭神「宇迦之御魂神」とは<宇迦の山に坐す御魂>つまり<大国主命>であると解きまし
た。

「氷橡」は氷木とも記されており、『古事記』上巻「建御名方神」の文中で出雲に国譲りをせ
まる建御雷神と戦う場面で御名方神が御雷神の手を取ると<立氷に取り成し、また刀剣に取り
成し>とありますが、<立氷>とは<つらら>のことで、つららのようにぎざぎざ尖った剣の
刃に変化したことを表現しているらしいので、<氷木>は氷の剣のような形状を指す表現と
思われます。

では<氷橡>が<千木>に変化した理由は何でしょうか?
千はセン・チと読み数の単位であり、たくさんの意味にも用いられますが特に深い意味がある
とは思えません。念のため<千>と似て非なる文字<干(かん)>を調べてみました。
愛用の漢和辞典は角川の『漢和中辞典』。これにによると、大変興味深いことがかいてありました。

 干(かん) 字義 犯す・逆らう・背く・守る・防ぐ など
       解字 象形。Yが古い字形で先が二股になった矛の形を表す。
          カンの音は戡(かん=突き刺す)からきている。

何と言う事でしょう、屋根の棟木の上に置かれた千木(ちぎ)は本来は干木(かんぎ)だった
のではないでしょうか?
『古事記』の原本がどのように書かれ、いつ頃から千木(ちぎ)とされたのか定かではありま
せんが書写する段階で干木(かんぎ)が千木(ちぎ)に誤写された可能性があると思いますし、
『古事記』の表記「氷橡(ひぎ)」が正しいが、「秋の七草」の暗号を残そうとした人々に
よって干木(かんぎ)が発想され、さらに出雲系の<地祇>と同音となる<千木>とわざわざ
呼ぶようにした可能性もあるでしょう。

この矛を交差させた神紋を用いたと伝えられる出雲の代表的古社の見事な千木をご覧下さい。

出雲大社

須佐神社

日御崎神社

佐太神社

物部神社


次回も神社の建築と系統について考察します。
  











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